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シリーズ:けものがみ番外編 親の心 子の心

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  • けものがみ番外編 親の心 子の心

    作者:naoki

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    カズヒの両親、カゲロウ×アツネの話。出会いと愛と現在と。



    けものがみ番外編 親の心 子の心 2865文字

     

    親の心 子の心




     彼は美しく、彼はとても魅惑的だった。
     氷のようだな、と陽炎(カゲロウ)は思った。
    「私はお前のような男は嫌いだよ」
     黄金の糸のように豪奢な金の巻き毛が肩からこぼれ落ち、彼の細い顎先を彩る。薄く笑んで振り返る姿を、食い入るように見つめた。
    「お前のような男は、何でも力任せでモノを言うんだから」
     まるで傷ついたことがあるような言葉だったのに、高貴で潔癖で、純潔の乙女のようなたたずまいだった。
    「そんなことはしない」
    「どうだか」
    「だったら試してみればいい。俺がお前に従うかどうか」
    「…従う?」
    「ああ。従うとも」
    「…いまさら」
     ふっと微笑む、その横顔が美しい。
     そうして見下ろす青年―――熱音(アツネ)は、もう三度もカゲロウと相対しているのだ。
     同じ数だけ、カゲロウは彼に愛の言葉を告げている。
     世間ではこれを、妻乞いと言うのだ。
     だからカゲロウは、ただ嬉しくて楽しくて仕方がない。




     三度訪れた男は、とても粗野で粗暴で気遣いなど知らないように見受けられた。
     とてもこれが同族とは思えない。心からアツネがそう思ったほどだ。
     髪の色と眼の色だけが同じ。体つきも、顔つきも自分よりずっと頑丈そうだ。
     陽炎と名乗った男が着物を脱いで、初めてアツネはそれを知る。
    「従うと言ったな?」
    「ああ。従うとも」
    「なら、どうして私を?」
    「お前が、俺に抱かれたいと思っているから」
     粗野で粗暴で、傲慢で、なんでも力でどうにかなると思いこんでいる。
     それなのにアツネは、自分もいつの間にか帯を解いて、彼の顔を見上げていることに気づいた。
     三度、彼に嫌いだと言った。
     その度に真名を捧げられた。
     そしてカゲロウは今、アツネの真名(すべて)を握っている。
     …これは幻影か?
    「そうしてお前の勝手な思い込みで、私はお前に許さなければならないの?」
     笑みを含んだ言い方になってしまうのは、仕方のないことだ。
     幻影に違いない。
     目の前の野性的で横暴な男が、好ましく見えてしまうのだから。
     熱に揺らぐ幻影の名を持つ男は、微笑んでアツネを見下ろした。
    「俺はお前に従うと言った。だからお前はただ、俺に命令すればいい」
     本当に、腹の立つ男。
     そうやってすべてを委ねたつもりになって、結局力任せに進むと思っているのだ。
     確信を得た顔で。
     けれど。
    「なら、私は許すよ」
     アツネはまんまとその考えに乗って、最後には両手を広げてしまう。




     世にたった二頭だけ残った金鹿が、成した子どもはあまりに非力だった。
    「……ちいさい」
     魂を抜かれたように、ぽつりとカゲロウが呟く。産みの苦しみからぐったりとしているアツネは、夢の中のようにその声を聴いた。
     どうしてだろう。
     どうして。
    「…………」
     こんなに涙が出そうになるのは。




     幸せは、目に見えるものだと思っていた。
     アツネの金色の瞳には、カゲロウは眩しかった。つがいにと請われ、愛され大切にされて、くすぐったく嬉しかった。
     毎日のように、カゲロウは愛していると口にする。
     だから仕返しに、アツネは彼に口づけてやる。
     それが幸せだ。そして幸せは、自分の身体の中で育ち、世に出るのだ。
     二人の愛の結晶として。この世にただ二人残された同族が、新たに生んだ金鹿の子。
     それが幸せだ。そう思っていた。
     それなのに。




