検索
ゲストさん
  • upppi(ウッピー)では小説や漫画・イラストの投稿が誰でも無料で出来る&読み放題!

シリーズ:書いてみたのはいいけれど~ホラー短編集~

閲覧数の合計:589

作品を編集する

  • シリーズタイトル・ジャンルの修正
  • この章を改訂する
  • この章を削除する
  • シリーズに作品を追加する
  • 表紙画像の変更
  • 閲覧数:589
  • 書いてみたのはいいけれど~ホラー短編集~

    作者:三塚章

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    書いてみたけど、なんかいまいち? な短編詰め合わせ。ちょいちょい増えていく予定。上にあるものほど新しい。



    書いてみたのはいいけれど~ホラー短編集~ 23339文字

     

    気配
     その日は、お母さんもお父さんも出かけていて、ボクはネコのヤームと一緒にお留守番をしていた。少しだけ頭が痛くて、友達と遊びに行くこともできなくて、ボクは何となくテレビのスイッチをつけた。
     再放送の怖い話がやっていて、ちょうど心霊動画の紹介が終わったところらしく、画面の中の人たちは「キャーッ!」と悲鳴をあげていた。
    『いやー、怖かったねえ』
     司会者が肩をさすりながら言った。
    『こういう話をしていると幽霊が来るっていうよね』
     その時、ボクの後で空気が揺れたような気がした。誰かがじぃっとこっちを見つめているような。心臓がドキドキしてくる。なんだかボクは怖くなってきた。ボクはそっと振り返った。
     テーブルの上に、なにか、きりのような物が浮いていた。それは砂場の砂のように灰色をしていた。
     その時だった。
    「にゃああああん!」
     棚の上に丸くなっていたヤームが、急に床へ飛び降りた。そのひょうしリモコンが落ちて、空気清浄器がゴーッと音を立てる。
    「どうしたの、ヤーム」
     聞いてみたけれど、ボクのそばに来たヤームは、知らんぷりで前足をなめているだけだった。
     振り返ってみると、もうきりみたいな物はいなくなっていた。

     それからしばらくして、ボクが宿題をしているとお母さんが急に悲鳴をあげた。
     ボクはびっくりしてすぐにお母さんの所へ走っていった。
     掃除をしていたらしく、お母さんはフタを開けられた空気清浄器の横に座りこんでいる。
    「どうしたの? お母さん」
    「ほ、ほら、これ……」
     お母さんは持っていたフィルターをボクに見せてきた。
     真っ白いフィルターに、灰色の顔が浮かび上がっていた。大きく口を開けた、おじいさんの顔が。


