upppiは縦読みコミック(タテコミ)・イラスト・小説が無料で楽しめるサービスです!

ようこそ!ゲストさん
シリーズ:自称化学者と魔法陣
閲覧数の合計:707

作品を編集する

  • シリーズタイトル・ジャンルの修正
  • この章を改訂する
  • この章を削除する
  • シリーズに作品を追加する
  • 表紙画像の変更

自称化学者と魔法陣

作者:五十鈴

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    高級リゾートマンションの最上階に住むウィリアム=ウインストンは、自称未来の天才化学者。いつか何かをひらめく予定。けれど、ひらめかない。勝手に化学の限界を感じ、魔術に手を出してみたりする。そんな彼が召喚したのは? タイトル:こちらのフリー素材を使用させて頂きました。http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=31857915(ロゴ('A`)様)


    登録ユーザー星:10 だれでも星:9 閲覧数:707

    自称化学者と魔法陣 41435文字

     

     〈1〉自称科学者と魔法陣(罠)


     それは、青い惑星での出来事。
     
     青くて丸いそれは、この銀河の片隅に似たような星があるかも知れないけれど、それとはまた別の惑星。
     滑らかな砂浜と地平線の見えるなだらかな美しい海洋。ヤシの木に珊瑚礁。
     それの奥には、高層ビルが立ち並ぶ。南国の楽園と、都市の融合。
     ア×リカのマイ×ミとでも言えばわかりやすいが、ここはあくまで別の惑星。

     そのプライベートビーチを抱える高級リゾートマンションの最上階に、一人の男が住んでいた。
     ウィリアム=ウインストン、二十一歳。
     さらりとしたプラチナカラーの髪に、アイスブルーの瞳。すらりとした痩身に小作りの整った顔。
     外見は、ロ×アンブルーのように優雅な青年だ。
     某有名ブランドのシャツとパンツ、靴と靴下と時計とエトセトラ。
     ようするに、お金持ちである。

     ただ、そのブランド物が滑稽に見えるような白衣を羽織り、だだっ広いマンションを改築して作った研究室で、ホワイトボードにアホな落書きをしていた。
     ようするに、暇なのである。
     マーカーを片手に、急にその落書きをぐちゃぐちゃに塗りつぶす。インクの無駄使いだ。

    「ああ! ぜんっぜん、降りて来ない!」

     彼は未来の天才化学者。
     ただし、自称。
     いつか、何かしらをひらめく予定。
     そう、自分では信じているが、傍目には白衣を着ただけのちょっと変わった人。
     それでも、実家は財閥。遊んで暮らせるだけの金があり、そんな馬鹿なことを言えるのだった。

     毎日毎日、同じことの繰り返し。
     ウィリアムはそうして考えた。
     これは化学の限界だ、と。

     マーカーを放り投げ、ウィリアムはパソコンに向かう。
     立ち上げると、ホログラムの画面がぽやんと浮かび上がった。
     たったかたったかキーを打ち込み、ウィリアムはうなった。
     化学の限界を感じてしまった以上、ここは正反対のものをに挑戦してみよう、と。

     そうしたら、道が開けるような気がした。
     ようするに、暇なのだ。
     化学の相反するものといえば、魔術だろう。
     魔術について書かれたページを探し出す。

     あった。けれど、びっくりするくらい、曖昧な記述の魔法陣。
     左手で描いたようなゆるい顔をした、猫だか豆腐だかわからないような生き物が、でかい鉛筆を持って魔法陣を説明している。

     何が出てくるかわからないにゃー。失敗しても責任取れないにゃー。止めておいた方がいいにゃー。
     やっぱり、猫だったか。

     ウィリアムはううん、と0.2秒ほど考えて、それから放り投げたマーカーを拾った。キャップをぽん、と抜き取る。そのホワイトボードマーカーで、白く艶やかなタイルの床に歪みに歪んだ魔法陣を大きく書き始める。

     ヘキサグラム(六芒星)に、ルーン文字とやら。これなら拭けば取れるし、という、床の汚れの心配はしても、自分の心配はまるでせずに下した決断だった。

    「よし」

     キャップを閉じ、マーカーを放り投げる。それからもう一度、パソコンの画面をチェックした。
     魔法陣の中央に立ち、呪文を唱える。

    「アイネ、クライネ、ナハトムジーク、アイネ、クライネ、ナハトムジーク」

     すると、突然、締め切った研究室の中に風が巻き起こった。電気が消え、昼間だというのに、ウィリアムは暗闇に落とされた。そして、ぽ、ぽ、と魔法陣を囲むように紫色の火がともる。バースデーケーキのキャンドルを連想させるのは、ウィリアムが能天気だからだろう。

