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下谷乙女は変わり者。女性アイドルを追い掛け年上男とセフレのように関係し空しい日々を送っていたが…突然ヲタ仲間に迫られて!
プロローグ
ピンク色のシーツから天井へ向けて上げた足を見てみれば、太腿の間に隙間が出来てるけどそれが内側だけへっこんでるし、ふくらはぎも同じでヒザだけがくっついてまるで数字の8のような隙間がある。
それにあんなに大きかった胸も今やペタンコで、皮膚もどことなくダランと余っていて。
こんなにカッコ悪い体だっただろうか、あたしは。
大学入学以来二年間、趣味へ没頭したために溜め込んだ脂肪を十五キロも急激に減らしたからしょうがないけれど、でもこのタルンタルンの皮だけは何とかしたい。
「何言ってる? ボソボソ」
「えー、カッコ悪いなぁって」
「誰が? 俺?」
「まさかぁ、自分の体。なんかこうハリが無くて、二十一歳なんだから若くてピチピチなはずなのに」
ダブルベッドの横、あたしより九歳年上の男が厚い胸板を見せながら起き上がって、背が高く逞しい体から生まれるゆったりとした足取りでシャワールームへ消えて行く。
さっきの問いかけに対して何にも言わないのは単に割り切った関係だと考えているからだ、向こうも。
これが元カレの悟だったら何と言うだろう、きっと、
『急にヤセたからだよ、でもキレイになって良かった。前の乙女は自分に甘くてちっとも努力しなかったし』
なんて言うだろうか。
こうなった原因は自分にあるのに、平気な顔をして笑って……。
太っていても平気、何にも変わらない、だっていつもお互いちゃんと見詰め合って幸せな気分になれるからと思い込んでいたのに突然切り出された別れ。
頭の中がまた一年前の暗黒モードに戻りそうだったので、ベッドから手を伸ばし女性アイドルの曲ばかり流すチャンネルに切り替えた。
『チョコレートみたいに
愛して
チョコレートみたいに
溶けるから』
自分にはない可愛らしい歌声や容姿でポップな曲ばかり歌うアイドルにハマって以来十年、入学した大学でも女なのにアイドル研究会へ所属して大勢の男子に混じりアグレッシブに活動している。
ライブチケットを取るために徹夜で抽選会場に並んだり、各地で催されるイベントに鉄道をひたすら乗り継いで向かったり、握手会・サイン会の情報入手の為に各大学のアイドル研と緊密な連絡網を整えたり。
もちろん、年に一度の学祭でもステージや教室を借りてアイドルを呼んだ上でヲタ芸を披露してと、それはそれは充実したサークルライフを送っている。
それも全てはアイドルという賞味期限の短い女の子達の可憐な姿を目に焼き付けて、ひと時の幸福を味わいながら同じ趣味を持つ仲間と騒ぐためだ。
「またそんなの聞いてるのか、乙女は」
いつの間にかシャワーを浴びて出てきた男が横から手を伸ばし、有線のチャンネルをジャズに切り替えてしまう。
「理解してもらえなくてもいいよ」
「本当に変わったヤツだよな、別れて五年も経つのにいきなり電話して来たりして」
「伊波氏も変わってるよ、高校1年生のあたしとプラトニックなお付き合いしてたクセに五年も経ってまた再会したらこんなコトしてんだから」
ベッドに裸の私を残したままクローゼットからスーツ一式を取り出し、おもむろに着替え始めた男の名前は伊波智之。
職業はPC用ソフトを幅広く製作する事で有名な株式会社イーエンターの広報部長、私との関係は2代前の元カレにして現セフレと言ったところ。
「その時計高そうだね、さすがはお坊ちゃま」
「一応、自分の給料で買ったんだぞ。もうお坊ちゃま扱いするな」
父親の会社で一番お気楽なポストにありついておいて、お坊ちゃま扱いするなと言うほうが無理だと時計を嵌めようとしていた手を掴み、シーツを体へ絡めたまま起き上がる。
「もう帰るの?」
「明日早いからな、それでも送って行ってやるから早くシャワー浴びて着替えなさい」
「はーい」
言われるままバスルームでシャワーを浴びて、安っぽい香りのする泡で欲求を満たし満たされた後の体や疚しい気分を洗い流し、肩の辺りまで伸びている髪を乾かしていたら、伊波が鏡越しに笑う。
「昔みたいに髪が長いほうが似合う、後、服も変えた方がいいぞ、デニムがダブダブでみっともない」
