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シリーズ:忘れ物はありませんか?
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忘れ物はありませんか?

作者:なつき

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    BLです。
    准教授✕大学生。
    甘やかし過ぎる大人から逃げようとする青年の話(えっ?)
    完結しました。


    登録ユーザー星:14 だれでも星:30 閲覧数:3520

    忘れ物はありませんか? 29244文字

     

    1.

    あいつと別れた。



    学会、研究会、講演会…なんだかんだ理由をつけては、あいつが家に帰らない日が続いていたある日―――偶然、街で見かけた。
    タキシード姿のあいつが、綺麗な女性と歩いているのを…。

    モデルのようなスラリとした美女が、真紅のドレスに身を包み、長い髪をなびかせながら、あいつの腕にそっと手を添えている。
    それをあいつは慣れたようにエスコートすると、そのままその場に停めてあった車の助手席に彼女を乗せ、その場を後にした。
    走り去る車の後ろ姿を―――俺はただ呆然と眺めるしか出来なかった。


    いつか、こんな日が来ると思っていた。

    あいつが、俺みたいな何のとりえもない…ましてや男になんて本気になるはずなんてない。
    そんなこと、わかっていたはずなのに―――


    「俺が必要なのは―――お前だけだから…」


    そう言いながら抱きしめてくるあいつの腕の熱さから、逃れられずにいた。





    これ以上、惨めになりたくなかった。

    あいつが―――他の誰かに微笑みかけるなんて、絶対見たくなかった。



    あいつは、俺の通っている大学で准教授をしている。
    初めての専門教科―――その教壇の上に立っていたのが、あいつだった。


    そんな、ただの先生と生徒だった俺とあいつの関係が変わったのは、二年に上がったばかりの春のこと―――俺の両親が、交通事故で突然、この世を去った事がきっかけだった。
    教務課でその話を聞かされた時、 何を言われたのか、すぐに理解できなかった。
    何をしたらいいのか……分からず、たた呆然と立ちすくんでいた俺に、手を差し伸べてくれたのが、偶々その場にいたあいつだった。

    「心配なので、私がついていきます」

    そう言って、田舎の家まで車に乗せてくれて―――ただ泣くしか出来なかった俺の代わりに、葬式から何から何まで、取り仕切ってくれて……今思えば、只の学生に准教授がそこまでする義理はないのだけれど、その時の俺にはそんなことを考える余裕もなくて、気づいたときには全てが終わっていた。

    借家だった家の片付けもすんで、ようやく東京に戻る日―――俺は再びあいつの車に乗せられていた。

    高速道路を走る車の中は、ラジオの音だけが小さく流れていて―――それを聴くでもなく、俺はずっと、窓の外を流れていく景色をただ眺めていた。


    少し落ち着いたところで、考えなきゃいけないのは今後のこと。


    いろいろ調べてみたけれど、両親が生命保険に入っていた形跡はなく、貯金も殆どなくて(幸いなことに借金もなかったけれど)、このまま後3年、そのまま俺が大学に通い続けることは無理だと思った。
    学費は奨学金とかでなんとかなったとしても−−−東京で家を借りるなんて、バイトをいくつも掛け持ちでもしなければ不可能に近い。
    殆ど全てをバイトに明け暮れるような大学生活を送るぐらいなら−−−田舎に戻って就職する方が現実的のような気がした。

    あーあ、せっかく入れた大学だったんだけどな…。


    そんなことを考えながら、ふとため息をついていると、何の前触れもなく、突然車がパーキングエリアに入っていった。

    「あ、休憩ですか?」

    車が駐車場に停まり、そう言ってシートベルトを外そうとした俺の手に―――あいつの大きな手がそっと触れてくる。

    思いがけない強い力で握りしめられて―――思わず目と目が合う。


    「行くところ、無いんだろう?

    だったら―――俺と一緒に暮らさないか?」



    そうやって、一緒に住み始めて1年3ヶ月―――案外長くもったほうかもしれない。


    ここで会えば、きっとまたズルズルと関係を続けてしまいそうな、そんな予感がしたから……あいつがいない隙に家をでることにした。
    そのまままっすぐ家に戻った俺は、身の回りのものだけ、自分のカバンに詰めこんでいった。
    リュックサックと小さな旅行かばん、それから紙袋一つ…広い部屋の中で、自分のものといえば、それぐらいしかない。
    その軽さが、自分とあいつの関係の軽さを示しているみたいで−−−なんだか笑えた。



    あいつが二人で住むために用意した家−−−そこは高層マンションの最上階にある部屋だった。
    夜になれば素晴らしい夜景が広がる大きな窓―――広々としたリビングに置かれている高級な家具もカーテンも…何一つ生活感がなくて、まるで雑誌に載っているモデルハウスの様。


