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シリーズ:寿司屋とジュリエット
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寿司屋とジュリエット

作者:あんころもち

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    絶滅寸前の頑固オヤジが板前をやっている寿司屋『むらた』の息子。村田喜一、十七歳。そのはす向かいにあるオシャレなパン屋の娘。川澄綾、同じく十七歳。その恋は、まるで現代日本の”ロミオとジュリエット”のようで――。そんな二人を取り巻く動乱騒ぎ。そこにやってきたるは巨大な大手寿司チェーン。寿司屋『むらた』の運命は?! そして二人の恋の行方は?!(たぶん)業界初の寿司屋ラブコメディをどうぞ御回覧くださいませ。


    登録ユーザー星:5 だれでも星:7 閲覧数:497

    寿司屋とジュリエット 39422文字

     

    一、寿司屋とジュリエット

     ロミオとジュリエットって知ってる?

     え、いくらなんでも知ってるって?いや、別にバカにしたわけじゃないよ。確認もこめて聞いてみただけだって。そりゃタイトルくらいは聞いたことあるでしょ。
     ……だけど、ロミオとジュリエットについてカンペキに説明できる人って意外に少ないんじゃないかな。「作者がシェークスピア」だとか「14世紀のイタリアが舞台」だとか「モンタギュー家とキャピュレット家が争う」だとか。実を言うと、僕もあらすじを見て受け売りしてるだけなんだけど。
     そんな細かいことはともかく、ロミオとジュリエットって「敵対するグループの男女の禁じられた恋」の物語なんだよね。
     今の世の中じゃ想像つかないけど、生まれながらにして愛し合うことを禁じられた二人……それってどう思う?
     ……え、昔のことだから仕方ないって?
     たしかに敵対する一族とか言われても、今の僕らにはピンと来ないし、彼らには彼らで事情があるのかもしれない。
     でも僕は断固として二人の恋を支持したい。なんか他人事じゃない気がするんだよね……。

     そういえば、気になることがひとつ。
     ロミオとジュリエットの結末ってどうなるんだっけ。あらすじを見る限りではそこまで書いてなくて。ちゃんと原典を読めってことっぽいけど、堅苦しい文章を読むのは好きじゃないんだよね、いつか読もう……。
     とにかく愛する二人は結ばれたんだろうか。周りの人たちに認めてもらえたんだろうか。愛しあう二人が結ばれないなんてことあってほしくないけどね。

     ……おっと、自己紹介がまだだった。
     僕の名前は村田喜一。十七歳の高校二年生だ。周りからはムラキなんて呼ばれてる。いちおう、この物語の語り部ってことになるのかな。
     物語って言っても大したものじゃない。宇宙人も超能力者も未来人も出てないし。
     舞台は21世紀の日本だし、もちろんシェークスピアもモンタギュー家も関係ない。出てくるのは寿司屋とかパン屋とか。どこにでもありそうといえば、ありそうな話だ。

     じゃあ、そんなありふれた話―――かっこつけて言うなら、僕と彼女の“ロミオとジュリエット”ってことになるのかな―――を始めるとしよう―――


    二、寿司屋とノスタルジー

     
     放課後の教室―――僕と彼女は向き合っていた。
     校舎には他に誰の姿もなく、僕たち二人の長い影だけが校舎に寄り添っていた。どこか遠くでカラスの鳴く声が聞こえるけれど、それは現実感のない残響にすぎない。まるで僕たち二人だけが世界に取り残されたかのようだった。
     目に映る風景の何もかもが茜色に染められ、僕は不思議とノスタルジーを感じていた。この瞬間が永遠に続くのではないか―――そんな錯覚すら覚える。
     彼女の目を見つめる。心なしか彼女も緊張しているようだった。
     しんとした静寂だけが二人の間を湛えている。
     沈黙を破らずにいれば、このままの関係を続けられるのかもしれない。誰も傷つかず、傷つけないままに微睡んでいられるのかもしれない、そんな思いがふと胸をよぎる。
     けれど、それは終わらせなければいけない。蜜のようなノスタルジーに浸っていてはいけない。
     そして、たった一言、僕は口を開いた―――
    「好きです、付き合ってください」
     彼女が少しだけ目を見開いた。
     ……それは何の変哲もないストレートな愛のことば。だけど、いちばん純粋な愛のことば。
     気の利いた文句のひとつでも言えればよかったのかもしれないけれど、不器用な僕にはこれが限界だった。どうか彼女の胸の奥底に届きますように。
    「…………」
    「…………」
     ……あれ?やけに沈黙が長くないか……?
     ふつうこういうのって『はい』って答えてくれるもんなんじゃ……。
     祈るように目を閉じていた僕は思わず彼女を見遣った。
     すると彼女は恥ずかしそうに二度三度瞬きをし、目を伏せた。……というか、僕から目を逸らした。
     ……え?
     あの、まさか……。
    「あの、もしかしてよく聞こえなかった?アハハ、緊張するとそういうことよくあるよね〜」
     取り繕うように軽口を叩く僕。
    「……」
     しかし、彼女は黙って首を振った。あたかも、どう答えればいいか困り果てているかのように。
     ―――そして、暫くの沈黙のあと、
    「……村田くんとはお付き合いできません」
     彼女の拒絶のことばが僕の胸を突き刺した。
     けれど、ショックよりも先に脳裏を走ったのは、頭一杯の???だった。
     精一杯の勇気を振り絞って、僕は答える。
    「ど、どうして……?」
    「……」
    「僕がイケメンじゃないから?……たしかに今風のイケメンじゃないと思うけど、近所のオバちゃんには『石原裕○郎似の男前やねえ』って言われることだって……」
    「そうじゃないの」
    「も、もしかして僕が卓球部だから?そりゃ野球やサッカーと比べたら派手なスポーツじゃないかもしれないけど、卓球って『チェスをしながら百メートルをするようなものだ』って言われるくらい繊細な……」
    「ぜんぜん違う!」
     彼女の凛とした声が響いた。初めて見る彼女の怒気に僕はたじろぐ。
    「……じゃ、じゃあどうして?」
    「それは……」
     ここにきて、彼女は一瞬だけ戸惑いを見せた。まるで、告げてしまったが最後、二人の関係が永久に失われてしまうかのようなそぶりだ。
     けれど、ここまできたら後には引けない。『アハハ冗談冗談』で済まされる段階はとっくに過ぎてしまったのだ。
    「そ、それは……」
     そして彼女は意を決し―――僕には一瞬、彼女が涙ぐんでいるように見えた―――告げた。
    「だって、村田くんのうち、お寿司屋さんでしょう?」
    「………………え?」
     彼女が何を言ってるか分からない。たしかに僕は寿司屋『むらた』の息子だ。
     だけど、それが一体なんの関係が……。
     混乱する僕を見て、彼女は止めを刺すように続けた―――それはいろんな意味で決定的な一言だった。

