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シリーズ:101人目のHerobrine――母のようなもの
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101人目のHerobrine――母のようなもの

作者:しかぞう

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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    これは「minecraft」と言うゲームの世界観をモチーフにした短編小説です。着想をゲームに得ておりますが、内容は必ずしもゲームの設定と整合性を保っているとは限りません。minecraftは様々なバージョンがありますが、筆者がプレイしているのはMinecraft Xbox 360 Editionです。


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    101人目のHerobrine――母のようなもの 2118文字

     

    ああ、あの箱の話を聞きに来たのだね。
    この世界に生まれたときから存在し、わずかな食料や粗末な道具、そしていくばくかの苗木や種、そしてまれに金属が入っているあの箱だね。中身を抜こうと壊そうと、いつの間にか戻っていて補充されている、夜でも見つけやすいように明かりで囲まれている、皆がボーナスチェストと呼んでいるあの箱だね。
    いままで何人もあれはなにかと聞きに来たよ。申し訳ないが、あれの正体は私も知らない。君を偽るつもりもからかうつもりもないんだ。私もあれがなんなのかは知らない。
    それでも、全く君に話せることがないわけじゃない。数十、数百人が私にあれはなにかと聞きに来たよ。しかしただ一人だけ、あれがなにかを話しに来た者が居た。彼の話をまだおぼえている。その話をしてやることができるだろう。
    彼も最初、あの箱について不思議に思った。罠かもしれないと手をつけなかったそうだ。しかし君のように不思議に思う人たちの話を聞いて、本当かどうか試すためにいろいろとしたそうだ。ほとんどの物がすぐに不要になるように、その頃の彼には、もうとっくに不要なものだったのだがね。そして話通り、中身は補充され箱は復活した。謎は深まり彼はより不思議に思って考え込んだ。
    噂をする者は無責任に、中身の粗末さをあざけり、どうせ補充されるならもっと価値あるものであればいいのにとうそぶいた。彼はそれを聞くと不思議な反発心をおぼえたそうだ。だから、その中身を浪費することなく、わざわざそのための保存場所を用意して安置したそうだ。それを目の前にして考えた。
    これらは粗末だ。ただ、それでもこの世界に投げ出され、自分の手足以外になにも持たないときであれば、とても助けになる。道具のための枝を折るときに、石を割るときに、隠れるねぐらを掘るときに、指と爪を使わなくて済めばどれだけ楽だろう。動物を狩るのに慣れるまで飢えずにすめばどれだけありがたいか。荒涼とした砂漠や氷原で、一本の苗や種がどれだけ希望になってくれるだろう。
    ほとんどの者はそこまで困らない。しかしもし困ったら、これだけ心安んじてくれるものは他にない。
    自分が最も弱く心細いときに、役に立つ物が入っている。多少の差はあれ、誰にとってもそういう物が入っていた。
    そして、もっとましな物について考えた。確かにもっと価値ある物は多い。
    しかし、それを人から恵まれるのは幸せだろうか。
    本当に価値ある物を自分の手で手に入れる喜びは、それを見つけ出すまでの試行錯誤は、既に与えられてしまえば大きく減じ、もしかしたら永遠に気づかないかもしれない。それを箱から受けて消費する生活は素晴らしいだろうか。その営みが自分の人生の全てだったら、とてもみじめではないだろうか。そのみじめさに気づかないほどみじめなことはないのではないだろうか。富の中で己の価値を見いだせないまま心が飢えるのだ。それは残酷だ。
    そう、豊かさの中でも私たちは容易に痩せ衰える。自分自身を見下し、憎んだりすらする。それに傷つき死に到ることさえある。
    彼はそのとき、この贈り物を見るのだと言った。
    自分が最も弱く、愚かで、不安定なとき。確かに私の幸せを望む何者かの願いがあった。私はその誰かに望まれて生まれたのだ。その者は私の幸せを願っている。そして蔑まれ侮られ、ときには憎まれようとも、私の幸せのために考え抜いた助力を、私の手の届くところにさりげなく置いてくれた。
    多くの者がすぐにそんなささやかな助けを必要としなくなる。しかし、その者はその助けを決して止めることはない。その愚直さに、私は私自身ですら私を許せないときでも、私を見捨てないで済むのだ。決して私を見捨てることのない愛のようなもののおかげで。形無き、価値無き価値を、私はそこに見つけることができる。
    彼も最初は、君と同じように、私にその箱について聞きに来たのだと思う。そしてその箱について説明しようとするうちに、その箱への思いを、そして箱からの思いに、考え至ったのだろう。
    彼は私の返事を待たずに立ち去ったよ。私も余計なことは言わなかった。代わりに、彼の話を反芻し、忘れないように何度も繰り返した。そして彼のように聞きに来る者へ、彼の話をすることにした。誰もが、彼のようにそこへたどり着くとは限らないからね。
    彼はいまでも、箱の中身を見て贈り主に感謝しているだろう。その送り主の中で、いつまで自分はか弱い存在でいるのだろうか。そしてなぜそのか弱い存在を愛してくれたのだろうか。そしてそこから、たくましく成長した自分の行いと、そのありがたさに気づけるようになった賢さに、深い感謝の念を抱くのだ。
    自立して、自分を守り望みをかなえる強さを持つようになった彼が、最後に求めたのは、無条件で彼を愛してくれる存在。いや、そういう存在がすでにあったことに気づくことだったんだ。そして人はしばしばすぐにそれを忘れ、思い出す必要ができる。いくら古くて無価値になった贈り物でも、そういうことを思い出すのには役に立つ。
    見てくれや人の言葉に惑わされて、そういう物を粗末にしないように。
    愛は決して失われない。
    しかし、私たちは形無くしてそれを実感するのは難しいのだ。

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