    「成功? やっぱり、俺って何やらせても才能があるから」

     自画自賛。いつもこんな感じだったりする、寂しい二十一歳。
     魔法陣を紫色の火が一周すると、それは高く壁のように燃え盛り、そしてごうごうと音を立てて消えた。

     部屋が再び明るくなり、上を見上げたウィリアムの上に、いるはずのないものが降って来た。
     のどにひざがぶち当たり、げぇとウィリアムはうめいて後ろに倒れた。その上に正座する形で、突然現れた彼女はウィリアムの顔を覗き込む。

    「やっと……やっと、これで一人前になれる」

     顔の横でカールした、ハニーブロンドのふわふわの長い髪。金色の瞳。十代後半くらいだろうか。よく見ると、耳の先が少し尖っているような。

     わかりやすく言うなら、85点。
     つまり、かわいい方だ。

     ただ、人間じゃないから−15点。後のマイナス要素は、服装だ。
     悪魔っ娘だか魔女っ娘だか知らないが、こういうシチュエーションだったらまず、異常に胸の開いた服かミニスカだろう。
     なのに、この娘は指先つま先さえも出ないようなずるっずるの黒いローブ姿だった。首から下は完全防備だ。
     体型なんてわかりもしないし、おもしろくもなんともない。
     角も翼も、確認できないが尻尾もない。すべてが中途半端だ。
     ウィリアムはため息をついた。

    「早くどけよ」

     すると、彼女は指図されたことに驚いていた。

    「え、口答え? 口答えするの? こういう場合って、どうするの? マニュアル置いて来たのに……」

     とりあえず、ウィリアムは彼女の下から抜け出した。そして、ちょっと距離を保ってみる。
     彼女は困った風だったが、すぐに気を取り直した。

    「まあいいわ。じゃあ、獲物1号さん、さようなら」

     にっこりとかわいく微笑み、彼女は不穏なことを言う。そして、ようやく出て来た指先から、変な光を放っていた。
     ウィリアムはさすがにちょっとひるんだ。

    「おい、獲物ってなんだ?」
    「あら? 魔法陣に描いてあったじゃない。私は供物ですって」
    「クモツ? 俺が?」
    「そう。あなた、あの魔法陣はわたしたち悪魔の流した偽の魔法陣よ。何が出てくるかわからないとか、失敗するかもとか、やらない方がいいよとか、ネガティブワードを入れておくと、引っかかる人間が増えるのよね。やっちゃいけないと思うほど、人間ってやりたくなるのよ」

     そこまで考えず、とりあえずやってみたウィリアムと、葛藤の末に好奇心に負けたやつ、どちらが馬鹿なのだろう。

    「あんまり上質の魂じゃなさそうだけど、贅沢も言ってられないし、我慢しなきゃ」

     すごく聞き捨てならないことを言う。ウィリアムはむっとした。

    「容姿端麗で財産家の俺の魂が上質じゃないって、どういうことだ?」

     すると、彼女は首をかしげた。

    「魂に容姿と財産なんて関係ないし。あなた、ふやふやしてるわ。テキトーな生き様が魂に出てるわよ」

     ウィリアムは情け容赦のない彼女の言葉に、誰も踏み込んだことのないところを踏み荒らされたような気分になった。ぎゃあぎゃあと反論していると、彼女はうっとうしそうに言った。

    「まあいいって言ってるじゃない。それじゃあね」

     彼女の指先が再び光る。
     ウィリアムは文句を言っている場合ではないとようやく気付いた。壁際にさささと下がる。
     ぴかっと光ったかと思うと、光が鞭のようにウィリアムに襲いかかる。とっさに避けた後、壁がえげつなくえぐれた。

    「…………」

     いくらなんでも、こんな死に方ってどうなんだろう。
     低級悪魔の昇格の踏み台にされるほど、自分の命は安っぽいものなのか。
     こんなことなら、もっと好き放題生きてやるんだった。
     と、これ以上ないほどに好き勝手して来た男は思った。
     そして、最初の一撃をかわしたことで彼女は機嫌を損ねて頬を膨らませていたが、気を取り直して第二撃を指先に集め出した。

    「わー!」

     ウィリアムは部屋の中をしゃかしゃかと走り回る。少々錯乱してしまっていた。

    「ちょっと、落ち着いてよ」

     冷静に突っ込みつつ、彼女は腕を振るった。光の鞭が、走り回るウィリアムの足首を絡め取る。ウィリアムは本棚に手を付いて倒れた。その反動で、棚の上の小物がばらばらと落ちて来た。