    「だって、私の家、パン屋さんだから……。お寿司屋さんとはお付き合いできないの……」

     私の家、パン屋さんだから……。その一言が僕の脳裏にリフレインする。
     そして僕は思わず叫んでいた――――――
    「パン屋がなんぼのもんじゃあああああああああい!!!!!」

    ……
    …………
    ……………………

     そこで目が覚めた。
     というか、絶叫する自分の声で目が覚めた。
     ぼんやりとした視界が少しずつクリアになっていく。額は汗でびっしょりになっていた。
     どうやら夢、だったらしい……。
     さっきまでの悪夢がリアルでないと知って、全身から力が抜けるように安堵する。
     ……で、ここは……?
     辺りを見渡した僕の目に入ってきたのは、唖然とした先生、戸惑いをみせているクラスメイト、ニヤニヤ笑いを浮かべる悪友、
     ―――そして困った顔をしている彼女の顔だった。
     水を打ったように静まり返った教室。
     皆が僕に注視していた。
    「……アレレ?」
     ……もしかして、これってマズい状況?
    「……何がアレレなのかな?ムラタクン?」
     この場の空気をごまかそうとした僕に立ちはだかったのは花山先生(38歳、男性、独身)。
     カタギの人には見えない人相、服を着ていても盛り上がりが分かる筋肉、そして、厳しさの中にふと見せる厳しさに定評あるナイスガイだ。入学当初、僕らは体育の先生だと思い込んでいたけど、家庭科の先生だという事実を知ったときは学年全員が驚愕した。ちなみに卓球部の顧問でもある。
    「いやー、ちょっと家庭科のプリント忘れちゃって驚いちゃったんですよー」
    「ほうほう、そうか」
    「僕もうっかりさんですよねえ、ハハハハ」
    「ハハハハハハ」

     校庭百週の刑が下されました。



    「………………死ぬ……」
     花山先生の極刑から戻ってきたときには昼休みも終わりに差しかかっていた。
     昼休みといえば、授業から開放された憩いのひと時。みんな思い思いの昼食を楽しみ、談笑に花を咲かせる―――そんなフリータイムをみんなが享楽している間、僕は校庭を這いずり回らされていた。
     それも四限の途中から走りっぱなしだったわけで……アカハラで訴えれば絶対に勝てそう。ちなみに校庭百週という数字、一切の誇張ナシだ。花山先生は○ートマン軍曹も裸足で逃げ出すほどの鬼教師。下手にごまかそうものなら、町内百週にランクアップしかねない……!

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    コメント

    • すごく楽しく読めました。
      最後のラブコメ後の吉本新喜劇のようなどんちゃん騒ぎも最高でした。
      私も見習いたいと思います。
      • 1 fav
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    • すあま様

      はじめまして!コメントありがとうございますー!

      吉本新喜劇のような、と言われるとそうかもですね~。自分では小説というより、脚本とかコメディを書いてるイメージでやってたので意識近いような気もしれませんね。

      すあま様の作品も読ませて頂きました!“素直になれない系男子”でしたが、私の作品ともひと味違っていてよかったです。僭越ながら応援させていただきました、完結心待ちにしていますm(_ _)m
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    • 辰波ゆう様

      はじめまして!コメントいただき、感涙しておりますー!

      ヒロインもでてきて舞台設定が整ったところ、近日中には残りをアップできるよう頑張りたいと思います!今後ともよろしくお願いしますm(_ _)m
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    • おくればせながら、最後まで読ませて頂きました。明るいコメディタッチの愉しいお話でいいですね。
      ただ、ムラキ君ちのピンチは結局どうなったのか? とか主筋とは関係ないけどちょっと気になってしまいました。
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    • 辰波ゆう様

      最後まで読んでいただき心より感謝いたします・・・!

      バカ7割シリアス1割ラブコメ2割のテイストでやらせていただきました。辰波様のようなシリアスな作品も書けるようになりたいのですが、まだまだ勉強が必要なようです・・・。

      ちなみにムラキ君ちには後日談があります。さりげなく作中で伏線が張ってあったりします(笑)後日アップ予定ですので、よろしければ最後までお付き合いくださいませm(_ _)m
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    • はじめまして。
      完結するまで☆は入れない主義なので(まだ)入れませんが、面白いです。というか、いいとこで終わっちゃってます。やーーっと綾ちゃん出てきたことだし、続き楽しみにしています。
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