    「これからは、ここがお前の家だから―――いや、違うな。
     お前と…俺の家、だな」


    そう言いながら、照れくさそうに笑ったあいつは―――もういない。


    「お前だけだ―――お前がいれば、他に何もいらない」


    そう、優しく抱きしめてくれた腕は―――もう、他のヒトのもので。



    この部屋で二人で暮らした1年3ヶ月―――それもきっと夢だったんだ。





    部屋をざっと見回し、俺がいた痕跡が残っていないこと確かめて…俺はテーブルの上に、鍵を置いた。
    オートロックだから、出るときに鍵がなくても大丈夫だけど―――二度とここには入れない。




    「―――さよなら」



    誰もいない部屋に向かって、小さくそう呟いた。



    涙が一筋−−−頬を流れ落ちていく。



    あの時……あいつが何を考えて、俺と一緒に暮らそうって言ったのか―――結局はよくわからない。

    まだ30になったばかりなのみ既に准教授になっている、将来有望な研究者……その分学生に要求するレベルも高くて、単位を取るのが難しいことで有名な、近寄りがたい先生―――でも、俺に対しては、最初から優しかった。

    忙しいのに、朝は必ず一緒に食事をして、色々話を聞いてくれた。

    先生だからと言って、俺の生活に口うるさいことをいうことはなかったし―――むしろ、バイトばかりしている俺に、学生なんだからもっと遊べって言ってくれた。

    ただ単に、親を亡くした俺に同情してくれただけ――それでも、よかった。

    いつも冷静なあいつが、俺の前でだけはバカみたいに笑ってくれたから―――抱き締められる腕が優しくて……でも凄く熱かったから―――あいつにとって、俺という存在が特別なのかもって、勘違いしていた。





    あいつにとって、俺なんて、同情すべき可哀想な学生でしかない。


    俺を抱いたことだって―――教授のお嬢さんとの間に婚約が決まっているあいつの、独身最後の気まぐれで。


    親もいない―――優秀な頭もない―――オンナですらない俺に―――あいつを引き止める方法なんて何もなかった。




    2.

    「しかし―――これからどうすんだよ、和明」

    家を出た俺は、取り敢えず友人の元へと身を寄せた。

    大学のサークルのコンパで知り合った翔太は、俺とは違う大学に通っていて−――何故だか妙に気があった。

    あいつと俺の関係を詳しく話した訳ではないけど、親が死んで大学の先生の家に居候していることだけは翔太には言ってあったので―――取り敢えず、世話になっている先生が結婚することになったので、急に家を出なければいけなくなったことだけ告げ、一晩泊めてほしいと頼んだ。

    「俺のところに泊めるのは一向に構わないけど、勝手に出てきたら心配してるんじゃねーの?
     結婚するったって、先生だってすぐに出て行けなんて言わないだろうし―――ちゃんと話し合ったほうがいいと思うけどな」

    「―――分かってる。
     でも、もういいんだ、どうせ俺、大学辞めるつもりだし」

    そう―――ずっと考えていた。

    大した頭も持っていないのに、ズルズル大学を続けていても意味が無いんじゃないかって―――貰っている奨学金だって所詮は借金だし、いずれ返さなければいけないものだ。

    だったら、少しでも早く就職して、自分で稼ぐ道を選ぶべきなんじゃないだろうか―――あいつの好意に甘えて、一緒に暮らしていたけど、これ以上あいつの負担になるようなことはしちゃいけない。


    「―――それ、本気で言ってるのか?」

    地を這うような声に、ハッと顔を上げれば―――見たことのないような厳しい顔をした翔太が、ジッと俺の顔を見つめていた。

    「そんな簡単に、自分の人生決めちゃっていいのかよ?
     確かに、大学行くだけが全てじゃねーけどさ……それでも、お前の場合、やりたいことあって大学行ってんだろ?」

