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シリーズ:満ち潮を待つ間に

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  • 再会の時

    作者:ぶどうのあき

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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    大人になってから、高校の後輩に再会してしまう話。
    登場人物の名前ですが、狭霧 圭は、さぎり けい と読みます。
    病気で倒れた父の跡を急きょ継いで警備会社の社長になった大内隼人は、会社の売り上げのために、警備とは関係のない業務を引き受ける。仕事を頼んだ探偵事務所で、隼人は、高校の後輩の狭霧圭に再会する。



    再会の時 14907文字

     

    ●1
    その狭いオフィスの会議室には二人の初老の男と20代後半の男が机を囲んで座っていた。全員スーツ姿だ。20代の男、大内隼人は大柄な身体を緊張させて、古びた小さい椅子に座っていた。
    白に近いダークグレーの髪に同じ色の顎髭を蓄えた初老の男、佐久間が言った。
    「少し早いですが、始めますか?」
    「いや、もう少し待ってください。狭霧くんがこれから来ます」ともう一人の初老の男間島が答えた。「時間に正確なので、もう来ると思います」
    「狭霧?」と隼人は聞き返した。
    「はい。フリーランスでうちと契約しています。まだ、若いんですが、腕は確かですよ。お役に立てると思います」
    隼人は、佐久間をみる。「佐久間さんも知ってる人ですか?」
    「いえ、若社長。私は、現場の方には会ったことがありませんです」
    「狭霧というのは、珍しい名前ですね。知り合いかもしれない。下の名前はなんですか?」と隼人は間島に尋ねる。
    そこに、受付のベルがチリンと鳴った。間島は席を立つ。「今来たようです」
    そして、受付に出迎えに言った。
    佐久間が立ち上がったので、隼人も一緒に立ち、来訪者を待つ。
    間島の後ろから来た若い男が、狭霧だ。
    隼人は、一度彼を見ると、目をそらせなくなった。顔がこわばって固まっていく。
    狭霧圭だ。
    間違えるはずがない。彼、そのものだ。
    バサバサとした前髪をかきあげた右手の指は細い。柔らかな頬に整った鼻筋。優美な唇。長い睫毛。尖った目つきがこうも悪くなければ、息をのむ美青年だろうに。
    左耳には黒い石のピアス。スリムなポロシャツにジャケット、スラックス、黒のランニングシューズというラフな風情だ。
    彼も、隼人を認めた。頭からつま先まで視線を走らせ、顔に戻ってくる。それから、誰にでもわかるように、あからさまに顔をしかめてみせた。
    「若社長のご挨拶、っていうから、どこのデクノボーがくるかと思ったら、お前かよ」
    「こ、こら。狭霧くん。なんてことを。お客様ですよ」と間島がとりなそうとしている。
    隼人も「デクノボーじゃなくて悪かったな」気を取り直して、なんとか答えられた。
    「お前じゃあ、デクノボーよりたちが悪い、若社長さん」生意気な唇の端が持ち上がり、小ばかにした話し方をする。
    「狭霧くんと知り合いでしたか?」と間島が隼人に聞いてきた。
    「ええ。高校の後輩です」と隼人は間島を見て告げた。
    「高校の?それは、奇遇ですねえ」間島は言った。「狭霧くん、高校どこでしたっけ?部活が一緒でしたか?」
    「ずいぶん前の話ですから」と隼人は答えた。
    「いやあ、大内さんまだ若いから、高校って言っても10年もたってないでしょう。私なんて、高校時代の後輩にあっても、外見が変わりすぎて思い出してもらえませんよ。はっはっはっ」と間島は禿げ上がった頭をなでて笑った。
    場を和ませようとする間島に合わせて、佐久間が狭霧圭に名刺を出す。「大内警備の佐久間です」
    圭は、その動作には礼儀正しく自分もポケットから名刺を差し出した。「狭霧です」
    隼人も名刺を出し、圭に渡した。出された圭の名刺には、「狭霧圭」という名前と住所、電話、メールアドレスが書かれている。住所は、この間島のオフィスの住所だ。電話は携帯番号。メールはフリーアドレスだ。味もそっけもない白い名刺に必要最小限の黒い文字。
    「まあ、かけましょうかね」と間島は言い、にらみ合っている隼人と圭を座らせた。
    それから間島は奥へ行き、冷蔵庫から小さいお茶のペットボトルを人数分もってきて配る。
    「今日は、大内社長は挨拶だけじゃなくて、仕事の話でこられたんだよ」と間島は圭に告げた。
    圭は間島には素直にうなずいていた。


    大内隼人は、小さな警備会社の大内警備の三代目社長だ。半年前、社長を務めていた父親が突然倒れ、急きょ社長に就任した。
    しばらくして、事前の説明以上に、大内警備の経営が悪化していることを知った。今は、顧客への営業と金策に走り回る毎日だ。
    間島のオフィスに一緒に来ている佐久間は、長年父親の右腕として働いてきた会社の幹部だ。佐久間は今でこそ穏やかな老人だが、昔は相当なワルだったと聞いたことがある。
    父を慕って頻繁に家に出入りしていて、子どものころはよく遊んでもらった記憶がある。