     嵐は突然に訪れた。




     風雨の中、白金色の牡鹿が山を駆け巡る。
    『アツネ! アツネ!』
     つがいの神気は感じられる。それを追って、カゲロウは走る。
    『アツネ!』
     ――― 来るな!
     ごうっ、と風が吹いた。向かいから襲ってきた霰を避けるように、牡鹿は顔を背け立ち止まる。
    『アツネ?』
     ――― 来るな…私は……私は…
     これは幻影だ。
     「彼」はすぐそばにいて、自分は「彼」の「角」の中にいるのだ。
     牡鹿は顔を上げた。霰が無数の血を散らす。
    『アツネ。なぜ俺から逃げた? 俺を捨てるのか?』
     寂しげな声に、きいんと音が鳴る。
     ――― 違う
     ――― …違う…私は……
     ――― 私はお前を愛している
    『ならばなぜ? なぜ俺から、最愛のお前と子どもを奪う? 俺に一人で死ねと言うのか?』
     ――― 違う!
    『あの子が小さく弱いからか? お前の体がひ弱だからか? 俺の方が神気が強いからか?』
     ――― ………。カゲロウ…
     事実だろう?
     でもカゲロウは言わない。そんな言葉、高潔で潔癖なアツネは決して欲しくなどない。
     高潔で潔癖で。優しくて優雅で魅力的で。自分より、愛する男を大切に思っている。
     強い子どもが産めない自分より、他の相手とつがったほうが愛する男の幸せだと、簡単に決めてしまう。
     それがアツネだった。
     だから。
    『なら、次の子は俺が産む。その子も絶対に死なせない』
     だからカゲロウは、簡単にそう言ってしまうことができる。
     ――― カゲロウ…
    『お前はこれから先、何百年、何千年経とうとも、恐れる必要は何もない。お前が死ぬまで、お前の身には、どんな恐怖も寂しさも、悲しみも降りかかることはない』
    「………なんでそんな、ことを言うの」
     美しい青年が泣いている。牡鹿の前に、赤子を抱いて。
    「そんな…何の根拠もないことを、どうしてお前は」
    「俺が約束する。一生お前を愛して守る。だからだ」
    「―――私は…」
    「お前はただ、許してくれればいい」
     愛することを。
     守ることを。
     そばにあり続けることを。
     この生涯を。
    「アツネ。許してくれ」
    「……っ」
     愛しい男にそう言って抱きしめられて、どうしてその手から逃れることができるだろう。
     だからアツネは、ただ嬉しくて幸せで仕方がない。




    「その子どもがお前で、それでその後本当にカゲロウは子どもを産んだんだよ」
    「それが、ヒワ?」
    「そうだ。しかし、本当にカズヒはアツネに似て可愛いなあ」
    「………はあ」
     とか他人行儀な声が出てしまうのは、カズヒとしては仕方のないことだと思うのだが。
     それにしても、何と言うかその、異様だ。
     斉木ヶ原家居候のタスケが、両親に会わせてくれると連れてきてくれたのはいいものの。どこの私有林だと疑いたくなる森深くに住んでいた両親というか、二人の金髪の男は、話している間中ずっとカズヒを細めた眼で見ている。
     特にカゲロウなどは、息子を見る目というよりデレデレのちょっとなんか変な感じの眼つきだ。
    (えー…とにかくこっちが「お父さん」で)
     長い真っ直ぐな金髪。性格は多分ちょっといい加減で大雑把。見た目はワイルド系美青年。
    (こっちが「お母さん」…?)
     若い女の人みたいな金の巻き毛。性格は多分ちょっとのんびり屋で天然。見た目は繊細で中性的な美人。
     どっちも美形。どっちも男。
     そしてどっちも、愛に溢れている。
    「カズヒ」
    「今まで迎えに行けなくてごめんね」
    「ずっと愛しているよ」
    「おいで」
     そうして両手を広げられ、カズヒはちょっと照れくさいけれど、その腕の中に納まった。
     四本の、強くて優しくてあたたかい腕の中に。
     金の巻き毛の「母親」が、くすりと笑んで頬を擦り寄せた。
    「ああ…ずっとこうしたかったんだ。私のカズヒ」
     くすぐったくカズヒが笑うと、「父親」も同じように笑う。
    「俺もだ。でも、いつかこうなると、ずっと思ってた」
     恐怖も寂しさも悲しみも、決して降りかかることはない。
     「幸せ」は今、アツネとカゲロウの腕の中で笑っている。

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    コメント

    • ☆をつけて下さったみなさま、ありがとうございます。
      アツネとカゲロウがなんで交代で子ども産んだのか、というのを書きたかったのです。肉体的リバですが、精神的にはカゲロウ×アツネで固定。めんどくさいですが、ヒワの母がカゲロウで、カズヒの母がアツネです。
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    作者紹介

    • naoki
    • 作品投稿数:53  累計獲得星数:286
    • 基本はラブラブなBL好きです。
      「けものがみ」シリーズを不定期に晒してますが、

      ・本編(ナンバリング)
      ・本編メインCPの番外編
      ・本編脇役の番外編(承前)

      などなど。一応それぞれ単発一話完結です。

      ☆・コメント←ありがとうございます。励みになります。

      無謀な企画をやっています。長い目で見てやってください。

      復活していましたが、またお休み中です。こちらも長い目でお願いします。

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