     こんな時だというのに、その中のひとつに目が留まった。
     どこからどう見てもぶっさいくなぬいぐるみだ。タヌキだかキツネだか宇宙人だかよくわからない。小型犬サイズのそれは、いわゆる元カノの置き土産である。

     ぬいぐるみ作家を目指していた彼女は、オリジナルだと言って嬉しそうにそれを作った。ベタぼれだったあの頃は、シンシアはなんて才能に満ち溢れてるんだろうと思っていたが、去られてみると、明らかに不器用さが滲み出していると思う。

    ←前のページ 現在 1/13 ページ 次のページ→

    1ページ目に戻る
    ▤ 目次ページに戻る


    お気に入りリストに追加 この作品を応援する

    応援ボタンを押す事で作品の★が増え、作者に「イイね!」を伝える事ができます。

    コメント

    • 最終選考まで残られましたね!
      受賞こそ逃しましたが、お気に入りの作品が高評価で嬉しいです!!
      >結末に至るまでの過程や伏線の張り方も見事で、ダメダメな主人公が最後の最後でカッコ良くなるという一種のお約束展開がとてもアツく、小気味良い。審査員の中でもファンが出た程です。

      審査員評、うなずきながら読みました!
      • 1 fav
      • Re 返信

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。


    • ありがとうございます!
      勿体ないお言葉ですが、とても嬉しいです♪
      応援とても励みになりました!
      • 0 fav

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。


    • お返事が遅くなって申し訳ありません。
      お読みいただき、ありがとうございます!
      そう仰っていただけるとすごく嬉しいです!
      • 0 fav
      • Re 返信

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。


    • このての小説に必要なのは
      目に止まるタイトル、設定、読んだ後の爽快感
      であると思う

      このサイトで
      初めて最後まで読みたいと思った作品でした

      ただ、付け加えるとしたら、
      ・一つ一つの表現力
      ・キャストの交わり
      を付け加えると文学として窘めるレウ゛ェルにはなると思います、


      っと自称天才作家であるところの僕は、
      上から物言う付き人のように、またその揶揄する自分に奢れるかのように、静かに鏡を、見つめた。美しい。日が落ちて暗転した部屋に、ただ呆然と立ち尽すし、雫の反射に一時の幻想をみた。
      • 1 fav
      • Re 返信

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。


    • そうなんです。
      通称豆腐猫です(笑)
      この適当加減が思った以上に描きにくくてびっくりしました☆
      • 0 fav
      • Re 返信

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。


    • ん?
      今頃気がついたのですが、アイコンイラストはもしかしたら、
      >猫だか豆腐だかわからないような生き物
      コレですか!?
      • 0 fav
      • Re 返信

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。


    • やっほ~! 入れました!
      ずっと興味を抱いていたのですがこの機会に呼んで瞠目!
      この作品は五十鈴様の他作品とまた少し味が違って
      うん、チョット大人なほろ苦くて甘い、まさに五十鈴様龍デビルスケーキ❤大変美味しゅうございました!
      全力応援しています!!
      結城様の選んだ表紙もピッタリと思います❤
      • 1 fav
      • Re 返信

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。


    • あ! ようやく!
      お互い新たな船出ですよね。がんばりましょう♪
      そう、この作品、ちょっと異色なんです。なんでこうなったのか、自分でもよくわからない……。
      表紙の魔方陣、きれいですよね。即決でした(笑)
      • 2 fav

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。


    • アホ可愛いメイン二人のやり取りと、個性的なサブキャラ達が面白くて吹き出しまくりです!!

      小説だからこその手法を使ってここまで面白く書ける力量。羨ましい……!!
      それにケーキが美味しそう♥
      ラストも素敵で、広く一般受けする読後感の良いお話となっています。
      個人的にはこのお話が上位入賞するのでは……と、予想。
      私は今回は出品できませんが、その分応援しています!!
      • 1 fav
      • Re 返信

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。


    • ありがとうございます!
      勿体ないお言葉で恐縮です!
      テンポ重視な話ですが、そう仰って頂けて嬉しいです☆
      どうなるかはわかりませんが、結果はともかくよい経験になりそうです♪
      • 1 fav

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。


    作者紹介

    • 五十鈴
    • 作品投稿数:1  累計獲得星数:19
    • まだまだこちらには不慣れですが、よろしくお願いします☆
    • 関連URL
      :

    この作者の人気作品

    小説 ライトノベルの人気作品

    続きを見る