急激にヤセた影響でこれまで着ていた服が全てブカブカになっている、今日穿いていたデニムもベルトをキツくしなければすぐにパンツ丸出し状態になってしまう程。
たかが十五キロ、されど十五キロ。
「今度、土曜日の昼間にでも会って買ってやろうか?」
「エンコーみたいになるからイヤ、恋愛感情なんか無いのに相手に物を貰うのは」
「普通の女みたいにタカればいいのに、少しは」
そうは言うけどそこが気に入っているんでしょう? と着替えを済ませてから伊波の鼻の頭を指で突っつくとバッグを肩へ掛けてドアへ向かう。
いつもならここでサッと私を追い越してドアを開け、エスコートしてくれるのに今日は何故か違っていた。
グィッと体をドアへ押し付けて、キスをして来たのだ。
「んー!」
急にこんな事をするなんて……と、
「突然どうしたの?」
数分後、やっと離れた唇で問い掛けてみれば、
「したくなったからした」
という変な答えが返って来たので、ふーんと流してからドアを自分の手で開け、真っ赤な絨毯が敷き詰められた廊下を先に立って歩き、エレベーターのボタンを押す。
「冷たいな、昔はあんなに懐いてたのに」
「昔と今の状況は違うから、あの時は仲のいい兄妹ゴッコで伊波氏には婚約者が居た、今は単なる肉体関係で伊波氏はバツイチ」
「加えて乙女はカレシにフラれて今はずっとふて腐れて、男に絶望してまともに恋愛する気力を持ってない、だからこうして爛れた関係で満足した気になってるだけ」
その通り、よく分かりましたねと地下の駐車場で乗り込んだ瑠璃色の高級外車の助手席でケータイで撮影した写真を見せる。
映し出されたのは先日の合コンで撮影した、他大生の男とのツーショット。
悟と別れて以来、どうしても自分に自信が持てなくなった。
だからヤセた後、自分に対する他人の評価を確かめたくなりサークル外で友達がセッティングした他校との合コンにも積極的に参加し、今や、
『乙女を呼ぶとウチらに回らなくなる』
『あんな服着てるのに、何でモテんのよ』
と言われる程……。
でも同じサークルの仲間には言えない、連中と来たら少しでも積極的な女に対してすぐ『バカ女』認定を下すから。
アイドルは下半身に関する事を公表してはならない、それがたとえオナラであっても。
だから一度スキャンダルが起きれば、ファンは潮が引くように去って行く。
自分がサークルのアイドルだとは思っていないがとりあえず女である以上、そういう目では見られたくない。
「で、コイツとはどうしたの? 一度寝たとか?」
「キスだけ、そこまで尻は軽くないし」
「そうか、こんなのと寝るワケないか」
本命なんか今のあたしには必要ない、むしろ邪魔なだけ。
高校2年から四年間も一人の男に縛られていたのがバカバカしくなるほど、今が楽しくて仕方無い。
「あんまり調子に乗って遊んでると、後で大変な目に遭うぞ」
「そのあたりは上手くやってますんで、ご安心を」
車が自宅近くに到着し、そこで別れを告げる。
最後のキスなんかはしない、彼氏彼女じゃあるまいし、そんなふうに愛情確認するほど、思い入れのある間柄では無いから。
第1章
五人の新入生を歓迎するコンパも終わり、サークル棟の2階にある部屋でいつものようにアイドルが出ている雑誌を切り抜いたりDVDを鑑賞したりしていると、不意にドアがバターンと開き、ほんの少し刈り上げた茶髪の、チャラ男が出現。
「ミッチィー、参上!」
女のような細面へサングラスを掛けている。
「いちいち言わなくても分かってる」
└ぼくの彼女は学会2世とかだった。ぼくは宗教の自由は尊重する。しかし・・・・
└佐倉かすみ。声を失くした少女。お雪。人の魂が宿ったボーカロイド。二人が出会った時、ある秘密の計画が始まった。
└国際商科大学 軽音楽部”タイニーラブ”で俺は”コースケ”と呼ばれていた。本名を知らない者は数多い。この”タイニーラブで、常識では考えられない体験をした。楽しく、…
└9月になって、キミちゃんとクミちゃんの学校では水泳大会が開催されます。二人の活躍を見にフミちゃんも学校に潜入します。二人とも好成績を叩き出して、ついに直接対決、…
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