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シリーズ:チョコレート先生
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チョコレート先生

作者:ろく

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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    笑わせるな。


    登録ユーザー星:1 だれでも星:0 閲覧数:144

    チョコレート先生 975文字

     




     するどい牙があろうがなかろうが、どんなかたいものにでも噛みつくことを怖れてはならない。

     ゴツゴツした岩のような恥知らずの心臓にだって、カチコチに凍った氷のような石頭の脳ミソにだって、ためらわず歯を立て噛み砕いてみせろ。

     顎がはずれようが、歯茎が裂けようが、ガコンガコンと咀嚼して血まみれの唾液ごとごっくんと飲み込め。

     いいか、すべてその身に取り込んで、血と肉と骨にしてしまうんだよ。


     これは全部あなたの教えであり、口癖。
     その思いは変わっていないし、いまもずっと信じていると――

     すばらしい。
     素敵です。
     僕はそんなあなたに心酔していた。


     なのに、このザマ。
     いまの先生は僕の手の中で握りつぶされたチョコレートみたいだ。


     包装紙を剥ぎ取られるようにくるりと裸にむかれ、パキンと割られた板チョコみたいに身体をふたつに折り曲げられ、あっというまに僕のてのひらの熱であたためられやわらかくなり、そう、すっかり蕩けてぐにゃぐにゃになる。

     つまんで放り込まれた僕の口の中の灼熱にたちまち溶かされつつ舌に嬲られ、転がされ、絡めとられてはぐずぐずの小さなカケラになっていく先生、あなたは。


     思ってもみなかったのだろう。
     その身こそが食われる羽目になろうとは。

     知らなかったでしょう。
     僕があなたをどんな目で見ていたのかなんて。
     何気ない視線や仕草ひとつひとつに、どれだけ心揺らされてきたか。
     そのたちのぼるような香りに何度生唾をのみこんできたか、とか。
     気づきもしなかったはず。気づかれないようにしていたから。

     そうだよ。
     淫靡な暗がりにうごめく虫けらどもにたかられ、恍惚の態を晒していたのが先生。あなただと知るあの夜まではね。 


     おいしい。もっと欲しい。
     足りないよ、先生…もっと。


     はじめて味わう美酒にも似たとろりとした濃さ、深さ。
     そう、中毒みたいにあとをひく。一度試したら癖になる。
     肉に食らいつく餓鬼のような僕が、あなたの目には今どう映っているだろうか?


    「ちゃんと味わって…食べなさ、い。」


     ブラックボックスをひっくり返し、ひたすら貪る僕の無節操な食欲に満ち満ちた部屋の中。
     絶望か恍惚か、最後の矜持とやらか。憐れみさえにじませた微笑と、無意味な最期のうわ言が虚しく宙に浮いては消えていく。


     笑わせるな。

     あんなトロットロの体して、檄甘だったくせに。
     後味はほろ苦さの極みって、どういうことだよ。

     ――ええ?



     笑わせるな。



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    コメント

    作者紹介

    • ろく
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