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シリーズ:アイムホーム~あなたの家になりたい
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アイムホーム~あなたの家になりたい

作者:くろねこ8

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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    大学時代に付き合っていた先輩に、久しぶりに呼び出される優人。忘れていた恋心を思い出すも、すでに先輩は家庭を持つ夫だった。・・・が、その先輩の口から、優人は妻との不仲を打ち明けられる。


    登録ユーザー星:0 だれでも星:0 閲覧数:87

    アイムホーム~あなたの家になりたい 2319文字

     

     宮野という大学時代の先輩から、久しぶりに会って飲もうという誘いの連絡があったのは、関東地方がいよいよ梅雨入りを迎えた六月も半ばのことだった。
     仕事を終え、会社から直接待ち合わせのホテルのバーに向かうと、早くも先輩は、琥珀色の液体が入ったグラスをカウンターで手持ち無沙汰に揺らしていた。
     腰のラインが引き締まった逆三角の身体は、一見すらりとしているが、実際はかなりの筋肉質だということを優人は知っている。その逞しい身体を包むのは、ピンストライプの入った上等なスーツ。身体の線に沿ったシルエットはおそらくオーダーメイドのそれだろう。
    その顔が、優人の存在に気づいて振り返る。
     目鼻立ちのくっきりとした、どことなくワイルドな印象の風貌。目も口も鼻もいちいち主張が強く。それでいて全体として端正な印象があるのは、一つ一つのパーツが美しく、しかも絶妙なバランスで配置されているからだ。
     くっきりと大きな二重瞼に、濃い眉、高い鼻。中でも分厚く横に広い唇は男性的でかつ淫猥で、事実、その唇が落とすキスがこの上なく濃密であることを優人は知っている。
    「すみません先輩、遅くなって」
    「いや構わんさ。お前も何か飲むか」
    「いえ俺は、とくには」
     どうせすぐにここを出るのだろう。そのつもりで答えると、宮野はまぁいいじゃないかと笑い、バーテンダーに飲み物を頼んだ。
     やがてカウンターの向こうから、瀟洒なカクテルグラスが届けられる。
    「マティーニだ。こいつはバーマンの腕によって店ごとに味が大きく変わるんだが……ここのはなかなかいけるぜ。まぁ飲め」
    「……はぁ」
     おそるおそるグラスを近づけ、舌先でちびりと舐める。強烈なアルコールの臭いが口の中に広がり、うっとなった優人は思わずグラスを唇から離した。
     どうも口に合わない。こんなものよりコンビニで売られている缶カクテルの方がまだ飲みやすいと感じてしまうのは、優人の舌がまだまだお子さまだからだろう。
    「ははっ苦いか?」
     前髪を掻き上げながら、宮野が愉快そうに笑う。
     その明朗な笑顔を見上げながら、優人は馬鹿馬鹿しいと知りつつ、かつて彼に抱いていた感情を思い出さずにはいられなかった。
     この宮野とは昨年の春、彼が大学を卒業するまで付き合っていた。
     二人のそれは、誰にも知られてはならない極秘の関係だった。男同士だからということもあったが、当時、宮野にはサークル公認の恋人がいて、どうしても彼女の目を盗む必要があったからだ。
     その後、大学卒業と同時に宮野はその恋人と結婚。優人とは別れることになったが、どのみち浮気から始まった恋愛、いずれこうなる運命だったと優人は割り切るしかなかった。
     そして今日――
     約一年ぶりに、その宮野から優人は呼び出しを受けた。
    「あの……どうして急に、俺を」
    「いや、最近どうしてるかな、と思ってさ」
    「……」
     一瞬、抱きかけた期待を阿呆らしいと優人は一蹴する。
     かつてのサークル仲間の話によれば、宮野の妻は現在妊娠中とのことで、つまり宮野は間もなくパパになる結構な身分なわけだ。
     その宮野が、まさかそんな……
    「相変わらず可愛いな、お前は」
    「えっ?」
     振り返ると、じっとこちらを見つめる宮野の眼差しとぶつかり優人は動揺する。その眼は、かつて幾度となく優人を求めたときの眼差しとよく似ていて――否、そのもので、だが今の宮野の状況を考えるならそんなことは絶対にありえず、ますます優人は混乱する。
     恐らく、優人自身の卑しい主観がそう見せているだけなのだろう。――あるいは秘めた願望が。
    「かっ、可愛くなんか……」
     気まずさを紛らわすべくグラスのものを一気に空ける。強烈なアルコールが喉を焼き、激しくむせてしまったのは社会人としてあまりに情けなかった。
    「おいおい大丈夫か?」
     宮野の大きな手のひらが、宥めるように優人の背中をさする。その少々無造作な手つきに、つい昔のことを思い出してしまった優人は、そんなふしだらな自分がますます許せなくなった。
     その後、宮野との会話は当たり障りのない近況報告に終始した。会社のこと、彼の属する金融業界のこと、仕事のこと、等々……それらは、大学の先輩後輩が交わす会話としてはごく一般的な内容だったが、至らない願望に勝手に胸をざわつかせる優人にはむしろ良いリハビリになった。
     このままいけば、あるいは、ごく普通の先輩後輩の関係を取り戻せるかもしれない……
     ところが、話題が宮野の家庭の話に差し掛かった時だ。それまで調子が良かった宮野の弁舌が俄かに鈍った。
    「何か……あったんですか?」
     すると宮野は、いや、と何かをごまかすように軽く笑って、
    「ちょっとな。最近、どうもあいつとは感情的なすれ違いが多くて……正直、少し参っているんだよ」
    「すれ違い、ですか?」
    「ああ。最近では、離婚という話も出てきている」
     ――離婚。
     宮野の言葉に、優人は後頭部を殴られたような心地を覚える。まさか、つい一年前に友人一同に祝福され新しい人生の旅路に踏み込んだばかりの宮野の口から、そんな言葉が飛び出してしまうなんて。
     優人も参加した結婚式では、ウエディングドレス姿の二人はそれはもう幸せに溢れているように見えた。かつては新郎の恋人だった優人でさえ、新しい家族の誕生に覚えず胸が詰まったものだ。たとえそれが、自分とは無関係の事象だったにしろ……
    「だ、駄目ですよ、離婚なんてそんな、」
    「お前は」
     形の良い横顔がふと振り返る。その熱い眼差しに、優人は、先ほど覚えた印象が決して勘違いではなかったことを思い知った。
    「どう思うんだ。本当は」
    「ほ、本当は……って、」
    「とぼけるなよ」
     不意に肩を抱き寄せられる。耳元で、濡れた声がぽつりと囁いた。
    「期待してるんだろ、本当は……なぁ優人?」

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    コメント

    作者紹介

    • くろねこ8
    • 作品投稿数:126  累計獲得星数:165
    • ちょこちょこ小説書いています。
      好きなジャンルは歴史(ぶっちゃけ昭和、それもビフォ太平洋戦争←をい)。軍服とか特務機関なんて名詞を聞くとパブロフの犬的にハスハスしてしまう不届者です。あとBLが大好物。戦争×BLというクズすぎるマリアージュでシコシコ量産中。もちろん現代日本モノもあるよ!
      絵のほうはアレなので表紙を描いてくださる方絶賛募集中!(図々しくてサーセン!)
      文章関係のお仕事も募集中です!
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