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シリーズ:霞ちゃんとマサオくん。
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霞ちゃんとマサオくん。

作者:かにゃんまみ

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    夢で逢えたら恋愛バージョン。
    ホラーじゃないってば!(笑)


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    霞ちゃんとマサオくん。 8021文字

     

     正直僕は僕自身がこの体になったことはさほど気にかけてなかった。

     今はもうあの子だけが心残り。

     こんな風になってからは夜の方が心地よいかと思っていたけれど、昼間でもさほど気分は悪くない。
     もう必要もなくなった家の周囲に張り巡らせていたバリゲート取り除き、雑草が生い茂った家の中に寝転んだ。
     畳のイグサの間から雑草が伸びている。家の中がどんなに荒れていても、カビてても、辺りに血の跡が沢山残っていようと僕の鼻は半分欠けてるし、嗅覚も鈍感になってるから別に問題はない。
     
     もう僕は怯えながら家の中になど閉じこもらずにすむ。
     現実逃避するためにゲームに無理矢理意識を集中させなくても済む。何からも逃げなくてもいい。

     ただ、あの子だけが心配だ。

     半年前近所に霞ちゃんという女の子が引っ越してきた。
     両親は後から来る予定だったのに、結局来れなかった。
     ガランとした家の中でただひとり。彼女はきっと今も家の中で震えているのだろう。
     霞ちゃんの家族はここにたどり着く前に奴らにやられてしまった。
     どうやら爆撃に晒され、奴らとともに粉々になってしまったらしい。人間もどきにすらなれなかったようだ。
     その情報はネットのニュースで見た。両親の名前をテロップで見た時彼女はさぞかし悲しかっただろう。

     霞ちゃんは僕の初恋の人だ。
     彼女が夏服でいつも元気よく学校へ行っている姿を僕は何度も見た。そして声もかけることもできず、ただ、でくのぼうのように立ち尽くし、いつも彼女に気づかれないよう物陰で見守っていた。
     
     まっすぐなストレートの黒髪はまるで絹みたいに輝いていて、肌は陶器みたいに白く綺麗なんだ。
     焦げ茶色の学生カバンには小さな桃色の鈴がいつも揺れていて、彼女が歩く度に鈴の高い音色が響く。
     彼女はたちまち近所の人たちの評判になり、よく歩く人形さんって言われてた。
     
     春先に彼女は引っ越してきた。荷物も旅行かばん一つで後から必要なものは空輸されてくる予定だったそうだ。

     僕はなんとか彼女の力になりたいと思っている。
     僕が子供の頃から知っている二軒先のおばちゃんが少し戸を乱暴に叩き、手には出刃包丁をもっているけど、僕が大好きな腐ったピザを毎日おすそ分けしにきてくれる。まだ彼女も半分人間の頃の記憶があるようだ。
     
     大好物なハエも沢山たかっていて、そのツンとした匂いが強烈なのか僕のこの鈍った嗅覚でも十分に香り、酸っぱい味が最高に美味なのである。
     おばちゃんは片足が腐ってもげていたけど、なぁに問題ないさと脚を木で固定して、その先にどこかで拾った運動靴をくくりつけ義足っぽいのを作ってそれを脚がわりにしていた。
     少しびっこを引いた歩き方だったけど今日も元気に帰っていく。

    「そうだ。こんなに美味しいピザなら霞ちゃんも喜んでくれるかな」
     僕は自分が食べたいのを我慢してピザの箱を片手で持ち、霞ちゃんの家に向かった。箱はだいぶ壊れかけていてピザ屋のロゴ印刷も薄れている。
     僕は中身が落ちないように何度も注意しながら運んだ。
     
     霞ちゃん、霞ちゃん。
     
     僕は彼女の家の玄関下にピザをドカンと置くと、戸を叩き、そのまま直ぐに物陰に隠れた。
     玄関のガラス引き戸に影が見え、音もなく戸が開くとそこから白い手と顔が見えた。
     可愛らしいつぶらな瞳の霞ちゃんがまるで怯えた小動物みたいに目をクリクリとさせ恐る恐るそっと外を覗いている。
     
     ほら、霞ちゃん、お腹減ってるでしょ。それ僕の大好物なんだ。美味しいよ。
     僕は心の中でニンマリとしたけど、霞ちゃんはピザを見てひっと小さく悲鳴を上げ、そのままドアの中へまた引っ込んでしまった。 
     気に入らなかったかな……。
     
     僕はがっかりして肩を落とし。と言っても僕の肩もだいぶ削げているけどね。家に戻った。
     家では母さんがキッチンで僕のために毎日ご飯を作ってくれている。時々変な奇声を上げたりしてるけど、もともと陽気な母さんだからそんな姿も微笑ましい。
     少々乱暴に出刃包丁を振り上げるものだから、野菜じゃなくて自分の手を時折刻んでしまってはいたけど、そんなところもお茶目だ。
     父さんはテレビを見ながらブツブツと何か言っては時折低い声で唸る。父さんはもともと理論派だからテレビの政治の討論に物申したいことがあるのだろう。
     時折イライラして自分の首を絞めているけど、気絶しては起き上がっている。
     
     そうこうしているうちに辺はすっかり暗くなる。
     夜空はとても綺麗だ。僕は自分の部屋から窓を開け、紅く光る月明かりを見ながら、あの子の綺麗な横顔を思い出していた。
     不思議だな、僕の体は日に日に痺れて感覚が無くなっていっているのに、どうして霞ちゃんを思う気持ちは毎日どんどん強く大きくなっていくのだろう。
     この胸の痛みは何?
     僕は硬くなってろくに回らなくなった首を体ごと傾け、この苦しみの正体を探った。
     