    忙しい日々のある夜、隼人が経理からあがってきた支払い明細を見て頭を抱えていたら、佐久間が社長室に入ってきた。
    「隼人坊ちゃん。遅くまでご苦労様です」
    「その、坊ちゃんってやめてください」
    「いやあ、つい、慣れた呼び方しちゃって、すみません。若社長」
    「あのー。若社長っていうのも、やめてほしいんですけどね」隼人は繰りされる同じ会話にため息をついた。
    「お困りのようですね」
    「今月も赤字で」と隼人はつい弱音をもらしてしまう。「なんかいい仕事ありませんかね」
    「いい仕事、ですか」佐久間はうなずき、しばらく考えてからためらいがちに口を開いた。「隼人坊ちゃんには、今まで黙っていたんですが、実は、わが社には、警備とは違う仕事がありまして」
    そう佐久間は話を始めた。

    知らない話だったが、半分は驚いたものの、もう半分はすぐに理解できた。
    大内警備のここ数年の売り上げを整理していたら、知らない取引先がたまにでてきたのだ。請求書はでていて、入金もある。だが、業務の具体的な内容ははっきりしなかった。請求金額は数百万円のものもあれば、数十万円のものもあった。なにをしていたのだろうか、と思ったが、忙しいこともあり追求は後回しにしていたのだ。
    「隼人坊ちゃんが社長になったので、もう、こういった仕事は断ろうかとも思ったのですが、会社が赤字であれば断るのは坊ちゃんにお伺いを立ててからにしようと思いました」
    「どんな仕事ですか?」金になるなら多少まずくても仕事は欲しい。

    佐久間の話はこうだ。
    中年夫婦が脱サラして郊外の都市で店を持った。酒屋兼立ち飲みバーだ。二階には住居がある。
    店を紹介し、世話を焼いてくれていた男がいる。店をオープンした後も、客を連れきてくれたり、親切にしてくれた。
    ところが、しばらくしてその男が、昼の立ち飲みスペースが開いている時間に、仲間と商談したいがいいか、と言ってきた。
    最初はもちろんと貸した。
    だが、それは頻繁になり、やがては、常時男が店にいるようになる。人相の悪い男たちもいる。
    普通の客の足は遠のく。
    勇気を出して場所を変えてほしいというと、急に切れてきた。今まで世話してやった恩を忘れたのか。
    追い出したら店をつぶす。危ない目にあっても知らないぞ、と、散々脅された。
    結局、店を乗っ取られたのだ。
    怖くて二階に住むこともできなくなり、中年夫婦は今は親戚の家に身を寄せている。
    後の仕返しが恐ろしいため、警察のところに行くこともできない。
    「今回の仕事は、男たちの正体と目的を確認して、犯罪の確たる証拠を手に入れることです」
    「正体って、ヤクザじゃないんですか?」乏しい知識の中で隼人は聞いた。
    「まあ、そのたぐいと思いますがね」
    「危なそうな仕事みたいですけど、うちでできますか?」
    誰ができるんだろうか、と警備員の仕事をしている真面目だが融通がきかない社員たちの顔を思い浮かべる。
    まさか、佐久間さんが自分でするとかいいださないだろうな。
    「今回のは難しい仕事ですから、外注を使います」
    「外注さん?」
    「はい。昔からの付き合いの間島探偵事務所というところに依頼します」
    「探偵事務所ですか」意外な展開だった。
    「有能な人材が多くいる事務所ですよ」
    「うちは、何をするんですか?」
    「仕事の進捗の管理や、情報が入ってきたら私がクライアントに伝えます。情報の信憑性も確認します」
    「クライアントは店を乗っ取られたご夫婦ですか?」
    佐久間は首を横に振った。
    「私の知り合いの団体です。NPO法人で、今回のご夫婦のように困っている方を助ける活動をしているんです。もちろん、費用はきちんともらいます」
    「そうですか」
    帳簿をみて怪しい取引かなと思っていたのだが、そうではなかったようだ。
    「しかし、外注先って言っても、費用がそれなりにかかりそうですね」
    「まあ、そうですが、間島さんのところは、相場より安く引き受けてくれますよ。長年の付き合いですからね。相場の8掛けくらいで」

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    作者紹介

    • ぶどうのあき
    • 作品投稿数:37  累計獲得星数:498
    • 葡萄は好きな果物です。葡萄っていう文字も好きです。葡萄から作るお酒も好きですが、レーズンは苦手です。
      読んでくださっている方、ホシくださる方ありがとうございます!
      自分で描いて画像をいれました。もちろん、ブドウですとも。

      ブログはじめました。
    • 関連URL
      ぶどうのあきブログ:http://budonoaki.hatenablog.com/

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