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シリーズ:エデンノカジツ
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エデンノカジツ

作者:虚葬

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    吸血鬼もので現代ファンタジーです。「自分の餌くらい、自分で守れ」とあることから吸血鬼の餌となり、自らの甘い血を餌として吸血鬼である男に食される日々。しかし、その日々は16歳を目前にて一転した。
    完結しています。


    登録ユーザー星:6 だれでも星:9 閲覧数:696

    エデンノカジツ 25483文字

     

    絶望に滴る血はどんな味がするのだろうか


    これほどもなく毒気を含んだ味だろうか?
    いや、もはや生きる意味などないのだから
    芳香豊かに、死へといざなう甘美な味ではないだろうか。



    その好奇心の対象が今まさに目の前に自らやってきた

    両親を吸血鬼に喰い殺されたというその幼子は恐怖でここまで走ってきたに違いない。
    まさに絶好の獲物だ。


    幼子の虚ろな目が、俺を捕える。
    幼子は俺の口元を見ていた。
    口元には先刻「食事」を済ませたばかりの血が付いていた。
    俺は見せつけるように舌なめずりしてみせた。


    命乞いをしろ。泣き叫べ。
    絶望の中でその甘美な血を味わってやる。


    「ぼくをたべる?」
    「そうだな、返答次第では助けてやってもいい。お前、生きたいか。」


    生きたいと言えば喰おう。
    無慈悲だと罵りながらその血をもっと絶望に染めればいい。


    「ぼくが、ほしい?」
    「あ?」

    返答は斜め向こうをさした。


    「ぼくを、たべたい?」

    ― 喰べたいさ ―

    喉まで出かかった言葉をぐっと飲み込む。

    言えば俺の負けだと感じた。

    これは賭けだ

    絶望に実る果実を、極上に味わうための。




    「いいよ、ぼくをたべて。」


    両手を俺に広げ、まるで天に仰ぐような格好で、そいつは俺の前に命を広げた

    それは絶望というよりむしろ希望で

    俺に喰われることに、一ミリの絶望もなかった。


    負けた

    俺はこの幼子に負けたのだ


    絶望に滴る甘美な血ならいいものを、希望に溢れた毒々しいまでの血など
    誰がいるか


    「チッ」

    俺はその小さな細い腕を掴み、引き抜くように上へと持ち上げた。

    「っ」
    「立て」

    手を離すと少しよろけながら、自分の足で立った。


    「いいだろう、お前の勝ちだ。お前を生かしてやる。望みはなんだ。」
    「のぞみ?」
    「何をしてほしい。」
    「なら、ぼくをたべて?」

    それでは生かすと約束した意味がない。
    ならば、こうしよう

    「いいだろう、お前を喰べてやる。今日からお前は俺の「餌」だ。」
    「えさ?」
    「そうだ。」

    手袋を外し、ナイフで自らの掌を一文字に切った。
    掌から血がにじみでる。
    俺は幼子の前に跪くようにして屈んだ。

    「名を。」
    「な?」
    「お前の名は」
    「シン。小田 シン。」
    「ではシン、手を出せ。」

    シンと呼ばれた幼子は言われたとおりに手を差し出した。
    その掌を同じようにナイフで一文字に切る。

    「っ。」

    シンは痛がったものの、幼いながらに泣き叫ぶようなことはしなかった。
    むしろ、これから行われる行為に何の意味があるのかを必死で考えているようだった。

    シンの手から血が滴り落ちる。その血を俺の血の滲む掌へと合わせた。

    「契約だ。これから俺はお前のみを「餌」とし、喰っていく。簡単には死なせはしない。残念だったな。」

    シンは絶望した虚ろな目から一転、その大きな眼を見開き俺をみた。
    怨んでいるのか、憎んでいるのか、よく判別がつかなかったが、いい思いをしてないだろうことは予想がついた。

    そして『食事』にあやかるため、俺は幼子の柔らかな首筋へと牙をあてがった。

    「勝利の戦利品だ。俺の真名を教えよう。俺の名は――」
    「っぁ!」

    くっと顎に力を入れると、やわらかい肉にはすぐに牙が刺さった。

    じんわりと染み出てきた血の味は


    まだ青い林檎のような味がした。




    ***

    [エデンノカジツ]



    都内にひっそりと佇むキリスト教会がある。
    周りは閑静な住宅街で、日曜日になれば近所の住人が礼拝に訪れる普通の教会だ。

    小田 シンは、その教会の牧師に育てられた。
    両親は6歳のときに他界。
    生前シンの父親と親交の深かったこの教会の牧師であるコンスタン牧師に引き取られ、晴れて今年、満15歳の高校一年生となった。
    クセのない黒い髪。少し目じりの上がった大きい瞳。
    まだ少し幼さの抜けないふっくらとした頬。
    近所ではいわゆる美少年で通っているが、本人は微塵も自覚していない。


