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シリーズ:美術留学生とモデル
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美術留学生とモデル

作者:GUN

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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    パリを舞台にした美術留学生とそのモデルのお話です。BLです。いいタイトルが浮かびませんでした…(恥)タイトル考えるの苦手です;


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    美術留学生とモデル 6055文字

     

    起床は朝6時。
    パリの郊外近くの安アパートの螺旋階段を、他の住人が起きないように、静かに、けれど急いで駆け降りる。
    電車に乗ってひと息つくと、カバンの中から昨日買ったカチカチのバケットとすももをかじった。
    高里優はパリ中心部の国立デッサン学校に通う学生である。
    郊外に近い今のアパートからは朝6時半に部屋を出なければ9時からのヌードデッサンに間に合わないのだ。
    乗り換えは2回。目的の駅につくと、定期を取りだし足早に改札をくぐり抜けた。
    今日から新しいモデルがくる。良い場所取りをとるためにも遅刻するわけにはいかない。
    その時だ、「Excusez moi?mademoiselle」一人の男性と肩がぶつかり、ふらついた高里の腰を、その男性が支えた。
    綺麗な金髪と青い瞳が印象的な美青年。
    しばし、ぼーっと眺めてしまったが、「なにも」とそっけなく返して男性の腕から離れた。
    男性が申し訳なさそうに片手を軽く上げて足早に去っていく。
    それを眺めて、しばらくした後、「マドモアゼル」と呼ばれたことに気付いて、高里は赤面した。
    確かに自分は線の細い方だがーーーとにかくショックだ。男として。

    アトリエについたのは9時ちょうどだった。まさに第一回目のポージングが始まる時間。
    高里はあわててカルトンとイーゼルを準備したがやはり良い場所は先に来た生徒たちに取られている。
    あの男性にぶつからなければもっと早くついたのに…いや、ボーっと歩いていた自分も悪いのだ。
    そう思い、モデルを見上げたとき、思わず「あ!」と声をあげてしまった。
    モデルは今朝ぶつかった金髪と青い瞳が印象的な美青年、その人だったのである。
    「シーーー!」と、周りの生徒たちから注意を受ける。申し訳なさそうに会釈をしてモデルを見上げると、
    モデルの男性はクフフと笑いを耐えているような表情を見せた。
    ムッとして適当な場所にイーゼルを設置する。今日はついてない…。

    1回目のポージングから15分して、5分休憩。
    次こそは良い場所をーーー…そう思って移動の準備を始めようとした時、ふと気付く。
    モデルが自分にとってちょうど良い場所にポーズをとっている。
    その次のポーズでも。
    不思議に思っていると、モデルの男性と目が合った。軽くウインクされる。
    これは挑発だ。女の子だと思われているのも気にくわない。高里はあえて冷たい視線でモデルを見据えた。

    デッサンの授業が終わり、後片付けをして学校の門を出ると、モデルの青年が立っていた。
    自分を待ち伏せていたのか…?まさか…
    そう思い、横を通り過ぎようとしたところで青年があわてて声をかけてきた。
    「ねえねえ、俺クリストフ・デュロワ。自己紹介の時いなかったろう?ねえ、君の名前は?」
    「……ユウ・タカサト。まだあまりフランス語得意じゃないんだ。もう少しゆっくり話してくれますか?それから…」
    「俺、男なんで!!」
    高里のムキになった表情に、クリストフはまた笑った。
    また笑われた!と、高里は思わず赤面する。駅への道を急ごうとすると、クリストフが手を掴んできた。
    「失礼。ムッシュ・タカサト。俺は日本の文化が大好きなんだ。よかったら俺のエシャンジュになってくれないかな?」
    「エシャンジュ…?」
    「交換で語学を教え合うこと。俺が君にフランス語を教えるから、君は俺に日本の文化を教えてよ」
    ね?お願い。そう言われると高里は青い瞳に吸い込まれるようにコクンとうなずいていた。

    アパートに帰って来てから少し後悔する。
    知り合ったばかりのーーーしかもデッサン学校のモデルと関係を作ってしまった。
    携帯の決して多くないアドレス欄には今日知り合ったばかりのクリストフの名前と番号。
    なんだか疲れたーーーそう思って瞼を閉じると、高里はそのまま眠ってしまった。