    その声
    『もしもし、俺、ヨウイチだけど』
     受話器から聞こえて来た声に、思わずヨウイチは吹き出しそうになった。
    運悪く父も母も出かけていて、家電(いえでん)を取ったら、今はやりのオレオレ詐欺という奴だ。
    (大方、俺のフリをして両親から金を騙し取ろうとしたのだろうけど、本人が出てしまったんじゃ仕方ないよな)
     ヨウイチが呆れているとは知らず、相手は死にそうな声で続けた。
    「実は、事故に遭って……助けて欲しいんだ。アオバ公園に……」
    (ほほう、事故ときましたか)
     どうせ、相手だか自分だかの病院代が足りないとでも言うつもりなのだろう。
     ヨウイチは、黙って受話器を置いた。
     電話に背をむけた途端、また呼び出し音が鳴った。
    『もしもし、俺、ヨウイチ』
    (しつこいな〜!)
    そこでふとヨウイチはイタズラ心を起こした。涙をこらえているような声でこんな事を言ってみる。
    「残念ですが、ヨウイチは亡くなりました。白いバンにひかれて……」
     そして相手の返事も聞かず、そのまま電話を切った。
     白いバン、と言ったのは具体的な方が現実味が出ると思ったからだ。
     むこうとしてみれば、家族を事故で亡くした遺族に立ちの悪い嘘を言ってしまった、ということになる。せいぜい、後味の悪い思いをして、もう犯罪行為をやめることだ。
     それにしても、あの声はどっかで聞いたことがある気がした。
    (ひょっとしたら、詐欺ではなく友人の誰かがイタズラしているのか? だとしたら誰だ?)
     そんな事を思っていると、また電話が鳴った。
     ひょっとしたら、さっきの嘘で悪人が改心して謝罪の電話でもしてきたのかも知れない。もしそうなら、ちょっといい話としてSNSにでもあげよう。きっと『いいね!』がたくさん付くに違いない。
     電話の相手は案の定さっきの詐欺犯だった。
    『もしもし……事故に遭って……アオバ公園に……』
    「いい加減にしろよこのバカ!」
     思い切り受話器を叩きつける。ここまでしつこいと、詐欺だけでなく嫌がらせも入っている。
    なんだか無性に腹がたって、ヨウイチは靴をひっかけるとアオバ公園にむかった。
    (電話の主を見つけてとっちめてやる!)
     聞いたことのある声だ。顔を見れば誰だか分かるだろう。
    (犯人が逃げる前にたどり着かないと!)
    近づいて来るアオバ公園の看板をみすえていたからか、ヨウイチは横から飛び出してきた自動車に気づかなかった。
     白い、古ぼけたバンに。
     はねとばされたヨウイチは、コンクリートの道路に叩きつけられた。
     人々の悲鳴がどこか遠くで聞こえた。
     打ちつけた頭がしびれる。痛む場所が多すぎて、具体的にどこが痛んでいるのかすら分からない。
    血でぬめる指で、ポケットからスマホを取り出す。110番にかけようとしたのに、指が滑って、押したのは自宅への短縮番号だった。
     短い呼び出し音の後、回線がつながった音がする。
     家には誰もいないはずなのに、それを不思議だと思う余裕もなかった。
    すがるような思いで、ヨウイチは声を振り絞った。
    「もしもし、俺、ヨウイチだけど……実は、事故に遭って……助けて欲しいんだ。アオバ公園に……」
     電話はそこで切れてしまった。
    (どうして切るんだ! 公園に救急車を呼んで欲しいのに!)
    必死でリダイヤルをする。
    「もしもし、俺……」
     相手は笑いを押し殺したような声で言った。
    『残念ですが……』
     その時、聞き覚えのある声の主が誰だか、ヨウイチははっきりと思い出した。
    受話器の向こうの声が続ける。
    『ヨウイチは亡くなりました。白いバンにひかれて……』
    それは、自分自身の声だった。


    炭坑の怪

     とある場所に、小さな炭鉱があった。
     ある朝、鉱夫の一人が坑道の奥にあったトロッコに石炭を乗せ、外へ運びだそうとした。しかしある場所に来るとトロッコがのりづけでもしたようにピタリと止まってしまった。何人かが助太刀をしても、荷を軽くしてもそこから先に進まない。
     レールに不具合があるのかと調べてみたが異常はなかった。
     鉱夫達が困り果てていると、その内の一人がレールの真下の地面がやわらかくなっているのに気がついた。
     それは誰かが枕木の間から土を削り、レールの下に穴を掘ってからまた埋め戻した跡のように見えた。
     鉱夫達が掘り返してみると、橋のように浮き上がったレールの下から六歳ほどの少女の遺体が出てきた。
     そしてその遺体の後にもまた三歳ほどの少女の遺体が眠っていた。 この二人は姉妹で、昨日の夜に行方不明になっていたのが後で分かった。
     おそらく彼女達は何者かにさらわれ、殺されたのだろう。わざわざレールの下に埋めたのは、ここならば他の場所と違って掘り返されないと思ったからに違いない。
     今までの異変は、重いトロッコが頭上を通ることで、妹の死骸がつぶされないように姉がかばったのだろう。なんともいじらしいことだと鉱夫達は噂した。