     その彼女の手にたった一度だけ触れたことがある。
     そう学生が嫌がるダンスの授業だ。僕は緊張してその時のことをほとんど覚えてないけれど、ワルツだった気がする。
     彼女と一瞬だけだけどクルクルクルと踊ったんだ。
     彼女はいつも腰に桃色の鈴をつけていてそれがその時も軽やかな音をさせた。
     その瞬間だけ僕はまるでお月さままで飛んでいったようなんだ。
     
     ぼんやりと夜空を見ていたが次第に月明かりが雲間に消え、星の瞬も薄れていく。あたりの空気が湿ってきて冷たい空気に変わるとふわりと白い粉のようなものが降ってきた。

     ええと、ええとこれはなんだっけ?

     僕は思わず机の上に乗って、開いていた窓から手を伸ばしつつ空を見上げた。
     右手の感覚が一番残っていて、その手のひらに降ってきた粉を乗せるとヒンヤリした。
     どんどんその粉は増えていく。僕は飽きもせず何時間もその様子を窓を開けっ放しで眺めていた。
     そのうち次第にうちの庭先の枯れ果てた畑や樹の上に積もっていく。ずっと手を挙げていたせいか手にもこんもりとかき氷のように白い塊となって積もっていった。
     手の平を見ると何故か凍っていた。これはきっと僕が感じているよりも相当外気は寒いに違いない。
     僕は昼間見た霞ちゃんの服装が半袖だった事を思い出した。そういえば霞ちゃんは春先に引っ越してきたばかりで、家には冬服がないのだろう。
     
     夜は寒いだろうから、何かないかと僕は部屋を漁った。なるべく暖かくて綺麗な毛布を押し入れの中から引っ張り出す。
     だいぶ前に叔父さんからもらったもので、それはまだビニールの袋に入ったままだった。海外のブランド品に恐れをなして使えなかったんだ。
     これならきっと霞ちゃんは受け取ってくれる。と思い、僕は二階の窓から袋に入ったままのそれを落とすと、ぼすんとそれは雪の上に落ちた。
     すぐに下に降りて、玄関から外に出ると雪は結構積もっていた。
     裸足だとまだ冷たい感触があったので、急いでスニーカーに足を突っ込み外に出て落っこどした毛布をうんしょと運び出す。
     雪にくっきりと毛布で引きずった軌跡をつけて、僕は霞ちゃんの家の玄関前にそれを置いた。

     もう寝ちゃってるだろうか……。

     そう思いながらも高鳴る胸を押さえ僕は玄関の扉を叩いた。
     すぐに離れようとして雪で足元を取られ滑りそうになりながら、慌てて陰に身を潜める。
     しばらくして懐中電灯の光が見えて、またそっと玄関を開く様子が見えた。
     
     彼女の顔は懐中電灯に僅かにしか照らされてなかったけれど、先ほどの怯えた表情ではなく、少し驚いたような顔をしていた。
     玄関から少しだけ身を乗り出すと辺を見渡す。
     
     霞ちゃんはカーディガンを羽織っていたけれど、やっぱり薄着で寒そうだ。
     しばらくしてその毛布が彼女の玄関に吸い込まれていくのを見て、僕は思わずガッツポーズをした。嬉しくて気分が高揚する。

     そうして僕と霞ちゃんの無言のやり取りが始まった。
     何度か物を運んでいて気づいたことは霞ちゃんは匂いの強いものは苦手。
     というか僕らが好んで食べるものは苦手らしい。
     僕の記憶が曖昧で舌もこのところ片方が麻痺してきたような気がして、歯も昨日二本抜け落ちたし、味覚というものがわからなくなっている。

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    コメント

    • 御無沙汰しておりますっ、能上さん、お返事遅くなりました@@;ありがとうございますっ!ゾンビさんに意思があったらこんな風な恋愛をするのかなぁと思いながら書いていました。とても楽しかったです☆でも現実になったら怖いですよね;
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    • こんな恋愛ありです。
      過去に映画で描かれた未来が今現実になっているって言われてますが(3D映画とか、テレビ電話とか)こういう世界もいずれ現実になると思います。戦ったり隠れたりは嫌だから、私はすぐこっち側に行きます(≧◇≦)
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    作者紹介

    • かにゃんまみ
    • 作品投稿数:37  累計獲得星数:309
    • 初めまして。2014年の3月末位から初めてここに投稿させていただきました。

      ツイッターかにゃんまみで登録しました。BL小説書きの方とフォローしたいです。よろしくお願いいたします。

      長い間BLの小説を趣味で書いています。
      絵を描くのも好きですが、小説を書くのも大好きです!
      職業はゲームのドットやアイコン背景画のデザイナー?(^^;しがない絵描きです)
      フロンティアワークスさんのゲーム。三千界のアバターのシナリオのお仕事もさせていただいています。

      BLサイトはhttp://bluemoonlight.sakura.ne.jp/です。
      不束者ですがよろしくお願いいたします。

      最近好きな物。あいうえお順。種類雑種;



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      阿部寛
      イトケン
      エルキュールポアロ
      小山慶一郎
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      指原莉乃
      志倉千代丸
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      ポルノグラフティ
      (他にも色々あるけど……)
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      帰還~moonlight~:http://bluemoonlight.sakura.ne.jp/

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