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シリーズ:必然の錯覚
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必然の錯覚

作者:瀬根てい

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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    幼馴染社会人カップル。
    井関浩太はフラれる度に親友の小長井聡史に励まされていた。
    居酒屋でいつものように傷心を酒に任せて忘れようとしていると、聡史が「俺にしないか?」と突然告白してきた。
    しかし、浩太はそれを本気と受け取らず・・・。

    ずっと好きだったけど、親友として付き合いを続けていた健気な攻め。全く気付いていない受けのお話です。


    登録ユーザー星:13 だれでも星:39 閲覧数:4006

    必然の錯覚 51639文字

     

     一緒にいることが当たり前だと勘違いしていた。
     俺達が一緒にいるのは偶然ではなくて、他になりようのないものでそれが当然だと錯覚していた。

     * * *

     そいつは同級生だった。でも、別に仲良しなんかじゃない。クラスの人気者で、同学年、上級生、下級生、先生。皆がそいつのことが好きだった。明るくて、頭もいいから女子はみんなして彼と仲良くなろうとした。
     くだらない。
     そいつだって裏では何考えてるのかわかったもんじゃない。俺の家のことを、きっと心の中で笑ってる。時々目が合うと笑うんだ。そうでなければ、あんな風に笑ってられるのは相当の馬鹿だ。人の本性を知らないでいる、お気楽者だ。俺は絶対にあいつらみたいにならない。
     それなのに――。
    「なあ!」
     人を疑う事を知らないのか、そいつは俺に話かけてきた。みんなに向けるものと同じ笑みを浮かべて。苛々する。だから俺は返事をしなかった。
    「なあ、なあなあ!」
     それでもしつこく話かけてくる。
     クラスのみんなが俺の反応を見ている。女子が笑ってやがる。
     俺はわざと音を立てて立ち上がった。途端に教室が静かにるけど俺はかまわず教室を出て、昼休みももうすぐ終わるのに教室から一番遠い図書室まで走った。そして本棚の隅でこっそり午後の授業をさぼった。でもなんだか、負けたみたいで悔しい。逃げたわけじゃないのに、なんで俺はこんなところにいるんだろうと虚しくなった。


     何度無視してもそいつは俺に話しかけてきて、その度に見世物になっているみたいで俺はとうとう堪忍袋の尾が切れた。
    「あ、そういえば……」
    「うざいんだよ!」
     今までの鬱憤も全部含めて、俺はそいつに怒鳴りつけた。自分でも驚くくらい大きな声が出た。
     驚いたそいつはきょとんとしてから、嬉しそうに目を細めた。
    「やっと反応したな」
     きつい言葉を投げつけたのに、笑いかけてくれるそいつに敵うはずがなかった。本当は悔しいよりも、自分だけに向けてくれた笑みが嬉しかったのだ。
     そう、俺はそいつに話しかけられて嬉しかった。返事をしたら他の奴らと同じになってしまうと思って、わざと無視をした。そうすれば、また話しかけてくれると思ったから。
     でもそいつはずっと俺に構ってくれた。インプリンティングというやつだろうか。呼び方なんてどうでもいい。俺はあろうことか、そいつに恋をしてしまったのだから。それも、大人になるまでずっと。
     
     * * *

     彼は同級生で、いつも一人でいた。
     俺はクラスメイトと遊びながら、いつも彼を見ていた。彼は誰が話しかけても無視をして、先生も困ったと言っている
     。彼の両親が離婚したというのは知っている。クラスの奴らは何がおもしろいんだか、それを笑っていた。新学期にみんなが新しい雑巾を持ってくる中、彼はいびつな薄汚れたタオルを縫った物を持ってきた。給食の布巾はいつも無地で、隅が擦り切れていてそれもみんな笑っていた。
     時々目が合うと、すごい顔で睨まれる。彼は俺のことが嫌いなんだろう。
     なんか、むかつく。
     自分で言うのもなんだけど、俺はいい子だ。頼まれごとは引き受けるし相談だって乗る。宿題だってちゃんとやってくる。友達だって多い。それなのに、彼だけは違った。


    「なあ!」
     俺は彼に話しかけた。こちらを見たけど、返事はなかった。
     女子が面白そうに笑いながら見てきて、躊躇ったが俺は諦めず再度声をかけた。
    「なあ、なあなあ!」
     彼は大きな音を立てて俺を睨むと、教室を出て行ってしまった。途端にみんなが声を出して笑い始める。でも俺は笑えなかった。心が苦しくて、辛かった。結局彼は放課後まで教室には戻ってこなかった。俺は、軽い気持ちで彼に声をかけたことを後悔した。
     でも俺は翌日も、そのまた翌日も彼に話しかけた。教室を飛び出ることはなくなったけれど、彼は返事をしてくれない。こうなれば根競べだ。
     俺は勝手に話を始めた。給食のことや、音楽室の秘密の棚のこと。返事がなくても、一人で喋っていた。
    「そういえば……」
    「うざいんだよ!」
     殊更明るく話を始めようとすると、彼がとうとう俺に怒鳴りつけたてきた。大きな声で怒鳴られてびっくりしたけれど、俺はなぜか喜んでいた。別に俺はマゾってわけじゃない。俺を見てくれて嬉しかったんだ。頬が痛くなるくらい笑みを浮かべて「やっと反応したな」と言ってやったら、彼は目を丸くして、悔しそうに舌打ちしていた。
     実は他のクラスメイトと話をするより全然面白くて、付き合っていくうちに俺達は親友になった。喧嘩もしたし、馬鹿みたいなこともした。
     彼くらいなものだろう。俺みたいなやつとずっと付き合いを続けてくれるのは。
     だから彼は俺の物だって、勘違いしていた。ずっと一緒にいるものだって。



