upppiは縦読みコミック(タテコミ)・イラスト・小説が無料で楽しめるサービスです!

ようこそ!ゲストさん
シリーズ:山田の恋は、犬模様。
閲覧数の合計:117

作品を編集する

  • シリーズタイトル・ジャンルの修正
  • この章を改訂する
  • この章を削除する
  • シリーズに作品を追加する
  • 表紙画像の変更

山田の恋は、犬模様。

作者:乃之鹿裡 -sikari-

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    同窓のアイドル・雪見深優に対する下心を山田は暗なところで抑え切れなかった。打算で手を挙げた『かわゆい犬』大作戦。浅はかなり、浅はかなり。
    ※書けない人の為の漫画コンテスト用。
    ※小説形式ですが、マンガのコマ割りに則した改行などを施しております、おおよそ。


    登録ユーザー星:5 だれでも星:0 閲覧数:117

    山田の恋は、犬模様。 18316文字

     

     世の中には、稀に犬と会話ができると主張する人間が存在する。
     しかし、ならば稀に、人と同等の理性および複雑な精神を持つ犬が存在していなければならない。
     でなければ、先の主張は成立しないのである。
     まぁ、それはこの物語と特に関係のないことなんだけれども。


         1

    「入ってください」
     扉の中から籠った声がした。
     山田はネクタイを軽くキュッとしてから扉を開く。
     通常診察室として使われている一室。午後二時過ぎ、夕刻の診察開始までの外来謝絶の時間である。
      
     面接官でもある当院の医院長が椅子に座っていた。
     四十代前半くらいに見える男だ。シャツにスラックスではあるが、医院として見ても面接として見ても似つかわしくないラフな印象を受ける。

     山田は軽いお辞儀をして部屋を進む。
     面接官の熱い視線を感じるが、睨み返すようなことはしない。
     面接官と対面するように設置されたパイプ椅子の横で立ち止まると、面接官が見上げてくる。
     山田はようやく真っ向から目を合わせるが、決して見下しているわけではない。
    「どうぞ、座ってください」
     面接官が言った。

     両者の間に机はない。膝と膝の間が十センチ程度の至近距離での対座である。
    「履歴書、良いかい?」
     山田は言われるがまま、履歴書を手渡す。
     
     面接官の眼球の動きを、静かに見守る。
     履歴書の左上から下へとゆっくり眼球が動く。眼球の動きに従って、まず足が組まれる。次に眉間に皺が寄り、右手が顎を摩る。奥歯に詰まった食べかすを舌先でほじくっているように頬の奥が膨れた。
     最後にため息とともに、履歴書が膝の上に落とされる。
    「君、ちゃんと募集要項見たんだよね?」

    「もちろんですとも」
     山田は胸を張って言った。
     面接官の眉間の皺が深まる。
    「獣看護専門学校を卒業、もしくは獣医院で実務2年以上だったはずだけど?」
    「高卒です。しかも文系」
     山田はニヤリと笑う。
     ピース。
    「君ね、馬鹿にするのもたいがいにしておかないと……」面接官は首を左右に振ってから、「いや、私が言うことでもないな。残念だけど、これじゃあ不採用だね」

    「僕は犬の言葉が理解できます。なんとビックリ、会話ができるのであります」
     山田はドヤ顔である。
     面接官は、下顎が外れてしまったかように口を左右に動かした。
    「帰ってくれ。時間の無駄だ」
     半ギレである。

    「やってみせましょう。判断はそれを見てからでも遅くないはず。一分もかからないことであります」
     面接官は苦々しい表情を浮かべながらも、数秒、山田の様子をじっと見つめていた。
     山田、胸張りドヤ顔である。
    「分かった。それで気が済んだらすぐに帰ってくれたまえ」
    「御意」
    「ギョイッってねぇ……」

     その面接場所から奥の部屋の扉の奥が見える。ケージがいくつも並べ置かれており、一つのケージに一匹の犬が入っている。
     その世話をしているのか、獣看護師のお姉さんがずっと動き回っている。
    「して先生、犬は耳が良いので、しばし御耳を拝借」
     山田が面接官に顔を近づけると、面接官は非常に嫌そうな表情を浮かべつつも、しぶしぶ顔を山田に近づけてきた。
    「今からあのケージの犬達に指令を出します。なので、何匹かケージから解放してもらってもよろしおまでしょうか?」
    「は? あれらは大切な預かりものだ。何をするとも分からんことに付き合わせられるか」
    「犬達に、あの獣看護師さんのスカートを捲らせ、押し倒し、さらに身体中を舐め回させるのです。想像するに壮観」
    「な、何を、馬鹿なことを!」
    「見たくないんですか?」

     面接官は舌打ちをすると、「見たいわけじゃないからね。決して」と小声で言いながら犬を解放しに行った。

    「ちょっと君、軽い運動をさせて様子を見ようと思うんだ」と医院長。
    「はぁ」と答える獣看護師のお姉さん。
     頼んだわけではないが、比較的大きな犬が解放されました。

     山田は、解放された犬三匹に向かって獣看護師のお姉さんには聞こえないよう言葉を紡ぐ。
    「でろでろに舐めくり回して良ろしいとの院長先生の御達しであるぞ」
     犬達が、獣看護師のお姉さんの足元にじゃれるようにまとわりつき始める。
    「やれ。存分にやってやれぃっ」

