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シリーズ:上からカラス
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上からカラス

作者:Y平

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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    女子高生渡部リサはイジメにあいながらも日々を必死に生きていた。イジメが苛烈になっていくさなか、ひょんなことから学校の屋上でクルミを空中から落として割っている不思議なカラスと出会う。カラスは屋上の給水塔で卵を温めていた。孤独なリサはイジメでゴミだらけになった弁当をカラスにあげたり、孤独な胸の内をカラスに語るうちにリサとカラスの間で絆が芽生える。辛い日々ながらもリサはカラスとの時間を大切に時を過ごしていた。

    そんなある日、いじめっ子のリーダー格、ともみが屋上にやってきて、不思議なカラスとその卵が見つけられてしまう。大切な日常を守る為リサとカラスのとった行動とは……?


    登録ユーザー星:1 だれでも星:1 閲覧数:93

    上からカラス 10243文字

     

     青空から鳥みたいなのがギューンと急降下、羽をたなびかせながら私に向かって降りてくる。トンビのシルエットを携え、病気みたくキチガイじみたバサバサ音をひびかせ落ちてくるのは鳥か? 飛行機か? スーパーマンか? いや違う。私の教科書だ。なんてつまんない。

     2階の教室の窓から顔を出しながらゲハゲハ笑う今が旬の女子高生はトモミだ。その下の中庭で間抜け口を空けながら上を見上げているのは私。困ったなあ。私も今を生きる旬の女子高生。ちょっと底意地が悪くてビッチでクルクルパーの同級生に、教科書を窓から投げられてるなんて、それ何てドラマ? かわいそー。観てらんなくてチャンネル変えるね私だったら。

     ちょっとー、何するのよー? なんて笑いながらトモミをたしなめる。ブラフだ。私はこんな仕打ち、何とも思っていない。そんな主張を奴らに送る。いっぽうで、私の唇はヒクヒク震えている。目が笑ってないってやつ。分かってる。でもそうせざるを得ない。そうしないと私は本当に可哀想な苛められっ子になってしまう。そんな心境を知ってか知らずか、他のバカどもと私を指差し笑ってるトモミの目も笑っていないのだった。その目に浮かぶのは炎。トモミは炎の女だ。けど負けない。これは勝負。旬の女子高生を謳歌する女子高生を演じる勝負。


     午前の授業が終わった後、私はゴミ箱に捨てられていた弁当を回収し、教室をダッシュで出て行く。トモミ達の笑い声が背後から聴こえるが笑うだけならなんぼでも笑え。私は笑い声を振り切るようにして走る。走る。走る。階段を一段飛ばしで。目指すは屋上。屋上のドアには南京錠がかけてあるが壊れているので関係ない。私を阻むものは何もなかった。

     この場所を見つけたのは昨日のことだ。

     イジメにイライラした私は屋上から飛び降りようと決意していた。ただ、人生は終わらせようとするときでさえうまくはいかない。屋上のドアには南京錠がかかっていた。

     私は絶望し、やけになり、トモミを殴るイメージでごつんと南京錠に正拳突きをかました。ダイソーで買ったみたいなチャチな南京錠はグニャリと曲がりこぼれ落ちた。あら。意外に簡単に死なせてくれるよ人生。私はダウナーな気分なのにどこかスキップしたくなるような気持ちでドアを開けた。ブワッと5月のちょうどいい風が私のほほを撫でた。

     澄んだ夕空が目の前に広がった。遠くの山裾にはカラスの影がカア。学校のまわりの田んぼが青々と風で模様を作っている。なんていい景色。私の拳は南京錠を殴った衝撃で肉が見え、血がにじんでいる。でもなんだかこのボロボロの拳は今の私にふさわしい。私はしばらく生きる事に決めた。


     そんなわけで屋上は私だけが知る特別な遊び場兼食堂兼カフェテリアになった。休み時間や気の乗らない授業のときは、必ずここに来た。ここには私一人しかいないけど、私一人なのがよかった。落下防止のフェンスを越え、屋上のフチから足をぶらぶら投げ出しながら、ゴミだらけになった母の愛の結晶を胃袋に押し込む。風が下からバサバサと私のスカートをめくってパンチラ。最高。梅干しを口に含み、種をぶっと中空に吐き出す。つばがご飯粒とともに飛散する。汚い。最高。白飯がしょっぱい。気づいたら頬を伝うのは涙だ。私も梅干しの種みたいにこの自由な空に飛び出したら楽だろうか。楽しいだろうか。アイキャンフラーイ。言ってみる。

     そんな最高に最低な気分でボロボロと泣いていたら、背後に「ターン」と音が響いた。

     トモミが来たかと思って振り返ってみると誰もいない。屋上の中央に何か茶色いモノが落ちていた。チュッパチャップスの先っぽの様な小さな球。あんなものあったっけ? いや、落ちてきた?