    Side:浩太―prolog―

    『ごめんなさい、浩太とは同僚のままの方が良かったみたい』
     三ヶ月付き合った彼女――沙耶加にフラれたのはクリスマス間近の、街がお祭りモード真っ只中のことだった。
     社内恋愛という、メリットとデメリットのはっきりした関係を最初に提示したのは彼女の方だ。同じ仕事をして、同じ苦楽を共にしていく内に恋に落ちた。仕事だけでなく、プライベートでも助け合いたいという男らしい彼女に井関浩太は「こちらこそ」と手を取った。
     公私を分けるために他の同僚には秘密というのも、なかなかスリリングで社内で目が合う度にドキリとさせられた。
     二人で夕飯を食べに行く時は、すまして仕事をしていた彼女から『十分後に出るから』とメールが届いて、何食わぬ顔で浩太も『待ち合わせ場所で会おう』と返事をした。
     学生の頃を思い出させるような恋愛に、浩太は幸せを噛み締めていた……はずだった。
    「お友達でもなく、同僚だぞ。なんだよそれ」
     追加で注文したビールを豪快に飲み、口の周りに白いひげを作りながら浩太は呻いた。
     今夜は「食べる」のではなく「飲む」つもりでいたから、テーブルの上に軽くつまめる物ばかり並んでいる。ビールを飲んでは枝豆をつまみ、またビールを飲んで玉子焼きに手を伸ばす。
     その様子を小長井聡史が苦笑いしながら「まあまあ」と宥めているが、そんなものは当然意味を成さない。
    「俺も聡史くらいカッコよければな」
     浩太が何度目かの文句を口にし、聡史を見て溜息を吐く。
     運動部からそのまま社会に出たような聡史は、髪を短く切り揃え濃い目の眉にきりりとした目元で「精悍な顔つき」に相応しい容貌をしている。身長は成人男子の平均よりやや高い浩太よりも上をいく。そんな聡史の仕事といえば大学在学中に仲間同士で始めたホスティングサービスで、着々と事業を拡大し企業としても順調に利益をたたき出している。
     それに比べて浩太は、卒業後なんとなくで就職した人材紹介会社に務め続け、入社六年目にしては給料はそこそこいいが、聡史に比べたら微々たるもの。
     赤らんだ顔で、浩太は今日一番の溜息を吐き出した。
    「何度もフラれてるってのは、中身の問題もあるんだろうけどさ。なんでいつも長続きしないかね。俺ってそんな駄目なやつ?」
     そして、フラれる度に小学校からの腐れ縁でもある聡史に愚痴を聞いてもらう。その繰り返しだった。
     聡史はそれに慣れた様子で、ぽりぽりと漬物を噛みながら応えた。
    「外見と仕事ぶりに対する理想と、現実が違うからだろ」
    「どういう意味だよそれ」
     顎を引き、一端目を閉じてから上目遣いで聞き返すと、溜息を吐きながら聡史は首を振った。
    「お前、そういうの無意識でやってるだろ」
    「何が?」
     そういうのとはどういうものなのかと、浩太は首を傾げた。聡史の口からもうひとつおまけの溜息が吐き出される。馬鹿にされたようでむっとしたが、ここは耐えて続きを待った。
    「だからな、ホストに向いてるんじゃないかってくらい綺麗な顔と、女心をくすぐる仕種にまず騙される」
    「騙すって!」
    「いいから聞け」
     さすがに黙っておけず身を乗り出すが、聡史に聞けと言われ釈然としないまま背凭れに背を付けた。ぶつぶつと騙してないのに、と文句を言うのは忘れない。
    「顔がいい。それでいて遊んでなくて、仕事に真面目でクールかと思いきや人当たりもいいというギャップ。今度も何か仕事任されたんだろ? 女子からすれば憧れの対象だ」

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    作者紹介

    • 瀬根てい
    • 作品投稿数:14  累計獲得星数:171
    • web、同人、電子書籍でBL小説を書いています。
      精神面でも喧嘩でも強い受けが好き。少年からおやじまでこよなく愛する節操なしです。
      少しでも楽しんでいただけたら光栄です。
    • 関連URL
      サイト:http://moxic.net/

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