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シリーズ:疫病神と秘密
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疫病神

作者:ひせみ綾

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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    いつも怒っている不機嫌な美形王子様@関と、そんな関にゾッコンなイケメンワンコ@水上のほのぼの(?)擦れ違いラブ。A面(関サイド)とB面(水上サイド)と交互に展開されます。時系列が分かり辛くなったためシリーズにまとめました。※前掲載時に頂いた感想・コメントは全て大事に保存してあります。足跡残してくださった皆さま、その節は有難うございました!!


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    疫病神 2974文字

     

    ■Act1.Side A  SEKI

     今日もバスは定刻に来ない。既に5分20秒遅れている。
    「俺、白坂と別れた」
     腕時計に視線を据えたまま、俺は呟いた。ぼそりと、独り言みたいに。
     俺の隣に立つ長身の男、水上は、無反応。というより、破局した恋愛ネタなど、聞こえない振りをするのが気遣いや礼儀だと思い込んでいる人種だ。でも、これは想定内。
    「なに?ノーコメ?」
     俺よりも人差し指一本分、目線が高いクラスメイトを、わざと斜めに見上げる。拗ねちゃうぞ、アピール。
     水上が俺に向けたのは、途方に暮れた表情。今にも泣き出しそうな幼い子供みたいな。そうそう、そういう顔が見たかったんだよ。水上は、何か言いかけ口篭り、また口を開きかけて、慌てて閉じる、という動作を3回繰り返した。
     俺は、水上の動きを頭の中で反芻しながら、その意味を考える。名探偵か熟練のメンタリストみたいに。
     またか、と言いたいのか。
     俺が、交際していた女子と別れるのは、今年に入ってから二人目だ。去年は、三人と付き合って、それもあっという間にサヨナラ。誰とも、三ヶ月も持たない。その度に、回覧板回すみたいにシレっと水上に報告していたから、いい加減に聞き飽きて、或いは呆れ返っているのかもしれない。
     それとも、気の毒に、と言いたかったのか。
     こう言っちゃなんだが、一時的にでも俺の彼女だった娘たちは、校内でも十指に入るカワイ子ちゃん揃いで、俺にコクってきたのも全員、相手の側から。なのに、全からく、短いタームで俺がフラレているのだから、傍からすれば、余程、女運が悪いように見えるだろう。女運がどうというより、偏(ひとえ)に、俺の性格が捻じ曲がっている所為だ、などと陰で噂されているのも知っている。もっとも、そんなのは、100年経っても女に相手にされそうもないキモオタやブサメンどものやっかみだ。俺は気になどしていないが、その辺のこともひっくるめて、水上は俺に同情しているのか。
     それとも。
    「いい気味、って言ったっていいんだぜ」
     わざと自嘲気味に吐き捨てると、さらに困った顔をした。
    「そんなこと」
     そんなこと、あんなこと。どんなこと?
    「考えてないよ、関。ただ、白坂って、一年のときから同じ委員会で、真面目で大人しそうなコだから、今度こそ関とうまくいくと思ってたんだ。っていうか、うまくいくといいな、って願ってた。だから、別れたって聞いて、ただビックリしてるだけ」
     いい気味、って考えりゃいいんだよ。だって、半年も白坂に片想いしてたの、おまえだろ?俺がそれを横から奪ったのに。
    「ねえ、関。言いたくなかったら答えなくていいんだけど、白坂って、見た目と違って性格良くなかったの?」
     白坂以外でもさ、関のことアッサリ捨てる女子って、俺、意味分かんない。なんで関の良さが伝わらないのかな。俺、人間不信、ていうか、女性不信になりそうだよ。
    「どうだったの、関?」
     答えなくていい、と言う割には、グイグイくるじゃないか、水上。
    「うん、まあ」
     俺は、曖昧な言葉を返す。
    「性格悪かった、とは言わないけど、確かに見た目とは若干違ってたな」
     そう、可愛くて、単に可愛いだけで頭の回転が鈍そうな見た目と違って、なかなか鋭かった。まあ、そんなことは口には出さないが。
     そうかあ。水上は小さな溜め息を一つつき、それきり黙り込む。
     こいつは、こういうところが詰まらない。