     太ももが良い感じの獣看護師のお姉さんは笑みを浮かべた表情で、犬達を見下ろしている。
     軽く犬達の頭を撫でて作業を継続しているだけであった。
    「全くもって、いつもの光景だが?」
     面接官がクレームをつけてくる。
     忌々しげに山田を睨みつけてくる。
     革靴が床をカツカツ小刻みに叩いていた。

     山田はにんまりと笑みを浮かべ、顔を面接官に近づけて言った。
    「まぁまぁ何はともあれ、先生も、お、好、き、なんですね」
    「帰れっ!」


         2

    「怒られた」
    「当たり前だろう」
    「おかしいなぁ。あいつら何で僕の言うことを聞かなかったんだか」
    「いや、おかしいのお前な」
     面接の帰り道。川沿いの畦道を、山田は飼い犬と並んで歩いている。
     
     犬種はパピヨン、小型犬である。
     名前はぴこ丸。
     山田は犬を見下ろしながら話している。
    「あの病院の犬達の言葉が全く聞こえなかったんだ」
     ぴこ丸は山田を見上げながら、口を開閉させ答える。
    「それが常識だからな」
    「非常識だっ!」
     山田は拳を振り上げて叫んだ。
    「馬鹿っ、おばさんビビってるから」
     通行中のおばさんが怯えながら通り過ぎていった。 

     ぴこ丸が口を上下させ言葉を話す。
    「だいたいな、俺達みたいなのが稀中の稀なんだよ」
     山田はぴこ丸の隣で遠く空を見ながらゆっくりと歩いている。
    「僕には、この天才的な言語能力があるというのに。なんて下等な奴等だったんだか、まったく」
    「お前にどれだけ言語能力があっても、受信側に知性がなければ意味なしってこったな。ざまぁみろだ」

     山田の愚痴が勢いづいてきた。
    「そもそもだ。人間が動物に向かって賢いとか言うのが解せん」
     ぴこ丸に向かって愚痴を続ける。
    「あれは下等な頭脳だ、という大前提で見てるからこそ、お座りしたくらいで賢い賢いってべた褒めするんだ。馬鹿にすんなって大半の犬が思っているとも知らずに」
    「そうなの?」とぴこ丸。
    「さっきの面接で僕は、面接官の言うがままに折り目正しく椅子にお座りを決めた。しかし面接官は僕のことを賢い賢いと褒めなかった。なにゆえか!」
    「まぁ、それが社会の常識だからな」
    「なぁにが常識かっ。飯が貰えずしてハフハフ喜んだフリするかっての」
     山田の愚痴が絶頂を迎えた。
     
     一息ついてから、山田が言った。
    「なんにせよ、これで獣医院という恰好の職を得ること叶わなくなった」
    「まず、応募要項の範囲内で選べよ」
     ぴこ丸がうんざりした感じで答える。
    「そんな馬鹿な。もう人間の決め事にがんじがらめにされるのはこりごりだ」 
    「お前が言うかよ、それ……」
    「言う。僕だからこそ声高に」

     ぴこ丸が立ち止まり、声高に叫ぶ山田を見上げて言った。
    「はぁ。そんなことよりお前さぁ、俺の身体、早く返してくんない?」  


         3

     ぴこ丸は元々、日本語が堪能な奴であった。
    「おい。毎日毎日同じドッグフードばっかり、僕を舐めているのか山田」
     山田は気のせいだと思った。
    「一か月一万円生活ならぬ、一生ドッグフード生活ってか。マジ、お前がやってみろってんだ。喉、カッピカピなるから。喉だけ高齢化社会だよ。ほんと切実だよ、これ」
     山田は気のせいにしてはぴこ丸の鳴き声が明瞭に聞こえすぎはしないか、と懐疑的になった。
    「山田、お前さっき肉食ってたろ肉。くれ。それ、僕のドッグフードと交換してくれ」   
     間違いない。ぴこ丸が日本語堪能である。
     山田は驚愕に仰け反った。
    「嘘……ぴこ丸なのか?」
    「お前が勝手につけたんだろうに。ダッセェ名前」 
     山田はぴこ丸と言葉を介せるようになってしまった。

     以降、食卓を本当の意味で共にする間柄である。
    「それ寄越せ。僕が全部食べてやる」
    「ぴこ丸さぁ、ドッグフードまだ余ってるんだけど?」
    「お困りなら、自分で食べれば良い。効率的だ」
    「あっ、勝手に取るなよ」
    「むほほ、唐揚げめちゃ乙」

     言葉が分かるようになってから、ぴこ丸が如何に愚痴っぽい奴であるのかを知った。

    ←前のページ 現在 1/6 ページ 次のページ→

    1ページ目に戻る
    ▤ 目次ページに戻る


    お気に入りリストに追加 この作品を応援する

    応援ボタンを押す事で作品の★が増え、作者に「イイね!」を伝える事ができます。

    コメント

    作者紹介

    この作者の人気作品

    • 過去れぽ♪
      過去れぽ♪

      └僕の母が突然、怪行動を起こしたけれど、どうやらそうなるように意図した者がいるようだゾ!!

    • World of Rebirth~終末のイヴ~
      World of Rebirth~終末のイヴ~

      └いよいよ終末を迎えることになった地球。 生き残った僅かの人間は小さな集団となり、生きる目的も曖

    小説 ファンタジーの人気作品

    続きを見る