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シリーズ:LunaticGate ~Sword of Glory~ #1
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LunaticGate ~Sword of Glory~ #1

作者:神楼

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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    とりあえず1話分(?)まで公開。まだまだ表現の模索中。


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    LunaticGate ~Sword of Glory~ #1 8532文字

     

       #1 聖夜

       此処に居ること、此処に在ること
       これ以上の幸福はなく
       だから失うことを恐れる

    国立騎士養成学校・ユグドラシル学院は、広大な土地に設けられた一都市に匹敵する学院だ。
    聖教騎士を目指す学院生たちは、幼少期に入学してから卒業するまでの十数年を、この学院の敷地内で暮らすことになる。
    ある者は剣術の鍛錬に励み、またある者は魔法を極めんとし、各々の戦における意味を追求していく。
    卒業までの生活がこの学院になるとは言え、外出を禁じられているわけではなく、学院規則はそこまで厳しいわけでもない。
    また、都市と見まがうほどの大きさから、校舎以外にも学生寮、リゾート施設、飲食店や呉服店などと言ったように衣食住に困ることはないよう、様々なものが用意されている。
    聖教騎士団本部は戦における本陣であるとされ、学院の敷地内には無く大陸の東端に位置している。
    ユグドラシル学院の敷地までは、徒歩でさほどの距離も無いが、敷地内に入ってからの道のりが長い。
    関所をパスするとそこから馬車を借りることができる。
    馬車に揺られることしばし、聖夜、ベークナルド、オラシオの三人は学院の門扉の前で馬車を停め、降りた。
    「いやはや、ずっと座ってると尻が痛くてかなわねえや」
    肩を回したり首を回したりと、忙しない様子のベークナルドが開口一番にそんなことを口走る。
    「ベークナルドは筋肉ばかりで身体が重いからじゃないですか」
    メガネを指で押しあげながらオラシオが続く。
    普段からこんな調子の二人だ。両名はこれでも聖夜の守護を任されている副団長である。度々教会の面々からは「まったくそう見えない」などと言われたりもしているが、実力は折り紙付きだ。
    久しぶりに訪れる母校を前にして、聖夜は懐かしい記憶を思い起こす。
    必死になって訓練を続けた日々。血の滲む努力をして身に付けた剣術と魔法。
    聖夜はそこではたと気づき、
    「と、何やら騒がしいようですね」
    門の向こう側が、ざわざわとやけに騒がしい。相当数の人数の気配があるようだ。
    「何ごとでしょうか?」
    オラシオも首をひねっているが、その横でベークナルドが頭をかきながらやたらと納得した顔で言う。
    「あー、あー……学院側に俺たちが訪問すること伝わってるだろ。関所通った時に連絡取ってたみたいだしな」
    「なるほど、それなら納得」
    ベークナルドの言葉の意味を察したオラシオも、溜息交じりに頷いた。
    「二人とも、何を疲れた顔をしているんですか? 理事長を待たせるわけにはいきません、入りますよ」
    「団長、ちょっと待っ――」
    正門を開こうとする聖夜をベークナルドが制止しようとしたようだが、門が開く方が少しばかり早かった。
    次の瞬間、聖夜たちの正面から押し寄せてきたのは、黄色い歓声の嵐だった。
    「キャーッ!! 聖夜様ー!!」
    「聖夜様ぁ〜!!」
    正門から校舎へ通じる道の両脇、柵にロープが張られて区切られており、学院の生徒たちが所狭しとロープの外側でひしめき合っていた。前のほうは女子生徒率が高いのは言うまでもない。
    ロープを境に道側、数名の教員がロープを超えそうになる生徒を押し留めていた。
    「あちゃ〜……だから俺は引き留めたのに」
    顔に手を当てて困った様子のベークナルド。
    学院生たちのテンションは、英雄の訪問ともあって最高潮だった。
    大歓声と歓喜に満ちた群衆を前に聖夜は、
    「凄い人だかりですね。学院祭にはまだ早かったと思いますが、今日は何かの催しものですか?」
    「団長、本気で言ってるなら相当な天然ですよ」
    オラシオが何か言っているが、聖夜には意味が分からなかった。
    悲鳴にも似た歓声をあげ、手を振ってくる生徒たちに笑顔で手を振り返しながら、聖夜は生徒たちによって両脇を固められた校舎までの道のりを歩いて行く。
    背後ではオラシオとベークナルドが、
    「数年ぶりの母校ですが、何というかさすがに恥ずかしいですね」
    「腹くくれオラシオ。いっそのこと英雄気分満喫して帰るのも悪くねえ」
    「それもそうですね。嬌声の全てが団長に向けられていると意識すると寂しくなるだけですが……」
    「せっかく気づかないふりしてたのに言うんじゃねえよ……」
    などと聖夜には理解できないやりとりをしていた。
    歓声が飛び交う人の壁も中ほどまで差し掛かったところだった。
    「――!」
    聖夜は唐突に歩みを止めて左手に視線を送る。
    視線が向く先は生徒たちの壁になっているその向こう側だ。
    人の陰になってよく見えないが、必死にジャンプしてこちらを一目見ようとしている頭が一つ見える。
    髪型と背丈からみて女生徒であることが伺える。
    「……? どうかしたんですかい団長?」
    訝しんでベークナルドが問うてくる。オラシオも聖夜にならって視線をそちらに向けていた。
    向こうからは見えていないだろうが、聖夜はジャンプを繰り返している女生徒の頭に笑顔を返す。
    「いえ、何でもありません。理事長がお待ちです、先を急ぎましょう」
    程なくして前に向き直った聖夜は、二人を連れて校舎へと向かった。

