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シリーズ:金眼のグアルディア 第1巻
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金眼のグアルディア 第1巻

作者:スイーツ文庫

  • 無料作品 有料作品:¥400(税込) R18
  • 編集協力者:

    再会を約束した親友が、敵国の兵士として戦場に現れた。どうして、君が!? 男同士の友情を描いたアクションファンタジー。


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    金眼のグアルディア 第1巻 97570文字

     




    目次
    ◇プロローグ
    第1章




     ◇プロローグ


    「ヴェルナ。もうここまで来れば、政府軍の兵士に見つかることもないよ」
     額の汗を拭いながら、少年は後ろを振り返った。
    「ああ、そうみたいだな」
     そう言ったヴェルナは、自分が背負っている幼い少女に声をかける。
    「もう大丈夫だローラ。ここには政府軍の兵士はいないから」
     ヴェルナの背には、五、六歳くらいの幼い少女の姿があった。
    「どうやら、ベッドよりも君の背中のほうがいいらしいね」
     ヴェルナの妹ローラは、生まれながら心臓の病におかされ、一年のほとんどをベッドの上ですごしていた。
     そのローラは兄の温かな背中が心地よかったせいか、すやすやと寝息をたてながら眠っていた。
     緑を失った山々が戦場の酷さを物語っているこの場所。
     ここはギュルムス王国の王都、ミクスンベルグの市街地から半日ほど歩いた、隣国シュルッテ帝国との国境地帯だ。
     ギュルムス王国は、政府軍と反政府軍の二分に別れて争う内戦状態が、もう五年もの間、続いていた。
     人々の生活は貧しくなるいっぽうで、食料や薬品を求めて隣国のシュルッテ帝国へ脱出する人々も出てきていた。
     だが政府軍の監視の目はきつく、見つかればその場で処刑されてしまうのが現実だ。
     ドンッドンッ!
     遠くから、衝撃音が聞こえてきた。
     それが何なのか、少年にはわかっていた。
     戦闘が始まったのだ。
     停戦に向けて、政府軍と反政府軍の会議が午後から行われていた。だが戦火が再びあがったということは、停戦の合意には至らなかったに違いない。
    「ランス、お前も一緒にシュルッテ帝国へ逃げよう」
     ここにはもう、ローラの病状を良くする為の薬がない。ヴェルナは一大決心をして、隣国のシュルッテ帝国へと一時的に避難するつもりでいた。
    「さあ!」
     手を差し伸べたヴェルナ。だがランスは寂しそうな表情でそれに答える。
    「ごめん。僕は……行けないよ……行けないんだ。僕は、反政府軍の少年兵だ。現政府の悪政を終わらせるためにも、そして、父さんや母さんを殺したアイツらに復讐をするためにも僕は……ごめん。君とは一緒に行けない」
     哀しそうに俯くランスにヴェルナは言った。
    「国を良くする為に戦っているお前には悪いが、俺は争いが嫌いだ。それに、こんな内戦でローラの命を危険にさらすわけにはいかない。俺にとってお前は大切な親友だから、かけがえのない存在だから、この内戦でお前を失いたくはないんだ。でも……両親を失ったお前の憎しみや悲しみ、俺もお前と同じ……両親を失ったから……その気持ちはよくわかる。だけど憎しみや悲しみだけで争っていたら、なにも解決なんかしない。だから──」
     ヴェルナは言葉を続けた。
    「俺達と一緒に行こう、ランス」
     親友の言葉に心が揺さぶられる。
     だがランスは首を縦に振らなかった。
     自分にはやるべきことがある。
     両親が殺された。それも、自分のせいで。
     だが最後に父と母はこう言ってくれたのだ。
    『お前はなにも悪くないんだよ、ランス。その左手の印(しるし)は、決して忌み嫌われるものじゃない。この国に自由と平和をもたらしてくれるものだと、私達は信じているからね』と。
     だから僕は──。
     ──ランスは左の手のひらに視線を落とす。
     そこには鍵穴が描かれてある。
     黒く縁取られた、鍵穴が。
     ランスは思う。
     これのせいで、皆から疎まれ嫌われた。
     伝説の疫病神がこの街にいると、皆から恐れられた。
     だって僕は、皆の幸せを奪い取ってしまう存在だから。
     皆と一緒に笑ってはいけない存在だから。
     だけど君は違ったよね、と。
     ランスはヴェルナに視線を向ける。
    「ごめん。僕は行けない。行かない。だから、君とローラだけで行ってくれ」
    「……ランス」
     ランスはヴェルナの肩をつかんだ。
    「いいから早く行くんだ。政府軍と反政府軍の和平交渉は決裂した。この場所もすぐに戦場になる。だから、早くこの国から逃げるんだ、ヴェルナ!」
     ランスの気迫に心を動かされたヴェルナは、ゆっくりと静かに頷く。
    「わかった。だけど──」
     ヴェルナは頷くと言葉を続け、
    「生きて必ず再会しよう。約束だ」
     再び手を差し出してきた。
     ランスはその手を両手で包み込むように握り返す。
    「そうだね。平和になったこの国で。また会おう」
     幼い頃からいつも一緒だった。川で遊んだり、草原で昼寝をしたり、悪さをして怒られたり……。
     親友がこの国を去っていく。それはランスにとって、とても寂しいことだった。
    (でもいつか必ず、再会することが出来るさ。それまでは、死ねない──)
     まだ幼いローラを背負ったヴェルナの後ろ姿を見届けたランスは、踵を返すと王都、ミクスンベルグを目指して歩きはじめた。




