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シリーズ:賢者の贈り物2015クリスマス版
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賢者の贈り物2015クリスマス版

作者:しかぞう

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    元ネタは嫌いじゃないけど特に好きな話でもないんだが、ぷちほら~でも使ったなあ。ネタに困ってるんだな単に。


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    賢者の贈り物2015クリスマス版 2438文字

     

    12月25日はクリスマスで、私の誕生日で、彼との結婚記念日だ。今年で三回目になる。
    幸せしかない日のはずなのにどうしようもなく気持ちが暗くなる。
    彼と出会えてよかった。それはいまも変わらない。ずっとこの先も変わらないだろう。
    でも、彼は私を見つけなければよかったのに。
    近頃、彼の表情が暗い。去年もそうだったけど今年はさらに暗い。その前の年もちょっとそうだった。景気が悪くなり、社会不安が増大し、そういう兆しの年だった。だから彼は、私にプロポーズした。
    この先、世の中がどうなるかわからない。でもどんなことになっても、苦しい時だからこそ、君のそばにいたい。結婚して欲しい。
    そのときの彼の言葉を思い出すだけで、私は生まれてきた喜びに満たされる。彼がそばに居てくれるだけでいい。別にそれ以外のことなんてなにも望まない。そりゃ生活は苦しいけれど暮らせないほどではない。子供はあきらめなくちゃいけないけど、それは今すぐは作らないと言うだけだ。この先どんどん悪くなるって言われても、そんなのなってみなくちゃ分からない。自分のよくわからない理由で世の中が悪くなったんだもの、今度はよくわからないままよくなるかもしれない。
    彼の愛は変わらない。なのに私はその愛から逃げて彼から離れることばかり考えている。
    彼は私を深く愛していて、私を見るたびに、こんなはずじゃなかったと表情を曇らせ、ため息の合間にしきりに詫びるのだ。そんな彼の暗い顔を見るたびに、私はつぶれそうなほど胸が苦しくなる。
    私を愛するが故に、彼は苦悩している。
    なにもお姫様のように扱われたいわけじゃない。そんな要求だってしたことない。でも彼は、私を世界で一番幸せな女性にしたかったようだ。せめてなに不自由ない生活に。
    このご時勢に専業主婦だ、しかもこどももまだ居ない。上場してるような大手じゃないけれど、彼の会社は固い中堅企業で、同期の中では一番早く出世している。平均給与よりもずっと高い。
    私もそんな生活に深く感謝してる。夜に眠りに落ちるまでと朝起きたときに、彼の顔を一番に見られればいい。それ以上のことなんか望まない。でも彼は、こんな時代じゃなければもっと君を幸せにしてあげられたのに、と苦しんでいる。今朝もそうだった。
    彼を見送ってから鏡をのぞく。
    彼が愛してくれた無邪気な笑顔は、昔みたいな魔力をもうなくしてしまったみたい。うっすらとくまができてる気がするし、しわも増えた。最近だと笑ってるときにひきつってしまうのが自分でもわかる。
    そしてこれから悪くなっても、よくなることはないのだ。もう私には彼を幸せにできるようなことはなにもない。
    朝食のときに彼が点けたテレビからまた暗いニュースが流れてくる。私はヒステリックに悲鳴をあげた。
    テレビを消して。ニュースを止めて。どうしようもない不安をわざわざ気づかせないで。
    心がくたびれているのを感じる。今日も、彼が私を心配する理由が生まれた。私は別に苦しんでいないのに、私の存在は、もう彼の重荷でしかない。
    だから考えた末に、今年のクリスマスは、彼に特別な贈り物をすることにした。
    手作りケーキに、彼の苦しみを止める薬を入れてある。ちょっと大変だったけど、彼は苦しまずに眠るように意識を失い、二度と目を覚まさない。
    結婚のときに一緒に入った生命保険は、去年に掛け金を増額した。別にお金なんかいらないし生きてもいけるけど、彼はそれで天国でようやく安らげるのだと思う。私は地獄に落ちて彼に二度と会えないけど、それでも彼の苦しみを止められるなら構わない。毎日後悔しながら生きて苦しんで、死んでからも永劫の業火に焼かれたって後悔しない。出会ってから今までで、もう彼は十分に幸せにしてくれた。もう私の望みは、これ以上私のために彼を苦しめないことだった。
    ダイエットだからと言って、私は彼の分のケーキだけを用意した。彼は別に疑いもしなかった。盲目的に彼は私を愛している。私はそれを卑劣に裏切るのだ。でも彼をこの苦痛から解放するためなら、私は彼に軽蔑されたって構わない。
    ドキドキしながら食事の支度をする。こんなに気持ちが高ぶるのは告白以来だ。今夜は、まだ彼の愚痴が出てないからかもしれない。
    シャンパンを開ける前に、彼が星を見ようと私を誘った。マンションのベランダへ出て招く。私は彼に寄り添うように並んだ。空気は冷たいけれど彼の温もりを感じるのが嬉しかった。背中から腕を回すように彼が私の腰を抱く。

    「愛してるよ」
    「私も」

    こんな安らいだ気持ちは何年振りだろう。私は夢見心地で宙に浮くような気分だった。本当に浮いていた。彼に背を押され、ベランダから突き落とされたのだ。

    「もうこんなことしかしてあげられない」

    彼が優しくそう呟いた。私は彼が私と同じことを考えたのだと気がついた。
    驚いたけど怒りや恨みはない。飛び降りは、首つりの次に苦しくないと聞いたことがある。
    この高さならまず助からないし、それもすぐに済むだろう。彼らしい、最大限に配慮した結果なのだろう。
    ただ私の心残りは、私の特製ケーキだ。
    彼が邪悪なペテン師で、私の生命保険を狙っているのだったら、警告したかった。それを食べてはいけないと。
    それで豊かになろうとも、他の女と幸せに暮らそうとも、彼がそれで幸せになるなら構わない。私はもう十分に幸せだった。この死の瞬間においてさえも。だから彼が冷酷に、バカな女とせせら笑いながら私のケーキなんか食べずに捨ててしまえばいいと願った。
    でも彼の最後の言葉はとても優しかった。私がそう考えたように、こんなことしかできなかった自分の不甲斐無さを悔やみながら、きっと残さず食べるのだろう。私の最後の手料理として。
    そして大仕事を果たした達成感と一緒に、眠るように意識を失い、私と地獄で再開するのだろうか。
    そう考えるとそれもそんなに悪くない。お互いのクリスマスプレゼントは意図したこととは違うけど、無駄にはならなかったのだ。
    私は幸福感に包まれながら激突した。

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