    第二校舎一階。扉には理事長室のプレートがかかっている。
    ここを訪れるのも何年ぶりだろうかと、感慨深い感情を覚えながら聖夜は扉をノックした。
    「はい、どうぞ」
    中から男性のゆっくりとした調子の声が返ってくる。
    扉を開いて部屋に入ると、聖夜たちが来るのを待っていたとばかり、奥にあるデスク前にその人物は立っていた。
    オールバックにした白髪に白ヒゲと、魔導ローブを纏った初老だが、背筋は曲がること無く真っ直ぐだ。
    シモンズ――彼はこのユグドラシル学院第十五代目の理事長になる。
    彼の英雄譚はさほど多くないが、現役時代は剣術、魔法共に優れた聖教騎士だったと聞く。
    実戦よりも教育指導に力を入れたいという本人の希望から、学院の教員となり今に至る。
    腰の後ろで両手を組み、こちらの入室を待っていた。
    「シモンズ理事長、お久しぶりです」
    久方ぶりに再会する学院理事長の前まで歩き、聖夜は笑顔でそう声をかけた。
    「おやおや、お待ちしていましたよ聖夜君。あなたの活躍ぶりは今や大陸中に届いています」
    柔和な笑顔とともに、まるで帰省した自分の息子にでも語り掛けるような声の調子で、シモンズが手を差し出しながら返して来た。
    聖夜も手を差し出し、長い握手を交わす。
    「恐縮です。理事長もお元気そうで何よりです」
    「はっはっはっ、あと二十年は続けるつもりでいます。ここで私の学院生たちの成長を見るのが唯一の楽しみでしてね」
    「まるで老後の盆栽弄りみてえですね」
    「こら……」
    などと背後でベークナルドが呟き、オラシオがその脇を肘でド突いた。
    「生徒たちにも活気がありますね。今年は特に期待できそうです」
    聖夜は理事長室の窓から臨める校庭に視線を向けて言った。
    「皆、君のような大英雄が来ると聞いて朝から興奮していたようですよ? 教員たちには口外しないよう通知しておいたはずなんですけどね、人の口に戸は立てられないものです」
    「それで理事長、今回の訪問の件なのですが」
    聖夜が口を開いて内ポケットから取り出した書類を手渡すと、シモンズは頷いた。
    「学院編入の申請でしたね。確かに受け取りましたよ。おやおや、そのキリエ君の姿が見えないようですが?」
    「申し訳ないのですが、当の本人は諸事情により不在です」
    聖夜の言葉にシモンズは、ふむ、と返して来た。聖夜は声のトーンを落として話を続ける。
    「それに関連しての話があります。いえ、順序が逆と言うべきでしょう」
    「おやおや、何かあったようですね」
    シモンズの問いかけに聖夜は頷き、
    「ひと月前の遠征で、美空くんが……殉教しました」
    「……! 美空くんが……そうでしたか」
    切り出した突然の訃報に、シモンズは肩を落としていた。予想していただけに、その様子を見るだけでも聖夜は胸が痛んだ。
    シモンズがゆっくりと口を開く。
    「彼女はとても優秀な生徒でした。生真面目で後輩からの信頼も厚かった」
    「美空くんとキリエは『契約』関係にありました。契約者がいなくなった今、キリエには新たな契約者が必要となります」
    話を急かしすぎているかな、と聖夜は考えたがシモンズはこちらの話に応じた。
    「……なるほど。しかし、それなら当学院の生徒よりも、聖教騎士会内で新たな契約者を探す方が適任では?」

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    作者紹介

    • 神楼
    • 作品投稿数:4  累計獲得星数:1
    • 本業が忙しくてもつらつらと時間見つけて執筆中
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