     すっかり陽も落ちた頃、ようやく帰り着いた街は火の手が上がり、思わず目を覆いたくなるほどの悲惨な戦場と化していた。
     どちらかの兵士が放ったギュルムス王国の炎術。それが、かつてはパン屋だった建物を容赦なく焼き尽くしている。
     市街地で繰り広げられる戦闘。
     ランスはその戦火をくぐり抜けながらアジトへと向かう。
     だが、そのアジトから──。
    「ッ!」
     ──真っ赤な炎が窓を破って立ち上がっている。
    「みんなッ!」
     そう叫びながらランスは全力で走る。
     アジトにいるのは皆、ランスと同じ政府軍に親を殺された少年達だった。
     少年兵として厳しい訓練期間を共にすごした仲間達。
     皆から恐れられ、嫌われていたランスの左手を見ても、それがどうかしたのか?と笑い飛ばしてくれた仲間達。
     生きていてくれッ!
     そう願いながらランスがアジトの扉を蹴破ると、吹き出した炎と熱風がランスを襲う。
    「あッ!」
     炎の熱に耐えながら、アジトの奥を窺うと、燃え盛る炎に焼き尽くされる仲間たちの亡骸らしきものが見えた。
    (政府軍か!)
     と、そのとき背後から声がした。
    「反政府軍のガキがまだ残っていたか」
     振り返った途端、頭を鈍器で殴られたような痛みが走った。
    「うぅぅ」
     路地に倒れたランスは、そのままの状態で相手を見上げた。
     ギュルムス王国の紋章が入った青い戦闘服に黒いマント。そして、手や脚にはそれぞれ籠手(こて)と具足を装備していた。
    「騎術士(きじゅつし)!」
     兵士はこの国最強と謳われている、剣術と四霊術に長けた兵士だった。
     その騎術士が口元をニヤつかせながら言った。
    「ちょうどいい実験台が現れたぜ」
    「実験台?」
    「ああそうさ。お前はこれから新しい炎術の実験台になってもらうんだよ」
     ランスは恐怖でその場から動けなかった。
     自分は殺される。焼き殺されてしまう。どうしよう!
    「実験台になってもらう礼だ。せめて、苦しまない程度に焼き殺してやる」
     騎術士が呪文を唱えながら両手を素早く流線型に動かした。そして、
    「我はすべてを焼き尽くす──鳳凰(フェニックス)!」
     騎術士は政府軍が新たに開発したギュルムス王国、四霊術のひとつ、炎術『鳳凰(フェニックス)』をランスに向けて放った。
     ゴウゴウと燃え盛る炎が火の鳥を形成し、ランスへと襲い掛かる。
     ──必ず再会しようね。
    (ヴェルナとの約束。どうやら守れそうにないな)
     ごめん──。
     ランスはそれに対抗出来る術を知らない。ただ黙って死を待つのみだった。
     そんな迫り来る真っ赤な恐怖のなか、ランスは反射的に自分の顔をかばうように左手をかざした。
    (死ぬッ!)
     絶体絶命と思われたその直後──。
     身体が熱くない。
     燃え盛り、自分を焼き殺そうとしていた炎が消えていた。
     信じられないことが今、自分の身に起こっている。
     騎術士が震える声で言った。
    「術を吸収しただと! そ、そんなバカなッ!」
     今まで怯えていたのはランスのほうだったのに、今度はアジトを襲ってきた騎術士が怯え出した。
    「クソッ! アイツからの情報には、呪われたガキがいるなどとは書かれていなかったぞッ!」
     ランスの左手には、鍵穴が描かれている。
     これがなにを意味するのか、ランスは身にしみるほどよく知っていた。
     皆から疎まれ、嫌われる者。疫病神。
     ただ、それだけだ。
    「この呪われたガキめッ! お前みたいな化け物が生きていていいはずがないッ!」
     その言葉を聞いて、やはり自分は呪われた子供なんだとランスは思った。

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    • スイーツ文庫
    • 作品投稿数:16  累計獲得星数:220
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