    崖の上のレストラン

     潮の香りと冬特有のハッカの混じったような風が吹く。迫ってくる夕闇に抵抗するように、崖の上に立つレストランにはぽっちりと橙(だいだい)色の光が灯っていた。絶え間ない波の音は、その内にまで入り込んでいった。
     木の壁に塗ったニスは長い月日で褐色に変色し、あちこちに置かれたランプが、返って光の届かない物影を暗く見せる、そんなレストラン。テーブルは二つしかなく、今はたった一人しか客しかいない。
     擦り切れた袖の服を着た旅人は、ケチャップソースのスパゲッティをだらだらと口に運んでいた。仕事をなくし、暮らしを立てていくあても、頼れる者もなく、いっそこの世界から消えてしまおうかと辿り着いたのがここだった。これを食べ終わっても、払う金はない。もめ事の時間を延ばしたいのもあって、旅人は店主の老女に声をかけた。
    「こんな所にレストランなんて、客は来るのかい?」
    「いや、久々のお客さんだよ。前はこの辺りにも人がいたんだけどね。みんな出て行ってしまったよ」
    「へえ、どうして婆さんはここを離れないんだ? ずっと一人でこの店を?」
     旅人は、もぞもぞと座り直した。ポケットの中の折たたみ式のナイフがイスに当たって、コトリと音を立てた。
    「旦那がまだ帰ってこないからねえ。もう六十年も待っているんだよ」
     そう言って、老婆は重ねた年の割に澄んだ瞳を窓の外を眺めた。窓の外には紫がかった空が広がり、その下に黒い海が見えた。
     六十年も帰って来ないとは、どういう意味だろう。行方不明になったのか。

    ←前のページ 現在 1/8 ページ 次のページ→

    1ページ目に戻る
    ▤ 目次ページに戻る


    応援ボタンを押す事で作品の★が増え、作者に「イイね!」を伝える事ができます。

    コメント

    • 2度目のコメントお邪魔致します。
      ペースダウンすることなくコンスタントに作品をUPされている三塚さんのモチベーションの高さ、敬服頻りです。この短編ホラー集、長く続けて欲しいです。
      前回コメントでは「小鳥箱」がお気に入りと書かせて頂きましたが、最近のでは「りんごのきもち」が好き。スタンフォード監獄実験(ドイツ映画『es』のモトになった実話)を思い出しました。「りんごのきもち」って敢えて平仮名だけしたタイトルがめっちゃ可愛いのに、この先生、腹の中黒過ぎますね。。。(◎_◎;)))ゾオオ
      • 0 fav
      • Re 返信

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。



    • わーい、ひせみさん二度目のコメントありがとうございます! 
       質はともかく量だけは書いています(笑)
      スタンフォード監獄実験! 看守と囚人の……! あの恐怖の実験を思い出してもらえるとは!あと、タイトルとのギャップも感じてもらえて嬉しいです!
      ほ、ほら、先生、一応ストップかけたから……(目をそらす)
      • 0 fav

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。


    • いろんなアイデアがギュッと詰まっていて、楽しく読むことができました。「ある朝の夢」、オカルト系かと思いきや、まさかの展開で「!」でした。
      • 0 fav
      • Re 返信

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。


    • こまざわさん感想ありがとうございました! 若干小説というよりは小ネタな感がありますが、楽しんでいただけたら何よりです。
      >オカルト系かと思いきや、まさかの展開で「!」でした。
      計算通り(←悪い笑顔)
      • 0 fav

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。


    • ひせみさん、お久しぶりです! 感想ありがとうございます!投稿された時から気にしていてくれたとのこと嬉しいです。
      >『小鳥箱』すごく好きです。
      叙述トリック(?)みたいなのをやりたくて書いてみました。江戸前口調は他の本の見よう見まねですが、リアリティがありましたか! 嬉しいです。
      >『全自動イタコ装置』『感染』
      二つとも泣けるホラー(イタコ装置の方はホラー味は少ないですが)を目指して書いたので『涙ぐんでしまいました』の言葉にガッツポーズしています(笑)
      冒頭のは皮肉をたっぷり効かせたつもりです(ニヤリ)
      おそらく忘れたころにひょっこり更新すると思うので、その時はよろしくお願いします。
      • 1 fav
      • Re 返信

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。


    • こんにちは、お久し振りです。投稿されたときから気になっていたこちらのお作品をやっと読むことが出来ました。秀作揃いで、これだけのものを一度に読ませて頂けるなんてとても贅沢な気分です。優劣着け難いですが『小鳥箱』すごく好きです。語り手の江戸前口調、リアリティがあってすごくいい。内容も意表を突かれました。
      『全自動イタコ装置』『感染』ホラージャンルには留まらない、優しく悲しい、自己犠牲を伴った愛のお話ですね。不覚にも涙ぐんでしまいました。そして、冒頭の掌編。こちらには思わず口許がニヤリ。また更新されるのですよね?楽しみにしております。
      • 1 fav
      • Re 返信

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。


    作者紹介

    この作者の人気作品

    小説 ホラーの人気作品

    続きを見る