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シリーズ:I fell in love with the blunder
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アナタに恋はじめました番外編―出逢いの季節―

作者:尚史

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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    ノンケ同士の恋物語。

    いつものようにオフィスを歩いていたら、すれ違う新人研修生の中にいた、有坂に目が留まった兵藤。

    はじめに抱いた気持ちは、恋とはほど遠いもので!?


    登録ユーザー星:1 だれでも星:7 閲覧数:714

    アナタに恋はじめました番外編―出逢いの季節― 33336文字

     

     昨年の大阪の桜の開花日は3月26日で、満開宣言は4月1日だったっけな。

     大阪に住んでいた頃は、造幣局で行っている「桜の通り抜け」に毎年足繁く通っていた。一方通行の中、大勢の人ごみに押されるのは少々難儀なれど、儚く散りゆく桜を見るのが自分の中で、恒例行事と化していた。

     最初は家族と行っていたのだが、大きくなるにつれて学校の友達と見に行ったり、その内恋人と肩を並べて歩く場所になっていたんだ。

     造幣局の桜は遅咲きの品種が多いので、大阪の桜満開日よりも遅めの日程で公開されている。そんな桜を、毎年見に行けると思っていたのに――


    「関西支社の希望が通らず、こないな場所に飛ばされるなんて、思いもしなかった」


     3年前の今頃は、自分の置かれた立場とかいろんなモノに対して、絶望しか感じていなかった。


    『要くんと遠距離恋愛するなんて無理だと思う。絶対モテまくった挙句に、影に隠れて浮気するやろ?』

    『そんなのせぇへん。お前だけやって!』

    『今までガマンしてたから言わなかったけど、要くんって他の女の子にも優しすぎるんだよ。彼女としてはそれを間近で見ていて辛かった。自分はフリーダムに行動してんのに、私のことを束縛したがるし……こんなのフェアやないよね?』


     目の前にいる彼女に、まくしたてる様に告げられた言葉は、見事に俺の二の句を奪ってしまうもので。アホみたいに口をムダに動かすしか出来なかったのである。


    『ええタイミングやったのかもしれへんね。お互い関西にいても、仕事の関係でなかなか逢えなくなって、自然消滅しちゃうかもしれなかっただろうし』

    『そ、れは……そんなん、自然消滅なんてさせるつもりはない』

    『何を言ってるの、要くん上京するのに。別れるのにきっと、ちょうど良かったんやって』


     イヤやって、別れたくないって強く言いたかった。強く言えなかったのは、彼女の諦めにも似た顔が俺のことを、もう好きじゃないと言っていたから。追いすがったとしても、振り向いてはもらえない――


    『向こうに行っても、頑張ってね。要くんは順応力が高いから、あっちでも上手くやれるんじゃないかな』


     音もなく差し出された彼女の右手に、奥歯を噛みしめながら自分の右手で握手した。

     泥沼の別れ話にはならなかったけれど、俺の心に鮮明なキズが残ったのは確かなものだったから、上京しても恋愛はしないと心に決めていたのに。

     そんな気持ちとは裏腹に、会社で俺の争奪戦が開始されてしまった。

     自分のメアドやLINEのIDが書かれた手紙が、朝っぱらからデスクの上に置かれていたり、お茶出しをするのに給湯室に行ったら待ち構えている女子社員がいたり。

     とにかく俺の動くところに必ず、女子社員がついてきてくれる始末に面倒くさくなって、身近にいた同期の女の子と付き合ってみたのだが、事態は一向に沈静化しなかったのである。

     自分の保身のために付き合ったツケだろう。彼女ともギクシャクし始め上手くいかなくなったのを見た女子社員が、こぞってアタックしてきたせいで、仕事にも支障をきたしてしまった。

     入社して一か月とちょっとで、他の社員からは遊び人の新人と称され、見事に嫌われてしまっただけじゃなく、指導してくださる江口さんにも迷惑をかけまくってしまった自分の容姿に、ほとほと嫌気が差していたある日。


    『兵藤くん、ちょっといいかな?』


     江口さんと一緒に並んで、俺に微笑みかけてくれた大平課長が、薄い本を手渡しながら声をかけてくれた。何の気なしにその本を開き、印刷されている文字を目で追っていったのだが――


    『うげっ!? ちょっ////』


     その内容は誰もいなくなったオフィスで、男同士だというのにイチャイチャしまくっているという、かなぁりハードなものだった。

    (何で自分のネクタイを使って後輩を縛りあげた挙句に、デスクをベッド代わりにして、卑猥なコトが出来るんや!?)
     
