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BLです。
孤独な少年と謎めいた青年のラブロマンスです。
ゆっくり書き進めて行きたいと思っています。
よろしくお願いします。
やっぱり回復しなかったな。
窓ガラスに、どこか中性的な雰囲気のある青年と言うには若すぎる顔がぼんやりと映っていた。
真はガラスに映る自身の黒い瞳から目をそらすと、昨日から引き続き隙間なく濃い色の雲が埋め尽くした空を見上げてぼんやりと思う。
朝の情報番組は天気予報のコーナーになり、にこやかな新人アナウンサーが早ければ昼には雨が降るだろうと告げていた。
テレビから聞こえる声に、自分の心の中に残ったわずかな明かりさえも吸い取られて行くような気がして、真は肩を落とした。
「この先、どうなるんだろうなぁ……」
「……なにが?」
独り言のつもりでつぶやいた声に返事があって、真は慌てて振り返った。
「先輩」
振り向くと家主である青年がスーツを着込んだ青年が立っていて真の心はますます暗くなった。
それは別に、目の前の青年がすらりとした長身と長い手足を持っていて10人の女子がいたなら9人までが振り向くような美貌を持っていたからではなくて……。
ーースーツなんてほとんど着たことがないから値段なんてわからない。しかし、と真はちらりと既に見慣れてしまった室内に視線を走らせてこっそりとため息をついた。
広いリビング。革張りのソファは外国製らしい。なんだかよくわからないキラキラした動物の形をしたガラスの置物がサイドボードにいくつも飾られている。
きっとスーツも高いのを着てるんだろうな。
それに引き換え自分は。
「おはよう、しん」
真の暗い表情の意味に気付いたのか、気付いてないのか、スーツ姿の青年は光を跳ね返すように白い歯をちらりと見せて挨拶の言葉を口にした。
「今日の予定は?」
「え、いつもどうりハローワークに……」
「雨だよ」
「はい?」
「昼から雨だって。今日くらいは休めば?」
「そう言うわけには……」
「俺がいいって言ってるんだからさ。少しは休んだ方がいいよ。昔っから真は働きどうしだもんな」
柔らかい笑顔を浮かべて青年は真に近寄ると、小さな頭に手を置いて子供にするように頭を撫でた。
「でも、水野先輩……」
「いいんだよ」
大まかに真の生い立ちを知っている水野は、甘えることも覚えた方がいいかもな。とからかうように言って、真を慌てさせる。
「そんな!甘えるなんて!」
「まだ19だろう。子供は大人に甘えてもいいと思うんだけどな。……そうだ、俺の会社で働くか?」
真は水野の手から離れるように1歩下がる。
「まさかでしょう。俺高卒ですよ?コンピューターのことなんて何もわからないのに」
「じゃあ俺の家政婦でもやる?」
「家政婦?!」
「そう。住み込みで。給料はずむぞー」
「無理です、無理!そんな甘えられない……」
「言うと思った」
はは。と笑って水野は手首に視線を落とす。
ブランドに疎い真でも知っている高級ブランドの腕時計がチカリと蛍光灯の光を跳ね返した。
「そろそろ出ないとな……。焦ることはないよ。真が気になるんなら仕事が決まってから今までの宿泊料を返してくれればいいんだし。……じゃあ、行ってくるよ。今日は夕方くらいには帰れるから」
「あっ、じゃあ夕飯作っておきます!」
「そんなに気を使うことないんだけどね。でも真の料理は美味いから期待している」
そう言って、高校時代に同じレストランでバイトしていた若くしてIT会社を起業した青年は家を出て行った。
1人残された真はテレビ画面の左上に表示された時報を確認して、ハローワークに行く前に掃除をしようとクローゼットから掃除機を取り出した。
* * * * *
先輩みたいにうまくいってる人もいるのにな。
真はハローワークで端末が空くのを待ちながら手の中の携帯電話を見つめていた。
数日前に面接を受けた会社から丁寧なお断りの電話がきたばかりだった。
一応工業科だったけど。と真はため息をつく。
夜間高校卒だし。とまたため息。
真には親がいなかった。
福祉施設で育った真はバイトで学費を稼ぎながら福祉施設から高校に通った。そして卒業とともに手に入れた寮付きの職場。
