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シリーズ:友達のなる木
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友達のなる木

作者:木下季花

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    校庭の隅には友達のなる木が生えている。
    友達がいない子供は、そこで友達を採って一緒に過ごす。
    友達のいないタケルも、その木の実を採って、友達と過ごし始めた。
    友達は、信じられないくらいに良い奴で――


    登録ユーザー星:9 だれでも星:2 閲覧数:192

    友達のなる木 7819文字

     

     校庭の隅には、友達のなる木が生えている。
     それは僕の背丈の三倍以上はありそうな高さの木。
     校庭に一本しか生えていない木。
     ほとんど誰も寄りつかない不気味な木。
     様々な方向に伸びる枝には、葉が生い茂っている。
     その葉の間に、僕と同い年くらいの子供たちが垂れ下がっている。この木には、ある時期になると『友達』が実るのだ。だいたい春ごろに、小さい人間の形をしていた蕾が一斉に大きくなり、木の枝にたくさんの友達が垂れ下がる光景が見られる。
     例えばクラス替えなどがあり、知り合いが誰もいなくなった時。あるいは自分で上手く友達を作れない子供などは、その木からこっそり友達を採って、その子と一緒に過ごすようになる。
     どれくらいの子が木を利用するのか、夏ごろになると、いつの間にか実の数は減って、あんまり良くなさそうな友達しか残らなくなる。
     実際に夏休み明けのこの季節では、ほとんど良い友達は残っていない。例えば、目つきの悪い猫背の女の子。ガリガリに痩せて異様に目だけが大きい男の子。物凄く太っている女の子。顔面がにきびだらけの背の高い男の子。それらが無表情で、動くことなく木に垂れ下がっている。誰かに採ってもらえるのを待っている。このまま誰にも採ってもらえなければ、どんどん萎んでいって、冬には枯れてしまう。そうしたら彼らは死んでしまう。でも、ほとんどの子たちはそんなこと気にも留めない。友達がいっぱいいる子ほど、この木の存在など気にしていない。
     でも僕みたいに友達がいない奴にとっては、彼らみたいなのでも枯れてしまうのが可哀想と思うし、大切な友達になれるんじゃないかという気がする。今までは変なプライドが働いて、この木に近寄ることさえもできなかったけれど、どうせ自分には友達ができないのだし、上手く誰かに喋りかけたり、会話を続けたりするなんて無理なので、変な意地など張らずに、もっと早くここで友達の実を採るべきだったと後悔している。
     下校時刻を過ぎた後の、誰もいなくなった校庭にこっそりと忍び込んで、先生たちに見つからないようにここまで来た。けれど、今一つ最後の決心がつかない。
     無表情の『友達』たちは、木に垂れ下がりながら、闇にまぎれて僕を見つめている。彼らの頭から伸びている蔓のようなものを切れば、すぐにでも僕の友達になってくれる。僕は友達が欲しかった。休み時間に、皆で遊んでいるクラスメイトが羨ましかった。
     僕は根元の近くまで寄って、木を見上げた。
     数えてみたけれど、もう六人しか友達は残っていない。
     全て採ってしまうのはマナー違反のような気がするし、いっぱい友達が欲しいというわけではないので、どれか一つを採ろうと思うけれど、どれを選べばいいのか分からない。
     女の子が四人と男の子が二人残っている。猫背の女の子。太った女の子。陰険そうな顔つきの女の子。異様に痩せた狡猾そうな女の子。それからガリガリに痩せた男の子。ニキビ顔の背の高い男の子。外見だけで判断するしかないのだけれど、特別に友達になりたいと思うような子はいなかった。せめて言葉を交わせれば性格なども分かるんだろうけれど、それも叶わない。
     僕は、なんとなく、ガリガリの男の子を友達として選ぶことにした。まず第一に、女の子は駄目だ。昔から女の子は苦手だ。よく苛められるし、異性の悪い所ばかりを挙げて責めてくるし、すぐに他人の悪口を言う。僕は女子が苦手で嫌いだった。だから男子のどちらかを選ぶのだけれど、背の高い子の方は、もし喧嘩になったとき体格差で負けそうだと思ったからやめた。長い脚で蹴られたら痛そうだ。痩せている子の方は少なくとも組み伏せれば勝てそうだという、なんとも打算的な考えが働いて(友達を選ぶときにこんなこと考えるのはおかしいけれど)、僕はガリガリに痩せた男の子を友達として選ぶことにした。
     僕は木の幹をよじ登って、ガリガリの男の子が垂れ下がっている枝までなんとかたどり着いた。結構な高さがあるけれど、このまま蔓を切って落としてしまっていいものか。とりあえずハサミは持ってきたものの、太い蔓をハサミだけで切るのは大変な作業だった。十分くらいかけて切り落とせたときには、男の子が落ちることに対する心配もどこかへ吹っ飛んでいた。
     切った瞬間に、痩せた男の子は重力のままにすっと落ちていく。そしてドサッと音を立てながら地面に尻もちをついた。慌てて彼の元へ降りていくと、彼は手で尻を抑えながら「荒っぽいなあ、もう」と不機嫌そうな声を出した。
    「ごめんね」
     取り繕うように僕がそう言うと、
    「いいよ。俺を友達として選んでくれて、ありがとうな」
     そう言って、彼は歯を見せながら、にかっと笑った。
    「俺はヤマト! お前は?」
     手を差し出されながらそう言われたので、僕は彼を起こすために手を引っ張りながら、
    「タケル。相原タケル」
     と名乗った。
    「そうか。今日から俺たちは友達だ! よろしくな、タケル!」
    「う、うん……よろしくね、ヤマト!」
     そうして、僕とヤマトはその日から友達になった。

