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シリーズ:最終防御壁
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最終防御壁

作者:ツヨシ

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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    私は進む。最終防御壁を超えるために。


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    最終防御壁 1751文字

     

    「どうぞこちらです」

    受付を済ますと、奥に通された。

    その小さな扉を開けると、かなり広い部屋があった。

    淡い白の壁。

    木の香りが漂ってきそうなフローリングの床。

    いくつもある棚には色とりどりの花が活けてある。

    部屋の中央には落ち着いた色の大きなソファーがあり、そこに二人の女性が座っていた。

    一人は中年で、もう一人は若い女だった。

    二人の表情からは、穏やかさと癒ししか感じ取れなかった。

    それも完璧なまでに。

    選りすぐりの二人なのだろう。

    当然といえば当然なのだが。

    「こちらにお座りください」

    中年の女性が言った。

    耳に心地よく響く声だった。

    私は二人の前に座った。

    「お話、お聞かせ願えますか」

    もちろんだ。

    ここをクリアしなければ、先には進めない。

    私は話し始めた。


    長く続いた。

    基本的には二人とも聞き役だが、それでもいくつかの質問をし、意見を言ってきた。

    中年の女性が中心となって話は進んだが、ここぞと言うときに若い女が口をはさんでくる。

    それも絶妙のタイミングで。

    さすが全国から厳選された二人だ。

    私は軽く感動を覚えたほどだ。

    もちろんそんなことで引き下がる私ではない。

    最初は私がほとんどしゃべっていたが、私の話がつき始めたころから、二人が話す時間が増えていった。

    内容はもちろん説得である。

    私がこの先に進むことのないようにと。

    思いとどまるようにと。

    二人からは仕事でやっているという印象を全く受けなかった。

    本気で真剣に、私がここから引き返すことを望んでいるように思えた。

    おそらくそれは本心なのだろう。

    会ったばかりの赤の他人のために、本気になれ真剣になれるような人材を選んでいるのだ。

    少しばかり彼女たちが気の毒に思えてきたが、そんなことで進むのをやめようとは露ほども思わなかった。


    いくつかの短い休憩を挟み、話し合いは九時間にもおよんだ。

    「そうですか。仕方がありません。ここまで言ってもあなたの決意が揺るがないと言うのであれば、私たちはあなたの意志を尊重します」

    二人はついに折れた。

    ともに悲しそうな顔をしていた。

    二人は、最後の最後まで私をこの先に行かせまいという想いに満ち溢れていた。

    さすが最終防御壁と呼ばれるだけのことはある。

    素晴らしい女性たちだ。

    中年女性がテーブルの上にあるスイッチを押すと、先ほど私をこの部屋に案内した男が入ってきた。

    「こちらです」

    二人と違い、徹底した事務口調だった。

    これはこれで、そういう人間を使っているのだろう。


    廊下をしばらく歩いた先に、それはあった。

    中には小さなテーブルと簡易ベッドだけ。

    テーブルの上には水の入ったコップと、二錠の薬。

    私にはそれは、風邪薬に見えた。

    まあ、錠剤なんてどれも似たようなものではあるが。

    「それを飲んでベッドに横になってください」

    男はそう言うと、そのまま出て行った。

    私は言われたとおりにした。

    目的を達成したのだ。

    私はまもなく死ぬだろう。

    数年前、周辺の国で戦争が勃発した。

    加えて後から参戦した国もいくつかあり、直接戦争をしたわけではない我が国が、それにより大きなダメージを受けた。

    貿易、経済、食料事情が混乱を極め、国民の多くが今日の食事にも不自由するようになった。

    その結果として、犯罪と自殺者の数が爆発的に増えたのだ。

    あちこちで毎日たくさんの人が死ぬ。

    その死体の処理に追われるようになった国は、一つの政策を打ち出した。

    つまり死にたい人は、国の許可なく勝手にその辺で死ぬのではなく、国が指定した場所で死になさい、と。

    そうすれば、死体の処理やその他もろもろのことが、人手もかからずスムーズになるという理由で。

    もちろんそれに反対する意見もあったが、疲れきった国民の声が大きくなることはなかった。

    しかし、死にたいと言う人にそのまま「はい、どうぞ」と言うのは、政府としては政治的にも人道的にも問題がある、と国は判断した。

    もちろん死体の数も少ないほうが、より効率的かつ経済的である。

    そこで最終防御壁が設置された。

    あの二人の女性だ。

    自殺志願者を説得し、思いとどまらせるのだ。

    そこを突破した者だけが、はれて国のお墨付きで自殺することが出来る。

    私は突破したのだ。


    なんだか眠くなってきた。

    薬が効いてきたのだ。

    私はこのまま眠り、そして二度と目覚めることはないだろう。

    それでいいのだ。

    私はそのためにここに来たのだから。


           終

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    作者紹介

    • ツヨシ
    • 作品投稿数:73  累計獲得星数:
    • 小説、映画、音楽、マンガが好きな、完全無欠、正真正銘、天下無敵のインドア派です。
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