     なんで、いい気味、ザマミロって思わないんだ。半年間、見つめるだけで口もきけなかったんだろ。俺はそいつを三日で落としたんだ。白坂のほうからコクらせたんだ。なのに、悔しがりもしないで。今度こそうまくいくといいと願ってた、ってなんなんだよ。
     きっかり7分45秒遅れて、バスが到着した。
     俺は押し黙ったまま、水上を小突いて促し、自分もバスに乗り込む。
     水上、ホントに詰まらないヤツ。
     背が高くて、ガッシリしていて、顔だってそんなに悪くなくて。上背はそこそこだけど痩せっぽちの俺なんかより遥かにガタイに恵まれ、運動神経も抜群なのに、バスケでもサッカーでも、勝負に勝って喜ぶより先に、負かした相手に対して申し訳ないと思ってしまうようなヤツ。だから勝負師にはなれない。勝利者にはなれない。おまけに奥手過ぎて、人一倍惚れっぽいくせに女子とは口もきけなくて、十七年間の人生がそのまま彼女いない歴だっていうダサいヤツ。
    「関。あのさ」
     しばらく無言で思案気な顔をしていると思ったら、何かのスイッチでも切り替わったみたいに、水上は突然、俺に詰め寄った。まさに、胸座でも掴むような勢いで。次が自分が降りる停留所だというのに、降車ボタンを押すことも忘れている。
    「白坂とのことは災難だったと思うけど、おまえ、イケメンだし、頭いいし、モテるんだからさ。次の相手とは、絶対にうまくいくよ。関の良さは、俺が保証するし」
     いきなり俺の頭に手を置いた。かと思うと、ごつい指が、俺の髪をくしゃくしゃっと掻き回す。
    「てか、バカ、何やってんだよ。おまえ、降りるバス亭、過ぎちまっただろうが」
     水上の手を乱暴に振り払って低く唸ると、俺の顔を覗き込んで、笑った。
    「俺、今日は、関と一緒に居るよ」
    「はあ?いらねえよ」
    「無理すんなって。彼女と別れて落ち込んでる親友、放っておけない」
     ほんっとうに詰まらないヤツ。
     小柄で愛嬌があってちょっと可愛い女子なら、誰にでもすぐに惚れちまう節操のないヤツ。この一年半というもの、俺がこいつの仄かな青臭い夢想をいちいち潰して回っていたことにも気づかない、鈍感極まりないヤツ。
     おまえに比べたら、白坂はまだ頭が回ってたぜ。
     白坂以外の女は、意外と簡単だったな。ちょっと髪型や持ち物を褒めてやれば、あっと言う間に落ちた。そして、デートの約束を数回すっぽかせば、同じくらいあっと言う間に破局が訪れた。俺の目論見通りに。白坂だけは違った。
     初めてキスした放課後。白坂は、潤んだ目で俺を見上げ、言ったんだ。
     私は、誰の代わりなの?って。
     それから、視線を窓の外に、校庭で遊びみたいなサッカーに興じているバカどもの群れに投げた。
     見てくれが可愛いだけのバカ女だと思ってた。そんなに鋭いとは思ってもみなかった。白坂の視線の先には、アホみたいに笑ってるゴールキーパーの水上がいた。
     だから、俺は言ってやった。
     そんなふうに思うんだったら、もう付き合えない、って。
     白坂は、一瞬、怯んだように見えた。唇を噛んで、たった一言だけを絞り出した。分かった、って。それから、ごめんね、って。いや、ごめん、と言ったのは俺のほうだったか。
    「なんか、アクション物とかさ、気分が晴れるようなDVD借りていこう。それから、コンビニで飲み物と食い物買ってさ。あ、心配しなくていいから。俺が全部奢るから」
     お人好しの能天気。何も知らないのは、水上、おまえだけなんだよ。
    「ふうん。じゃあ、遠慮なくゴチになるかな」
     満面の笑みで、水上が言う。
    「おう、任せとけ。でもさ、関。近い将来、俺に彼女が出来たら、お祝いってことで倍返ししてくれよ」
    「彼女が出来ても、速攻フラれても、3倍返ししてやるよ」
     出来るだけ明るい声で返す。喉から奔り出そうなセリフを、必死で押しとどめながら。
     なんで気づかないんだよ、水上。
     俺がそばに居る限り、おまえに彼女なんか出来っこないよ。俺が全て邪魔して、打ち壊すから。
     俺は、おまえの疫病神だよ。

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    作者紹介

    • ひせみ綾
    • 作品投稿数:83  累計獲得星数:1021
    • ▲自己紹介▲
      梨と申します。小説っぽい駄文やイラストっぽい落書きを投下したりします。両親は普通の梨の木、芋虫とのハイブリッドの弟はいません。


      ◆成分の8割強が、熱血バトル少年漫画で構成されています。あとの1割弱が、梨です。

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