    「おはよう牧師さま。」
    「グッモーニン、シンくん。さ、朝ごはんにしましょうか。」
    「うん。」

    テーブルにはパンとベーコンエッグ。トマトサラダとオレンジジュースの定番メニュー。
    この教会には、シンとコンスタン牧師の二人しかいない。二人とも席に着くと、手を合わせ、いただきますと言いあい、朝食が始まった。

    コンスタン牧師は一言で言ってしまうと、やさしそうな英国風老紳士である。
    最近白髪の交じってきた焦げ茶の髪と、目じりに深い皺。
    欧米人特有の白い肌に、青い目。顔からして優しさが滲み出たような好々爺である。
    コンスタン牧師は、今年齢60をすぎようという人だが、妻はいない。
    この話題を出すと、決まって「シンくんが成人してから考えましょう。」
    といつものおっとり笑顔である。

    パンをちぎって口に運びながら、コンスタン牧師はそうそうとシンに話題をふった

    「学校はどうですか。もう入学してから一週間は経ちますが、お友達は沢山できましたか?」
    「まあ、それなりに。」
    「シンくんはシャイボーイですから、もっとスマイルですよ。ほらスマイル。」
    「いいんだよ。一人の方が気が楽だし。」
    「なんとも、もったいない。いいですかシンくん。神はですね『ふたりはひとりに勝る』とおっしゃいました。どちらが倒れても、片方が起こし、寒い時は一緒に居れば温かいものです。一人よりも二人、これほど心強いものはありません。」
    「ねぇ牧師さま、それって結婚式のうたい文句じゃなかったっけ?というより牧師さまからそれを体現してほしいなぁ。」
    「ホッホッホ、それは、」
    「僕が成人してから、なんでしょ。ごちそうさま牧師様。遅刻するのでお説教はまた夜に。」
    「のんのんシンくん、人の話は最後まで・・・」
    「いってきます。」
    「シ〜ンク〜ン!」


    この通り小田 シンは、反抗期もほどほどに立派に育ちました。


    シンの通う高校は教会からわりと近く、徒歩30分のところにある。
    『聖ジョアン学園』。神学校の共学で、牧師の勧めもあって入学した。
    校舎は広く、入学して一週間ではまだ全てを把握しきれていない。

    「はよー!シ〜ンっ!」
    「っわ!」

    あいさつよろしく背後からラリアットをかましてきたのは、入学早々その人懐こっさから仲良くなった、木田 巽(きだ たつみ)である。

    「ったいな。」
    「なんでシンちゃんはそんなに毎日そう眉間にしわがよるかなー。」
    「お前は毎日馬鹿に楽しそうだけどな。」

    黒髪で小柄で、おとなしそうなシンの外見とは正反対に、木田は金髪、ピアスに着崩した服装の、いわゆるチャラ男という部類で、本人もそういわれることに満更でもないらしい。

    「まーなー。オレには”お楽しみ”ってやつがあんだよ。」
    「なんだよそれ。」
    「お前にはひーみーつ。それにしても、今日もすげー良い匂い」

    くんくんと木田は鼻をかぐ仕草をする。

    「ん?匂い?」

    つられてシンも匂いを嗅ぐが、とくに変わった匂いはしない。

    「お前鼻つまってんじゃね?」
    「木田の嗅覚が犬並みなだけだろ。」
    「わんわん!ってな!」

    ぎゃはは!と木田が下品な笑いを残して教室へと入った。
    ほどなくして始業を告げるチャイムが鳴る。
    授業は神学校といえど、クリスチャンのお勉強ばかりというわけでなく、いたって一般の授業ばかりだ。シンはそのほとんどを寝て過ごす。木田も寝て過ごしているらしいが、普段の素行のためかよく教師に叩き起こされ、クラスの笑いをよく誘う。シンは対照的に教師から見えない角度で綺麗に寝る。木田曰く、「そーゆータイプが一番悪い子ちゃん」といい不満そうに指摘した。そんなシンでも、寝れない授業はある。体育と化学の授業だ。体育は言わずもがな、身体を動かすためだが、化学はそういうわけではない。

    「次の授業化学じゃん。移動しようぜぇ。」

    今日の4間は化学。
    それも移動教室のため向かいの化学教室まで行かなければならない。
    木田がシンに声をかけ、応えるようにシンは席を立った。

    「きょうも実験かねぇ。」

    特にこれとって話題もないのか、化学教室へ向かいながら木田が今日の化学の内容について話題をふった。

    「さぁな。座学じゃないのか。」

    べつに、授業内容なんてどうでもいいというように、あっさりと答えたシンであったが、座学であってもシンはこの化学の授業だけは眠れない。
    それもこれも、化学の教師が原因だ。

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    • 虚葬
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