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シリーズ:疫病神と秘密

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  • 疫病神の発熱

    作者:ひせみ綾

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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    疫病神の発熱 9333文字

     

    ■Act3.Side A  SYOHICHIRO

     具合悪い。頭がくらくらする。背中が寒い。なんで俺、こんな状態なのに家で寝てないんだろう。
     水上のせいだ。あいつが、新しいブルーレイ買ったから遊びに来て欲しい、なんて間抜けな内容のメールを昨日、寄越したからだ。
     症状は既に出ていた。喉が痛むし、熱っぽいし、背骨が軋む。誰に教わらなくても自覚出来る風邪の初期症状。だから、行けないって断ればよかった。そうレスしようと思った。なのに、途端に水上の顔、俺を見つめる、従順で辛抱強い犬っころみたいなあの熱い目が頭を掠めて、つい、気が向いたらな、なんてレス送っちまったんだ。ハッキリ行かない、って言わなかった以上、熱が引かなくても俺は水上のところへ行くんだろうな、って、自分でもう分かっていた。

     ことの発端は、あの女だ。
     名前は巳死化、あ、違った、未紫華。アメリカ帰りのハチャメチャ台風ギャル。水上は、俺からあっさり乗り換えやがったのかってくらいその女に夢中で、登下校でも部活中でも所かまわずこれ見よがしにいちゃいちゃベタベタして、俺は何がなんだか分からなくて一人でパニくっていた。
     結局、未紫華は、水上の彼女などではなく、幼い頃に別れた実の姉貴だという死ぬほど詰まらんオチだったが、そのクソ詰まらない結末に翻弄された俺の立場はどうしてくれるんだ。おまけに未紫華も水上も、ハルカを幸せにしてね、だの、嫉妬して欲しかっただの、姉弟揃って意味不明な台詞を吐きやがって、ますますワケが分からない。
     おまけにだ。未紫華め、大人しくアメリカに帰国したかと思いきや、いきなり俺の自宅に国際電話を架けてきた、しかもあろうことか、コレクトコールでだ。信じられるか?俺は大概のことでは驚かない強心臓が秘かな自慢だったのだが、未紫華の行動には度肝を抜かれっ放しだ。
    「ハロー、関。アタシよ、分かる?」
     分かるも何も、コレクトコールなんだからオペレーターがおまえの名前を告げてるよ。っていうか、拒否ってやれば良かった。クソ。しかも、ほんの数日しか日本に、というより学校に在籍していなかったというのに、いつの間に俺の家電の番号なんか調べたんだ。早業過ぎだろ。
    「あんたにどうしても伝えておかなきゃって思って。ハルカの誕生日と好きなもの。ああ、アタシってなんていいお姉さんなのかしら」
     俺は既に学習していた。未紫華を敵に回して勝ち目はない、竹槍で戦闘機に立ち向かうほうが、まだしも勝算がありそうだ。カンザスの農民のように、マシンガントークというトルネードが過ぎるのをじっと耐えて待つしか術はない。
     そんなわけで、俺のほうから訊ねたわけでもないのに、記憶に刷り込まれてしまった。水上の誕生日が一月であること、そして水上がプレゼントされて喜ぶものとは。
     って、テディベアかウサちゃん、なんて本気か、それ。
     冗談だろ。高校生にもなって、しかも男が、縫いぐるみなんか貰って喜ぶってのか?いや、縫いぐるみという単語は俺の聞き違いで、北海道土産の木彫りの熊(鮭咥えたヤツな)をコレクションしてるとか、剥製の兎が好きって話じゃないだろうな。縫いぐるみで合ってるよな。
     いや、待てよ。これは罠かも知れない。俺が真に受けてデパートの玩具売り場で熊やら兎やらの縫いぐるみを買っているところを盗撮しインスタにあげて笑い者にしようってハラか。未紫華ならそのくらいのことをやらかしても不思議はない。
     まあ、その辺のことは置いておくとして。
     誕生日が一月ってことは、逆算すれば十二月末頃にはプレゼントを用意しなければならないってことで。クリスマス商戦真っ只中の十二月の玩具売り場なんて、想像もつかない。こまいガキを連れた若い親に混ざって、俺が縫いぐるみの熊か兎を抱えてレジに並ぶなんて幾ら何でも有り得ない。絶対、リボンを手にした厚化粧のデパガに作り笑いで「彼女さんにですね」なんて言われるに決まってる。口に出してハッキリ言われるならまだしも、彼女にプレゼントしてお返しにヤラせて貰うつもりなんでしょ、このエロ高校生めが、なんて胸中で呟かれニヤつかれる、そんな屈辱を受けるくらいなら、俺は舌噛んで死ぬ。被害妄想?自意識過剰?なんと思われたっていい、とにかく、嫌なものは嫌なんだ。
     だから、ゲーセンのクレーンゲームにした。正直、普通にデパートで買うより倍くらいのカネが掛かった。俺も半ば意地になってたと思う。半日くらいねばってたんじゃないだろうか。最後は、地蔵のように固まって熊の縫いぐるみだけを狙い続ける俺を見かねてか、或いは余程目障りだったのか、何処からか近づいて来たオッサン店員が無言でケースの鍵を開け、タグがクレーンのアームに引っ掛かりやすい位置に縫いぐるみを移動してくれた。その気遣いは有り難いが、もうこの際、普通に販売してくれ。
     それからさらに数時間を費やし、ようやく白い熊を一体、釣りあげることに成功したときには、俺は体力も精神力も使い果たしていた。なんでこの俺が水上のためなんかにここまで必死にならなきゃなんねんだ、と、自分でも疑問だった。
     いや。未紫華の言葉に従う義理なんてなかったんだけど。でも、誕生日を知ってしまったからには、スルーはなしだろ。それに、口惜しいけど認めない訳にはいかなかった。なんていうか未紫華には、やることなすこと破天荒で無茶苦茶なのだが敢えてその無茶振りに乗ってみたい、なんだか面白そうって思わせる妙なカリスマ性みたいなものが備わっている。ある意味、途方もない大物なのかもな。未紫華が将来、女性初の、しかも極東の小国出身のアメリカ大統領になったとしても俺は驚かない。あの女なら米軍どころか自衛隊だって動かせそうだもんな。
     そうこうしているうちに年が明け、ゲーセン出身の熊にはラッピングを施しリボンを着せて、いつ水上の元へ送りつけてやろうかと算段していたところに、ヒトの気も知らないような呑気な誘いのメールが来たのだ。
     例え少々の熱があったって、ここは行くべきだろう。さもないと、ゲーセンで費やした俺の半日と九千円というカネ(俺に取っちゃ大金だ!)が無駄になる。
     というわけで、電車を乗り継いでやって来た、水上邸の門の前。
     家を出るときは、なんとか平気だと思っていたのに、かなりキツい。今朝起きてから、一度も熱は計らなかった。体温計を手に取ってしまうと、それだけで熱が上がる気がするんだよな。でも、ちゃんと計っておいたほうがよかったかも、と今更ながら思った。
     てか、俺、マジ、ゾンビ。
     ゾンビっていいなあ。なんか楽しそうだよなあ。いつも集団で、手をだらーんて広げてワラワラワラ〜って。て、んん、俺、何考えてんだろう。水上、とっととドア開けろよ。て、あれ。呼び鈴鳴らすのを忘れていた。
     指先を延ばして呼び鈴に触れると、程なく水上が家から転がり出て来た。そんな息せき切って走って来なくてもいいのに。
    「さみーだろうが。いつまで待たせんだよ。とっと家に上がらせろ」
     や、水上は俺を待たせてないけど。でも俺はゾンビ状態で絶賛思考回路停止中だから仕方ナイ。

