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シリーズ:キーボード物語
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キーボード物語

作者:ドナルドバーダック

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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    初BL、アマゾンのレビューです。


    登録ユーザー星:0 だれでも星:0 閲覧数:60

    キーボード物語 1617文字

     


    「おはよう」キーボードが言った。
     僕は照れながら「おはよう」と、打ち返す。

     一昨日、ヤマトのおじさんがやって来て、家に届けていった段ボール。中には、その二日前に注文した、パソコンのキーボードが入っていた。名前は「アーキス プログレスタッチ レトロ タイニー」チェリー赤軸採用のメカニカルキーボード。それから、僕らはずっと一緒だ。

    「ねぇ、タイニー。今日はどんな話をしようかな。昨日は海賊船の幽霊の話だったね。結局、船長は呪われたまま船を下りてしまったけれど、あれからオオダコが船を沈めてしまったから、ちょうどよかったね」
    「ちょっとまってよ、兄弟。それよりも……ねぇ、まだ御寿司、食べないのかい?」  
     ああ、そうだった。
    「ごめんごめん、ご飯、まだだったね」そう言って、僕はエクスプローラーを立ち上げて「寿司打」にアクセスした。画面に現れる単語を、次々とタイプしていく。

     saba ika tai ……  

     実はまだ、メカニカルの打ち味に慣れていない。だから、初心に戻ってタイピング道場に通っているのだ。赤軸の打ち味はとても柔らか。それまで使っていたメンブレンのキーボードとは雲泥の差だ。ちょっと浮気して、試しにメンブレンを打ってみたら、「指がグンニャリ」突き指するかと思った!
     すまない、メンブレン。今まで散々弄んでおきながら、その言い草は無いだろうと思う。でも、お別れだ。君とはもう、付き合えないよ。だって、僕の将来のことも考えてくれ。僕は君のせいでもう少しで腱鞘炎になるところだったんだぞ。いや、それは僕だってわかってる。つい、調子に乗って打ち過ぎた。自分のせいだってわかってる。でも、これからもっともっと打つ気でいるんだ。きみはもう、僕についてこれないだろう。お終いだ、サヨウナラ。今までありがとう。

     hirame suika purinn …… 
     会計 3420円
     
    「食った食った、うまかったなー。なぁ兄弟、今日は随分調子がいいじゃないか、どうしたんだい」
     ホントだ、今までで最高のスコアだった。なんとなく、昔を思い出しながら打ってたら、随分とスコアが伸びたみたいだ。
    「なぁ、おまえ今、メンブレンの事を考えてたんだろう?」タイニーが言った。
    「……」図星を突かれて言葉に詰まる。
     タイニーは答えを待って何も言わない。僕は答えた。
    「そうだよ。しょうがないだろ? まだ別れて間もないんだ。この間までずっと一緒だったんだぞ。そんなに簡単に忘れられないよ。おれ、不器用なんだよ」
     タイニーは目を閉じて、言った。
    「なぁ、俺の(F)と(J)、触ってみろよ」
    「なんだよ、いきなり、(F)と(J)なんて、いつも触ってるじゃないか」
    「いいから、触ってみろよ」僕は言われた通りに(F)と(J)に触れた。いつもと変わらない。でも、触るたびに思う。厚みがあって心地いい。そうだ、二人が初めて触れ合ったのも(F)と(J)。
    「どうなってる?」タイニーが訊く。
    「どうなってるってそりゃ、……いつもと一緒だよ。二色成型で、ツルッとして、それから下の方に出っ張りがあって…、そう、一緒だよ、一緒!」僕はそう答えた。他にどう答えろって言うの? カァとなって、赤面しちまう。
     タイニーはそんな僕の顔を見ながら、
    「メンブレンてやつ、そいつの(F)と(J)って、どうだったの? 俺みたいにツルッとしてたか? ちゃんと出っ張り感じたか?」
     僕は思い出した。メンブレンのその場所は、安っぽい無茶なレーザー印刷のせいでザラザラのボコボコ。出っ張りはあったけど、そのザラザラのせいでホームポジションをよく間違えるのだ。
    「……」
     僕はまた黙って、うつむいてしまった。タイニーは何も言わない。てっきりどっちがいいのか聞かれると思った。でも、それっきり何にも言わない。

    「キーーッ」
     部屋の外で、自転車のブレーキ音。もう、新聞が配達される時間だった。
     キーボードは相変わらずそこにあった。僕は(F)と(J)にふれて、今日「最初の一行目」をタイプした。
    「おはよう


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