     慌てて薄い本を閉じ片手で口を覆って、横にいるふたりに視線を飛ばすしかない。


    『大平課長の奥さんがさ、兵藤くんのモテ対策について、アイディアしてくれたんだよ』

    『……そのアイディアとこの本についての接点が、正直分かりません』

    『兵藤くんと僕が、その本に書かれているような関係になれば、丸く収まるだろうって妻が言っていたよ。指導している江口くんは、まだ未来のある若者だから、そういう関係になったら可哀想だからだって』


     ――それって、俺の未来が有らへんちゅうことだろう……


    『新入社員歓迎一泊社員旅行でする出し物で、そこに書かれているコトを大平課長と兵藤くんがみんなの前ですれば、もれなく事態が鎮静化すると睨んでいるんだ』


     ちょっと待ってくれ……


    『こないな気持ち悪い内容のものを、みんなの前でやれって言うんですか。冗談やない!』

    『安心して、兵藤くん。それは妻から借りたもので、台本はもっと大人し目のものにしてくれるらしいから』

    『兵藤も困っているだろうが、俺自身もお前の周囲にいる女子社員については、手をこまねいている状態なんだ。何とかしようと腰を上げてくれた、大平課長の気持ちを汲んでやってはくれないか?』


     誰だってこんな恥ずかしい役をやりたくないのは、どんなアホでも分かる。しかもこの状況を打破できるほど、社会人としてしっかりしていない自分が、イヤですなんて言えるハズもなく。

     かくて泣く泣く大平課長の奥さんが書いたシナリオで寸劇を演じ、カップリングが成立した途端、蜘蛛の子を散らすように俺の周りから女子社員が消えていった。


    【そして3年の月日が流れ――】

     毎年、同じようにキレイな桜が咲き乱れるな――

     自分の働いてるオフィスの窓から見える、桜の木に視線を飛ばしてから、タバコを吸いに廊下をのんびり歩くと、目の前にある角から新入社員と思しき集団が現れた。

     すれ違いざま、人数を数えてみる。ひいふうみぃ……今年は8人か。昨年よりも2人増えとる。どこの課も人手不足だから、渋々入社させたのかもしれんな。

     そんなことを考えていたら、列の一番後ろにいた新人と目が合ってしまった。

     目が合ったのは一瞬だったけど、俺の心の中にむくむくと妬みみたいな感情が膨らんでしまい、靴音を立てて逃げるようにその場を離れるしかなかった。


    「何やあの新人、フレッシャーズっちゅーか、絵に描いたような爽やかさっちゅーか、ムカつくにもほどがある!」


     俺がどんなに頑張っても醸せないであろう爽やかさを、ふわぁと自然に醸していた新人。

     イケメンというワケじゃなく、どちらかというと童顔だから、そういう雰囲気を醸しているのは分かったのだが。

     自分の持っていないものを、しっかりと持ち合わせている新人に、負けず嫌いな俺としては、本人の与り知らないところで、嫉妬しまくってしまった。


    「何や、嫌な予感がするわ。アイツが会計課に配属されたらどうしよ……」


     ずーんと重たい気持ちを引きずりながら喫煙室の扉を開けると、これまた逢いたくない人物がタバコをくわえ、しっかりと腰を下ろしているなんて。


    「あー、最悪や……」

    「何だよその顔、イケメンが台無しじゃないか。計算が合わなくてイライラしてんのか?」


     俺の顔を見てカラカラ笑う飯島を無視し、離れたところでタバコを吸おうとしたのに、わざわざ傍までやって来て、そっとライターの火を差し出してくれた。


    「ほらよ、遠慮せずに」

    「……済まんな」


     素直に火を頂き、ふーっと一服する。あぁ至福のひと時――


    「なぁなぁ、ここに来る前に新人研修の奴らが、ウチに顔を出してきたんだけどよ」

    「へぇ……」


     営業課の中でも、コイツの煩さのせいで異様に活気のある、営業二課のフロアを見せたんだろうな。


    「今年の新人、可愛いコが結構いたぞ。ウチに配属されないかなぁ」

    「……阿部の寛の顔に、液体窒素を吹きかけたような顔したお前に迫られたら、誰だって逃げるわな」

    「何をぅ!?」


     般若顔になった飯島に、ふーっとタバコの煙をお見舞いしてやる。煙効果で少しは、顔の濃さが薄くなれたらいいのに。


    「見てくれの良さがアダとなってる兵藤に、俺の顔のことをアレコレ言われたくないね」

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