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シリーズ:必然の錯覚
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必然の錯覚

作者:瀬根てい

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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    幼馴染社会人カップル。
    井関浩太はフラれる度に親友の小長井聡史に励まされていた。
    居酒屋でいつものように傷心を酒に任せて忘れようとしていると、聡史が「俺にしないか?」と突然告白してきた。
    しかし、浩太はそれを本気と受け取らず・・・。

    ずっと好きだったけど、親友として付き合いを続けていた健気な攻め。全く気付いていない受けのお話です。


    登録ユーザー星:13 だれでも星:39 閲覧数:4010

    必然の錯覚 51639文字

     

     半分ほど否定したいが、聡史は口を挟ませてくれない。それどころか、自覚症状の無い浩太に呆れ気味だ。
    「浩太がどう思おうが、それが世間の意見だ。それで、付き合って素のお前を見て『同僚』もしくは『お友達』でいた方が良いってなるんだよ」
     一気にまくし立てられ、最後にはうまくまとめられて浩太は閉口した。
     反論の余地は無い。
     あるとしたら「お前だって、見た目は寡黙な体育会系じゃないのか」くらいで、こんな事を言ったところで聡史はだからなんだと撥ね退けるだろう。飾る必要の無い、子供の頃からの付き合いで今更かっこつけても始まらない。
     ふと、浩太は疑問が浮かんで首を傾げた。
    「聡史だってそういう経験無いのか?」
     こういうのはいつも自分ばかりで、聡史の色恋話を聞いたことがなかった。いや、一度だけあるが、それはまだ中学生だった頃の話でそれだけだ。案の定、聡史はしれっとした様子で首を横に振った。
    「生憎話のネタになるものは無い。気が合うやつは早々いないからな。付き合ってみないとわからないことが多いだろ」
     それもそうだ、と浩太はフラれた瞬間を思い出して肩を落とした。
     素の自分。無頓着で、食事もファーストフードで十分。周りが思うほど社交的ではなく女心もわからず、それでも彼女のために頑張るが、無理をしているのを見抜かれてしまう。こうしてフラれる度に親友に自棄酒に付き合ってもらうような男を見て、かつて付き合った女性達は現実を受け入れてくれなかった。
     好きだから許せるのか、許せるくらい好きなのか。残念ながら浩太は未だそういう女性と巡り合えずにいた。
    「恋愛って難しいよ。結婚して、子供生んで夫婦仲睦まじくって、当たり前だと思ってたけど凄いことだったんだな」
     結婚が人生の終着点というのは、案外幸せな道なのかもしれない。
     惰性にしても、元々赤の他人だった二人が何十年も一つ屋根の下で暮らして、支えあうなんて無理だ。そう考えると両親は喧嘩もするけれど、良きパートナーだと思う。実の息子にさえ惚気ているのだから、幸せな夫婦と言える。
    「恋は盲目って嘘だよな」
    「お前の良さをわかっていないだけだ」
     ありきたりなフォローでも、聡史が言うと本当な気がして嬉しかった。これだから、いつも頼ってしまう。
     浩太は血行のよくなった頬を緩ませて、顔色を変えず淡々と酒を口にする友人を見やった。気は利くし、頼りになり人望も厚い。おまけに家事も得意ときたもんだ。自分には過ぎた友人だと思いつつ、十数年経った今でもこうして交流を持てることに感謝し、これからもこの関係が続いて欲しいと思っていた。
    「聡史が女だったらいいのにな」
    「俺が女だったら、こうやって付き合いが続いてないだろ」
    「あれ、俺達の友情ってそんなもん?」
    「馬鹿か」
     冗談で言ったのに、思いの外聡史が本気なようで浩太は内心冷や汗をかいた。
     何か怒らせるような事を言ってしまったかと、振り返ってみても酔った頭では思考がうまく働いてくれない。今夜は相当飲み過ぎたと、今頃になって気が付いた。外では真面目で通る浩太が、羽目を外してもいいと思える場所が聡史の前だからだろう。
     つくづく自分はこの親友に甘えている、と胸中で反省する。
    「女じゃないが、俺にしとくか?」
     酔っているせいか、真面目な顔で聡史がジョークを言った気がした。
     聡史の台詞を反芻するが、言葉のままの意味が浮かぶだけだ。
    「お前って、そういう冗談言うやつだっけ?」
    「いや、割と本気だ」
    「そこまでして俺を慰めてくれようとするなんて、本当にお前はいい奴だよ。今後の友情と益々の御盛栄に乾杯!」
     意味のわからない言葉も付け加え、ほとんど飲み干したグラスを持ち無理矢理聡史に乾杯させる。
     ガチャッと濁った音が響いた。
     不完全な乾杯でも今の自分には十分だと、浩太は唇だけで笑った。聡史が憮然とした面持ちでいるのを目の端で見ながら、おかわりのビールを注文する。すぐに運ばれたビールを受け取って飲むのを再開すると聡史は嘆息し、グラスを持ち上げるから三度目の乾杯をした。
    「折角の華の金曜日だ。休日はドブるぞ」
    「しょうがない奴だな」
     最後まで付き合おうと腹を括った聡史が、日本酒を飲み始める。唇が酒で湿り、喉が上下に動く。酒の飲み方も、楽しみ方も二人で学んだ。浩太もグラスを置き、通りがかった店員に焼酎の水割りを注文した。
    「聡史、いつまでも友達でいてくれよ」
    「……はいよ」
     間をおいて聡史が返事をし、浩太は安堵した。
     空元気な現実逃避だとわかっていても、今は何も考えたくなかった。