     翌日。
     四年二組の教室に入ると、僕の後ろの席はヤマトの席となっていた。
     元々、僕の背後の席には誰もいなかった。けれど、いきなり机と椅子が用意されていて、そこには当たり前のようにヤマトが座っていた。
    「おはよう、タケル! お前、寝癖すっげえぞ」
     開口一番、ヤマトは僕の頭を指差しながら笑った。
     それは決して馬鹿にしているという風ではなく、友達同士のからかい合いみたいに聞こえた。僕がずっと羨ましく見ていた、親友同士が行う挨拶みたいだった。
    「は、恥ずかしいから、そんなこといちいち言うなって!」
     僕が少し怒って見せると、ヤマトは手を合わせながら、
    「ごめんごめん、そんな怒んなって」
     と、とてもおかしそうに笑った。
     何だかその友達らしいやり取りに、僕は気分がよくなった。
     僕が席に着くと、ヤマトは僕の前に回り込んで、なんだかもじもじした態度を見せてから、すまなそうな表情を見せた。それから勢いよく手を合わせ、
    「すまん、タケル。俺、宿題やってくるの忘れちまったから見せてくんねえ? 一生のお願い!」
     そう言って茶目っ気たっぷりに頭を下げた。
     媚びるような上目使いも見せてくる。
     それがなんともヤマトの外見に合っていて、ヤマトのキャラクターとしてピッタリだと思った。
     何より、僕とヤマトの今のやり取りが、すごく友達っぽくて、本当に昔からそういうやり取りをしてきたような錯覚を覚えた。
    「まったく。ヤマトはしょうがないなあ。一生のお願いなんて嘘だろ?」
    「わりい、いつもごめんな!」
     そう言って僕が渋々といった表情で出した算数のノートを、凄く申し訳なさそうに頭を下げながら、ヤマトは机に持っていった。
    「あとで、ガムあげっから許してくれ!」
    「ガムなんて持ってきたら先生に怒られるぞ」
    「うわー、タケル―、ぜひご内密にぃー」
     ヤマトは冗談っぽく自分で笑った。
     まるでずっと友達だったかのように接してくれるので、ヤマトを選んで本当に良かったと思った。外見はひょろっちい奴だけど、ひょうきんな感じで、僕はとても良い印象をヤマトに持った。

     学校生活を送っていると、ヤマトの席の事もそうだが、誰もがヤマトが突然現れたことに疑問を覚えていないようだった。ヤマトの存在はクラスメイトに当たり前に受け入れられていた。
     クラスのリーダー格のユウヤも「おう、ヤマト。ガムあったらくれ」と言って気軽にヤマトに話しかけていたし、女子も委員長も、先生までもが、ずっと昔からヤマトを知っていたかのように接していた。そのことは少し不気味に感じたけれど、その方が僕に都合がいいと思って何も言わなかった。

     ヤマトが友達となってから、僕は充実した毎日を送った。休日になれば一緒に遊びに行った。一緒に釣りをした。公園でキャッチボールをした。教室内でも、ヤマトと一緒に楽しく話していると、今まであまり話したことのなかったクラスメイトが、会話に混じってくるようになった。それは多分、ヤマトの明るく接しやすいキャラクターと、それにつられて僕までもが明るい人間になったかのように、笑顔で違和感なく話せるようになったことが大きいと思う。

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    コメント

    • 発想が面白いですw
      個人的にあともう一ひねりあったらもっとよかったな~と思いますが、これは勝手な感想ですw
      けど、最後のセリフで実際の真相がどうなのか…ってところが気になりますね~w 小学生ギャグもよかったですww
      そうそう、そんな感じ!って具合にw
      ↑脳内小学生男子と言われるオバサン(汗
      • 1 fav
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    • 感想ありがとうございます!
      確かに展開がストレートすぎましたかね……(笑)
      ギャグの部分は締切間近の深夜のテンションで考えたもので、あの時間は精神年齢が小学生化しますね。
      なんであんなギャグを思い付いたのか……(笑) 私の脳内にも多分、小学生男子がいるんだと思います。
      • 1 fav

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    • メタファーとしてもファンタジーとしても美しい話だと思います。最後まで読み終えて、友達ってこういうものだと改めて思いました。打算で考えないとはすなわち、自分の欲求を気を回さないでぶつけられるということでもありますからね。下品なダジャレから主人公やその友達の身勝手さまで、非常にそれらしい子供らしさの描写が光る作品だと思います。
      • 2 fav
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    • しかぞうさん、感想を書いていただきありがとうございます。
      メタファーとしても美しいとお褒めいただいて、作者冥利に尽きる思いです。不思議な設定の中でも、なるべく小学生らしい姿を書くことを意識したので、その点についても評価していただけるのは本当に嬉しく思いました。
      丁寧にお読みくださり、本当にありがとうございます!
      • 1 fav

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    作者紹介

    • 木下季花
    • 作品投稿数:20  累計獲得星数:77
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