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シリーズ:Birthday
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Birthday

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    「ごめん。大嫌いだよ」

    僕の唯一であった彼は、
    私の敵だった。


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    Birthday 1970文字

     

    僕は呟くように言った。

    「僕は常日頃から疑問に思い続けていたんだ」
    「何を?」

    僕とよく似た彼は僕の独り言めいた言葉にも律儀に反応を返す。

    「僕が生きている事について」
    「生きている事?」

    彼はいつものニヤニヤとした顔で手に持つシャーペンを弄んだ。

    「そう。僕は何故生きているのだと思う?」
    「おや、死にたいのかい?」

    彼はニヤニヤ顔を僕の顔ぎりぎりまで近づけた。
    あと少しで大惨事だ。

    「まさか! 自殺なんてこの世で最も愚劣で醜悪で卑劣な恥ずべき行為だよ。人間には誰しも寿命まで生きる義務がある。なのにも関わらず、其の義務を自分勝手な都合と理屈で勝手に放棄し、無権利に自らを殺す行為である自殺は最悪で最低な行為だ。この世で最も恥ずべき所行だと僕は認識しているよ。そういう人間は地獄の奥深くで一生許されず、永遠の苦しみを味わえばいいと思うほどだ」

    彼から顔を放す。あ、距離を詰められた。

    「そうかい。なら?」
    「ただ、ただ・・・・僕は何故・・・・今の今まで、今日の今日まで死ぬことなく生きてこられたのかと思ってね」
    「死なずに来れた・・・・・・りゆう?」

    彼は下から覗き込むように僕を見て、首を傾げた。
    俯きがちであった僕と顔をつきあわせる形である。
    顔の距離もかなり怪しい。
    何なんだ、こいつは。
    もう少しで大惨事だぞ。
    何でそんなニヤニヤしていられるんだよ、こっちは冷や汗流しているというのに。

    「そう。僕はどうにも生きる事に関する関心意欲態度に問題があってね。全てを流し流しで生きては来たけど、どうにも僕には生きる関心意欲態度のみならず能力にさえ欠陥が生じていたようで・・・・まぁよくよく生きてこられたもんだよ」

    一歩距離を置いて後ろを向いた。
    一先ず一安心とホッと息をついたのも束の間、肩をつかまれたかと思ったらクルリと身体を反転させられた。
    ニヤニヤ顔の彼が近い。

    「詰まり、あれかい?」

    彼は其処で一呼吸置いて僕の顔を上向きで固定する。
    目が半月の形に歪んだ。

    「君は桜のごとく儚く脆い存在だと?」
    「どちらかというと蟻かもね」
    「餓鬼に踏みつぶされてお終い?」
    「避けるまもなく、ね」
    「ふーん、こいつらみたく?」

    彼はニヤニヤ顔を離し、足下に転がる惨殺死体Dの頭部を踏みつぶした。
    グチヤァ、というくぐもった音がしてグチャグチャに潰された元頭部から足を引き抜くと、ねっとりとした血液と脳の混合物が足に縋りまだ血に汚れていなかった床を汚した。
    汚いな、と僕は顔を顰めた

    「そう、こいつらのように」

    僕は彼から一歩離れた
    今度は彼も追ってこない

    「っふふ、あっは、あはははは!其れは随分と!」
    「滑稽な話?」
    「ふっふふ、ああ」

    彼は愉しそうにさっきとは違う死体に対して破壊活動に勤しむ。
    あ、あれは僕の親友の死体だ。
    生前は見目麗しかった親友の面影など見る影もない
    そして僕は何の感情も、感慨もなく元親友、現死体が破壊されていくのを観察し続けた。

    「ん?嗚呼、知り合い?」
    「まぁ・・・・というか、そもそも此処は僕が所属するクラスなんだけど。一応は全員知り合いだよ」
    「覚えているかは別にして?」

    彼は血に塗れた手で僕を引き寄せた。
    狂気に彩られた瞳にうつるのは僕一人。
    そして、彼一人。

    「そう、だね」

    彼の血に濡れた手がボクの髪を汚し、すくい上げた。
    長い黒髪・・・・ボクと彼との絆であり、鎖。
    ボクと彼を結ぶ物。繋ぎ、とめる物。

    「帰ろう? ×××」

    真っ赤な手を彼は伸ばす。
    ボクは、

    スカートを翻し、手に持つ狂気を彼に突き立てた。
    グズィという音と共に彼の身体に飲み込まれていく凶器、
    肉を刺す感覚を手に感じながら更に更にと中に押し込む。

    「・・・・・・・・・×、××・・・・・・・?」

    彼の口から声と一緒に溢れる鮮血の血。
    驚きに見開かれた目が次第に色を失い、虚ろに何も写し出さなくなる。
    死の訪れを眺めながらそっと手を放した。
    一歩後ろに下がるとワタシに全てを預けていた彼の身体は勢いよく床に打ち付けられた。
    ワタシは其れを静かに眺め続けた。

    僕の唯一であった彼は、
    私の敵だった。
    僕の世界の全てだった彼は、
    私の世界を奪った。
    僕の家族だった彼は、
    私の家族を殺した。

    私は僕となり、僕は私へと還った。

    「ごめん。大嫌いだよ」

    小さな呻き声さえ止み、静まりかえった教室。
    物音一つしない完全な静寂のこの場所で生きているのは私だけ。
    死体を踏み、足を床を汚す事も厭わず外へ出た。

    全て殺した。私が、全て。
    愛してた。
    クラスメイトも、親友も、彼も。
    でも愛してたのは私じゃない。僕、だったから。
    私は、壊した。全て、全てを。
    僕が愛した物なんかいらない。私が愛した物を返して。
    壊れた物は返らないのに。
    僕は壊れた。私も壊れた。
    全てが壊れた。

    私は太陽の光を受け緑色に輝く緑陽を眺めた。
    眩しい光に眼を細める。
    口元には自然に微笑みが浮かんでいた。

    狂気に彩られた瞳を隠し、私は今日も人に混じる。


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