    Side:聡史―High school days―

     見慣れない真新しい制服を身に纏い、浩太は『祝』の文字がプリントされた花を胸に付けたまま、入学式に出たその足で聡史の家にやって来た。
     聡史は堅苦しい式典を終えてさっさと帰宅し、着替えようとブレザーを脱いだところだった。
     走ってきたのか息を切らせながら、浩太は「間に合った」とインスタントカメラを顔の辺りに持ち上げ振り返る。
    「間に合ったから、ゆっくり来ていいよ!」
     数十メートル離れた所にいる母親に浩太は声を上げ、息を整えて腰に手を当てた。額に薄らと汗を浮かべ、白い歯を見せて笑う姿が眩しい。
    「ブレザー持って来いよ。一緒に写真撮ろうぜ」
    「写真?」
    「俺達の門出を記念にな。なのに母さんてば、同じ学区の保護者と世間話し始めて、長いのなんのって。聡史が着替えちゃったらどうするんだよ」
     言ってくれれば、また制服くらい着たのに。だがそのために走って来てくれたことに、聡史は喜びに似たものを覚えた。ただ「嬉しい」だけではない何かが胸をつつくが、その正体はわからない。
     二人の出会いは小学校まで遡る。うだつの上がらない父親に愛想を尽かした母が出て行き、聡史は子供ながらに大人の身勝手さと自分の生きる術を悟った。自分がしっかりしなければと、他の同級生よりも大人であろうとしていた。そんな聡史の態度と両親の離婚は子供にとって恰好のネタで、わざと聞こえるような悪口を言う同級生もいた。彼らは遠くにいるだけで近付いてこようとはせず、聡史は冷めた気持ちで見ていた。
     しかし浩太は違った。
     明るく気さくな浩太は他のクラスからも人気があり、想いを寄せる生徒は片手では数え切れないくらいいた。王子という表現が相応しい顔立ちは、実際学芸会でその役を演じたこともある。その時の聡史は役もなく裏方にいた。
     関わることのないと思っていた浩太が、ある日突然話しかけてきた。見物していたクラスメイトがひそひそと話を始め、こいつも馬鹿にしに来たのかと聡史は無視を決めて、わざと大きな音を立てて椅子から立ち上がり教室を出た。
     聡史はちっぽけなプライドと意地で教室に戻らず、結局一日を無駄に過ごした。
     誤算だったのは、これくらいでめげる浩太ではなかったことだろうか。
     無視してもしつこく声を掛けてきて、つい「うざいんだよ!」と言い返してしまった。最後まで無視できなかった聡史の負けだ。
    『やっと反応したな』
     きつい言葉を投げつけたのに、嬉しそうに目を細め笑う浩太を今でも鮮明に思い出せる。まっすぐな浩太の人柄は疎ましさより、初めて味わう安らぎを与えてくれた。
     中学に上がる頃には親友まで発展し、クラスが変わっても付き合いは続いていた。放課後は外で遊んだり、休日ともなればお互いの家で勉強やゲームをしたり、親に顔を覚えられるくらいには親しくなった。
     そして、二人は今日から高校生になった。
     言われた通りリビングに広げてあったブレザーを手に取り、しばし悩み羽織らず玄関で待つ浩太の元に戻る。
     浩太の制服は深緑のブレザーにストライプの入ったえんじのネクタイと、チェックのズボンは公立高校にしてはおしゃれと評判なデザインだ。
     朝出た時はキチンと結ばれていたはずのネクタイは緩み、第一ボタンを外し着こなしている。贔屓目にもよく似合っていると思う。
     そして聡史が手にするのは、濃紺の――浩太とは違うブレザーだった。
     浩太は進学校に進み、聡史は卒業したらそのまま就職できるように工学科のある高校を選んだのは、早く社会に出て働いて父親の助けを借りず独り立ちしたかったからだ。同じ高校だったら良かったのに、と浩太はつまらなさそうに言ったがこればっかりはしょうがない。つまらないのは聡史も同じこと。

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    作者紹介

    • 瀬根てい
    • 作品投稿数:14  累計獲得星数:171
    • web、同人、電子書籍でBL小説を書いています。
      精神面でも喧嘩でも強い受けが好き。少年からおやじまでこよなく愛する節操なしです。
      少しでも楽しんでいただけたら光栄です。
    • 関連URL
      サイト:http://moxic.net/

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