     水上悠(みなかみ・はるか)とは、高校に入学してから知り合った。だからそんなに長い付き合いってわけじゃない。最初からおかしなヤツだなって思っていた。
     180?を超える長身でガタイが良くて、顔もそこそこイケメン。いまどきの高校生らしくもなく短く切り揃えられた黒髪が真面目と健全さを主張しているというか、私立のお坊ちゃん学校や企業のパンフレットの表紙に載っていそうな、笑顔の口許から零れ落ちる真っ白い歯にキラーンなんて効果音が聞こえてきそうな、もう、パッと見から爽やかな好青年。
     実際、水上はボンボンだった。確か両親は父母共に代々弁護士だか医者の家系だって誰かが言っているのを小耳に挟んだ。住んでいる家はモチロン都心の高級住宅街。本人もそんな出自を裏切らない優等生で、いつも穏やかな物腰、争い事は、口喧嘩でさえ苦手。生まれついての貴種、というのはこういうヤツのことなのだろう。そのくせ、出自の良さを鼻にかけることなんて一度も無い。気分にムラが無く、誰に対しても心が開けていて接し方が公平で、年代や男女の関係なく、何処に行っても誰にでも好かれ、ナチュラルに受け容れられるヤツ。

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    コメント

    • お久しぶりです。
      ゴールデンウィーク最終日、目にとびこんできた疫病神を拝読。

      しあわせな気持ちになりました。
      やはりひせみ作品はすごいです。
      • 1 fav
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    • わあ、ろくさん、遊びに来てくださって有難うございます( *´艸`)エヘ 
      全然BLになっていないヘンなゾンビ話なのに、しあわせな気持ちになった、と身に余るお言葉を頂戴し、ただただ恐縮でございます。
      GWはどこかに行かれましたか? オイラは遊び倒すつもり満々だったのですが、己れの体力梨を失念しており、ほぼ計画倒れに終わりました~(ノД`)・゜・。ムネン
      • 1 fav

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    • 何と言っても登場人物たちの目線の瑞々しさとハートの熱さがピカピカ光っているのです。
      殊にひせみ作品の主人公に共通する揺れ動きながらも男の意地とか気合が根底にある、そういう男子たるものの純情に心震わせられるのだと気づかされました!
      (おそらく作者ひせみさんの男前度にも比例しているはず)

      連休中は唯一、草間彌生展へ。パワフルでございました∞
      • 1 fav

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    • 勉強不足のオイラ、草間彌生さんを存じ上げなくて、ググりました。なんと88歳で現役アーティストΣ(゚Д゚)スゴイ これはオイラも行かねば!!と思ったのですが、六本木かあ。。。遠いなあ。出不精のオイラには無理目でした。でも来月からのレオナルドxミケランジェロ展(三菱一号館美術館)は観に行くつもりです( *´艸`) 
      ええ(*_*) 梨がオトコマエだなんてとんでもないです。体力・気力・財力・人脈一切合切梨のただのヘタレ果実なので実物を知られたらドン引きされそう(汗)。
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    作者紹介

    • ひせみ綾
    • 作品投稿数:83  累計獲得星数:1021
    • ▲自己紹介▲
      梨と申します。小説っぽい駄文やイラストっぽい落書きを投下したりします。両親は普通の梨の木、芋虫とのハイブリッドの弟はいません。


      ◆成分の8割強が、熱血バトル少年漫画で構成されています。あとの1割弱が、梨です。

      ◆フォローの際は、どこのページからでも構いませんので、コメント欄で一声かけて頂けると嬉しいです。まったく知らないヒトからの無言フォローは、ほんのりイヤ(^_^;)

      また、一定期間(半年以上)交流のないフォローさんはリムする場合があります。悪しからずご了承ください。


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