ーーそれが半年もしないうちに倒産してしまうなんて。
会社がなくなれば当然寮もなくなる。食どころか住む場所もないなんてこの先どうしよう……。
何も考えることができずにふらふらと街を彷徨っているときに偶然再会したのがバイト先のレストランでの先輩である水野だった。
当時大学生だった水野は卒業と共に起業し、今では社長と呼ばれる椅子に座っている。
人の良い水野は真の話を聞いて、住む場所がなければウチにくればいいよと言って真を自宅の高級マンションへ招いた。
水野はいつまででもいていいと言う。わずかな貯金の中から生活費を払うと言えばそれはいらないと。いらない代わりに部屋の掃除と食事の世話をして欲しいと。急いで次の仕事を探す必要はないし、職が見つからなければ自分の会社で働けばいいとも言う。なんなら住み込みの家政婦をやってくれればいいと冗談まじりに言われたこともある。
だがそんなに甘えることはできない。
バイトをしていた当時、不思議に水野は真に親切だったが、生まれも育ちも現在の状況も違う住む世界が違う相手なのだから。
いつまでも世話になっていても……自分が惨めになるだけなのではないだろうかと思う。
ーー次こそ採用してもらえますように。
真は祈りながら順番が回ってきた端末の前に座った。
* * * * *
「今日はカレーにしよう」
水野のマンション近くのスーパーに入って、カゴをカートに乗せる。
「人参はまだ残ってたから……」
ぶつぶつつぶやきながら真はゆっくりと夕飯の買い物をする主婦に混じってカートを押した。
「ジャガイモと……」
特売。の赤い文字が目に入る。ちょうどよくジャガイモが安いらしい。袋詰めされたジャガイモを手に取り、貼られた値段シールを確認してやれやれと首を振る。
水野のマンションは高級だったが、建っている場所も高級住宅地だった。そんな住宅地の奥様方が利用するスーパーは当然のように高級スーパーだった。
「ジャガイモ3つでこの値段……」
自分の財布から出すとしたら躊躇うどころか違う店を探す価格だ。しかも財布の中身は水野の金で……。
他の店を知っていればそこに行くのだが、この辺の地理には疎いし、自分が知っている安売りスーパーに行くためには電車に乗らなければならず、交通費のことを考えたらここで買ってもたいした違いがないように思う。それに今から移動していては帰りが遅くなってしまうし……。
買い物するたびに感じる逡巡をため息で追い出して、真はかごにジャガイモを入れ、タマネギと肉とルーを探し、サラダの材料を追加して家路についた。
* * * * *
天気予報士は今日はクレームを入れられずに済みそうだった。
頭を振って髪についた水滴を払いながら玄関を開けると廊下の先に明かりが見えた。
電気を消さずに出かけてしまったんだろうか。でも天気が悪いせいで薄暗くはあったが明かりを付けるほどではなかったはず。
「……先輩?帰ってるんですか?」
声をかけながらリビングへ足を進める。
夕方には帰れるから。そう言って水野は出かけたが、それにしてもまだ4時を回ったところだ。少し早すぎるのではなかろうかと首を傾げながら声をかけると、おかえり。と聞き慣れた声がした。
「ハローワーク、どうだった?」
「え、あの……」
言葉を濁す真に、良くない結果を素早く読みとったらしい水野はソファから立ち上がって寒くない?と聞きながら真の前に移動した。
「天気予報当たったからね」
そう言う水野の手にはタオルがあって、真が何かを答えるよりも早く真の濡れた頭を拭いた。
「結構濡れてるみたいだね。お湯ためといたから、風呂に入ってくれば」
「ありがとうございます。でもそんなに濡れてないから大丈夫ですよ。取り敢えず飯作りますね」
真は手に下げたスーパーのビニール袋を水野によく見えるように持ち上げて、それに、と言葉をつないだ。
「家主よりも先に風呂に入れないですよ」
冗談めかして言って、キッチンへ足を向ける。
水野は何故か真についてキッチンへ入ってきて、真に首を傾げさせる。
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