    大きな大きな美術館。両親の仕事の都合で幼い頃にフランスに住んでいた時、よくこの美術館で留守番をさせられた。
    どこへ行ったらいいのか分からず案内所をウロウロしていると、日本人の美術館員が出てきて、自分を連れて一日中、
    館内を案内してくれたのだ。それがきっかけで自分は美術が好きになり、日本の美大を卒業して、ふたたびフランスの
    国立美術大学を目指して渡仏してきてしまった。憧れだったあの美術館員は今ごろどうしているのだろう…。
    渡仏してから何度か懐かしの美術館へ通ってみたが、結局あの美術館員には会えずにいる。

    目が覚めると窓の外はすっかり暗くなっていた。国立美術大学の入学案内書を読みかえす。
    そこにまず書かれている「入学の第一条件」、「フランス語が流暢であること」
    すでに半年後の初夏に迫っている国立美術大学の編入試験。この試験に落ちれば、自分は日本に帰って就職活動をすると
    両親と約束してきたーーー。
    これは運命なのかもしれない。
    携帯電話を取り出し、クリストフのアドレスを見る。
    メールの着信があった。
    「ASHITA CAFE NI IKIMASYOU」
    「Il est bon(いいですよ)」とメールを返すと、高里は再びベッドに横になり、瞼を閉じた。あの美しい金髪と青い瞳が
    チラチラと視界の奥で揺れている気がした。

    次の朝、6時に起きると身体中が痛い。昨日やたら疲れていたのは風邪のせいだったのかもしれない。
    「だけど、デッサンに行かなくちゃ…」
    そう独り言を言うと、のそのそと支度を始めた。

    今日のモデル様は不機嫌である。
    教室の生徒たちはほとほと困り果てていた。ご機嫌で教室に入ってきたかと思うと、あたりを見回し、何かが足りないことに
    気付いたようにがっくりと肩を落とすと、ポーズ中も上の空で、あくびまでしだす始末。
    それが、高里が教室にきたとたんに瞳の色が変わり、生き生きとポーズを決め始めた。
    教室の誰もが嫌でも気付く。モデルのクリストフ・デュロワは、ユウ・タカサトにご執心だ。
    高里は高里で具合が悪いらしく、デッサン中もボーっとしている。
    高里が来てから3回目のポーズ中、クリストフは我慢できずに高里の元へと歩いてきた。モデルがポーズ中に動き回るなど
    あってはいけないことだ。
    クリストフの冷たい掌が高里の両頬を包む。そして自分の額を高里の額に寄せてきた。
    「…熱がある…」
    「どうして君はこんな状態で学校なんかに来たんだい!?」
    そうクリストフは怒ったように声をあげると、高里の荷物をまとめ、自分の衣類を着ると高里を片腕で支えてさっさと
    教室を後にしてしまった。
    教室にはぽかんと口を開けた生徒たちが残された。

    高里が目を覚ますとそこは知らない天井の部屋だった。
    本棚にはここは日本かと錯覚するほどの日本の漫画とフィギュア。壁一面のアニメのポスター。
    机の上にかろうじてフランス語の教科書が並んでいる。
    慌てて起き上がると激しい頭痛がした。
    「ゆっくりしていっていいよ。パパもママも遅いんだ」
    そう言って部屋に入ってきたのはクリストフである。
    濃いめのミルクティーの入ったカップを枕もとのチェストに置くと、クリストフは高里の額に優しく口づけた。
    男にキスされたというのに不思議と嫌悪感が湧かない。そんな気も起らないほど、相当疲れているのかもしれない。
    クリストフに頭を何度も撫でられる。ひどく気持ちいい。
    「君はどうして遠路はるばるこんなところまでやってきたの?」
    いろんなことを夢うつつに話した気がする。
    ほとんど日本語だったかもしれない。けれどクリストフは、うん、うんと静かに相槌をうってくれた。
    眠りに着く直前、自分の唇に温かいものがかぶさってくる感覚がした。それさえも心地いいと思いながら、高里は眠った。

    結局、クリストフの家に一泊してしまい、(翌朝見たクリストフのお母さんはとても美人だった)
    朝、クリストフと一緒にデッサン学校に行くことになった。
    クリストフの家はパリ中心部の高級住宅街に有り、なぜ学生でありながらヌードのモデルなどをしているのか不思議に
    思った。
    デッサン学校についてみると、学生たちはクリストフと高里の噂で持ちきりになっており、ドアを開けた途端、思わず
    教室中がシ…ンとなった。
    クラスのムードメーカーであるアルフレッドが興味津々で高里に訪ねてくる。
    「ねえねえ、君たちは一体いつの間にそんな関係になったんだい?」
    「?」言っている意味が分からずにキョトンとしてしまう。クリストフは自分にとってかけがえのないエシャンジュ仲間だ。

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