    どちらかと言うとチャラけてて、何考えてるのかサッパリ読めない軽いやつ―――そう思っていた翔太にマジな顔で説教され、俺は驚きのあまり何も言い返せずにいた。

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    コメント

    • コミュ不足ですれ違って勢いで飛び出して気のいい友達に仲裁されて晴れて元サヤ〜めでたしx2!と分かりやすいお話ではありますが、第三者視点しかも2方向からが入ることによるお話の多面性が私には目新しくて楽しめました。詳しく全体像が明かされずに和明のちょいと切ない心理描写でジリジリとセンセーとの関係が見え隠れするあたりは無駄なく(?)キュンときましたヨ。最終的にセンセー目線で「なんだよ溺愛されてんじゃん!」と確認出来て一安心(笑)がセンセーの印象若干薄かったかな?ところで翔太と立花—かなり魅力的なサブですが—って将来性あるのかしら?(サクっとスピンオフ希望しま〜す。笑)
      • 2 fav
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    • 星をくださった皆様、本当にありがとうございます。
      凄く嬉しいです。
      また、読んでくださった全ての方にも、心より感謝します。
      本当にありがとうございました。
      • 0 fav
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    • 甘かったぁ…。これでもアンチBLなはずだったのに…さらりと読めました。欲を言えば、アメリカ行ったあとのお話も見てみたいですね(^^///)
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    • 最後まで読んでいただきまして、本当にありがとうございました。
      糖度2割増ぐらいを目指したのですが、甘かったですか?
      あの先は……皆さんの想像にお任せしますと言うことにしてください。まあ、糖度5割増ぐらいという感じで(笑)
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    • わー、おとなのじじょう~つづきがきになる~でもべんきょうが~
      ということで、続き楽しみにしてますね
      /(^^;)
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    • いつも読んでくださって、ありがとうごさいます。
      勉強、がんばってくださいね(って返信遅い?)
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    • 続き……! やばいやばい、続きください!!
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    • ありがとうございます~ドツボにはまって、書くのに時間かかっちゃいました。
      楽しんでいただけるといいのですが……
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    • うわあ甘い…!!
      もともとBLに抵抗あったんですが、
      さらっと読めてしまいました。
      精神的なロックが見事に擦り抜け…
      続きを待ち望んでおります
      • 0 fav
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    • コメントや☆、フォローまでありがとうございます。
      元々がBLではない恋愛ものを書いているので、BLと言っても超薄味になってるかもしれません。
      ともあれ、気に入っていただけたなら、とっても嬉しいです。
      • 0 fav

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    • まだ完結じゃないんでしょうか。
      星入れそうになったんですが。

      ここまでの流れ、とても好きです。

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    • コメありがとうございます。

      あと2章ぐらいで終わる予定です。
      ここで終わってもいいんですが、このままだと果たしてBL(ML?)と呼べるのか、微妙ですよね……ってことで、今、落としどころを考え中です。



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    • やっぱり ここで終わると「BLにならない」んでしょうかね。
      このあとは読者の妄想爆発でいいような気が私はするんですけど……

      あるいは幸せなシーンをちょこっと、か。

      差し出がましいことをすみません。
      私も今ラストで悩んでいるもので。
      • 0 fav

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    • いや本当に、ラストをどこに持ってくかって難しいですね。物語を完結させるのが、大の苦手なので…。
      確かに余計な事は書かずに、キレイに終わった方がいい気もするので、もうちょっと悩んでみます。
      貴重なご意見、本当にありがとうございます。
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    • 設定がいいですね。准教授と学生。

      続きが読みたくなりました!
      文体がさらりとして初めて読む人に優しいですね。
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    • コメントありがとうございました。
      読みやすいと言っていただけると、凄く嬉しいです。
      年上甘やかし系が好きなので、こんな設定にしてみました。
      これからも頑張りますので、またよろしくおねがいしますね。
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    • 紅梅さま、コメントと☆ありがとうございました。
      4章は、翔太君とは別人です。分かりにくかったですよね~すみません。
      5章に今度は翔太君目線が入る予定なので、トモくんのフルネームとか出てくると思います。
      今、PCが手元になくて、スマホから書いているので、更新は2,3日お休みですが、また頑張りますので、よろしくお願いします~。
      • 0 fav
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    • 読んでくださってありがとうございます。
      栞が使えないのは、毎回私がゴチャゴチャいじっているせいで、ページが変わっているからだと思います。申し訳ないです。改訂メモは必ず書くようにします!毎回全部投稿する改訂システムがどうも慣れなくて……って、以上、言い訳でした。
      これからもよろしくお願いいたします。
      • 0 fav
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    • お返事ありがとうございます。
      そういえば、違う版を読むから当然栞も入ってないんですよね。
      この改訂システムは私も慣れないです。「ページ」も表示の仕方で変わってきちゃうし。

      こちらこそよろしくお願いします。
      • 0 fav

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    • 主人公、もてもてだったんですね。
      ところで、栞機能が巧く使えてないんですが、改訂のときに 「4 を投稿」とか書いていただけないでしょうか。

      続き、愉しみにしています。
      • 0 fav
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    • 初めまして。「甘やかし過ぎる大人から逃げようとする青年の話」を投稿したら貴稿に気がつき、拝読しました。読みやすい文体だと思いました。でもまだまだ序盤ですね。頑張ってください。

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    • 初めまして。
      コメントありがとうございました。
      「甘やかし過ぎる……」は王道ですよね~王道大好きなので。
      BLは読むのは好きなんですが、書くのは結構難しい…というか試行錯誤中です。
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    • なつき
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