     そんなことを考えていると、上から「カアカア」という鳴き声が聴こえてきた。あ、カラス。カラスは屋上にギューンと突っ込んでファサっと着陸すると、その茶色い球体を器用にくちばしでつまんで再び上空へ舞い上がって行った。そしてひとしきり旋回した後くわえていた球を離した。「ターン」。茶色い球が屋上に転がる。

     私はすぐさまフェンスを乗り越え、転がっている球を拾いに行った。ひょいっと指でつまんで見るとクルミだった。どうやらカラス君、クルミを割ろうとしていたらしい。へえ、あったまいい。

     カラスは悲しい声で鳴きながら上空を旋回している。あ、これじゃ私が横取りしたみたい。ゴメンゴメン。クルミをもとの場所に置いて、ついでに私も少し離れる。カラスは喜んで降りてきた。そしてクルミをつまむと、さっきよりも高く、高く、高く飛んでクルミを落とした。

     クルミはペシャッと音をたて、中身がはじけ飛んだ。カラスはクルミの中身をくわえ飛び立つ。そのまま給水塔の傍に降りた。楽しそうだ。私はカラスに呼びかける。

    「私の唐揚げ食べるー?」

     私はゴミだらけの唐揚げをひょいと箸でつまむと屋上の中央へ投げた。カラスは給水塔でクルミをついばんでいる。

    「あんたが食べなよ。ゴミ付きだよ」

     カラスはクルミから目を離し、私の方を不思議そうに眺める。コイツナンダロウ。カラスの目が喋る。小首をかしげながらモジモジして。これまでの人生、いや鳥生? の中で人がエサをくれるなんて経験はなかったのだろう。

    「食べないのー?」

     私は唐揚げを指差しカラスに問いかける。カラス君、しばらくは警戒していたがやはり所詮鳥類。豪華ゴミ付き唐揚げの誘惑に負けたのかギャースと言いながら降りてきた。そして唐揚げをつまむと再び上空へ飛び立ち、そして唐揚げを落とす。べちゃ。それを何度も何度も繰り返す。べちゃ。べちゃ。

     にやける。このカラス君の中では食べ物は落としてから食べるのが作法らしい。不肖ながら私も弁当はゴミ箱に突っ込んでから食べる。カラスと同レベル。笑える。泣ける。

     カラスは屋上にたたきつけられたせいで更にゴミだらけになった唐揚げを食べ、ご満悦である。私はもうやぶれかぶれになって、母に買ってもらったお気に入りの弁当箱ごとカラスに向かって投げ捨てた。ガチャーン。弁当箱に描かれたポムポムプリンがそりゃないぜ顔をしているが知らん。カラスはトマトとかブロッコリーが入った手のひらぐらいの弁当箱をつまむとやはりそれを空から落とした。ターン! ポムポムプリンに亀裂が入っていく。ターン! 恨めしそうに見上げるプリン。嬉しそうなカラス。私は笑い転げた。


     次の日のお昼休みも屋上へ走った。今日のお弁当はトモミの友人兼野球部のバカ男子、の精子つきのティッシュが入った餃子弁当でござい。私は学食で買ったツナサンドと精子弁当をひっさげ屋上へやってきた。見回すとカアと一声。カラス君、給水塔の影で律儀に待っていた。私は忠犬ハチ公の如く鎮座しているカラスに「よ」と挨拶すると精子弁当を屋上の中央で盛大に叩き付けた。ギャアギャア。カラスは歓喜の声をあげながら精子弁当を加えて空へ舞い上がる。哀れカラスにくわえられたポムポムプリンは「助けてー」と声をあげるが大丈夫! 私はぐっと親指を突き立てそのまま親指を下へ。地獄へ堕ちろ! プリンはカラスのくちばしを離れヒャアと屋上に落ちて行く。傑作。私はその一部始終を屋上の端で足をブラブラ眺める。ツナサンドうまい。カラスは何度も何度も屋上に弁当を叩き付けた後、精子ティッシュだけはご丁寧にわきへよせ、餃子をつまんで給水塔に飛び上がって行った。

     下界には田園風景が広がっている。校庭の真ん中で男子達がボールをぶつけあって笑っている。私は屋上のフチで独り、カラスのショーを楽しんでいる。おう、これは死にたい。

    「コケー!」

     後頭部に衝撃が走った。私は軽くよろめき危うく校庭という奈落へ落ちそうになる。あぶねー。何? 私が振り向くとカラスが給水塔に降り立つのが見えた。カアとこっちを向いて威嚇。カラスが私を攻撃したと理解するまでに数秒かかった。

     なぜ? 一体? あの野郎。こちとらポムポムプリンを犠牲にしてまでご奉仕したというのに。見なさい無惨、プリンは完全にまっぷたつに割れ、残骸が屋上に飛散している。私はツナサンドを握りしめ給水塔の梯子に手をかけた。カラスが気配を察知しギャアギャアやっているが許さない。カンカンカン。軽やかに梯子を登ると給水塔の上に立つ。不遜にもカラスは逃げる様子もなくギャアギャアわめいていた。

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