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シリーズ:レイドリフト・ドラゴンメイド

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  • 第29話 恨みと走る どこまでも

    作者:リューガ

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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     大勢異世界に召喚すれば、帰れぬまま先立たれる事もあるんでしょう。
     そうすると、消えようのない恨みを抱える人もいるでしょう。
     
     そもそも、完璧な異世界召喚マニュアルみたいなものが、作れるんでしょうか?
     そういう不信感ばかりが湧き上る。



    第29話 恨みと走る どこまでも 6323文字

     

     大陸ヤンフスを構成した地殻変動による隆起。
     大陸を内と外に分断する、ベルム山脈。
     今見える山は、すべて標高3,000メートル級の富士山並み。
     それに、空から侵入した光の柱に触れる。
     それだけで。
    『山脈が! 消えていく! 』
     病室からの叫び声。
    『消すな! 中に俺たちがいるんだぞ! 』
     そして山脈だけではない。
    『ええっ!? 青空も消えていく!! 』

     スタジアムでは、すっかり夜のとばりに包まれた。
     あらかじめ設置してあった灯光器に明かりがともる。

     病室から続く困惑の叫び。
     ドラゴンメイドを恐れさせる数少ないもの。

    「落ち着きなさい。あれは量子コンピュータによって再現された量子世界。幻です」
     ワイバーンがそう言っても、阿鼻叫喚は収まらなかった。

     スタジアムから視線を天頂に向ければ、現実世界と量子世界を結ぶ穴、ポルタが見えた。
     現実世界から光の柱を下すのは、身長1200メートルの巨大ロボ、スーパーディスパイズ。
     スーパーディスパイズが手にしてかき回す柱は、レイドリフト・メタトロン。
     その姿は、おとぎ話の魔女が大なべをかき回すようにも似ていた。

     ワイバーンがドラゴンメイドの手を握る。
     彼女の震えが少し収まるのを確認して、説明を続ける。
    「これで、あなた達はこちらへ来れなくなりました」
     メタトロンが回されると、ポルタのふちが削り取られる。
     そのたびに現実世界の夜空が、醜い煙だらけの夜空が広がる。
    『……来れなくなった? どういう事? 』
     そう尋ねたのは工場長だ。

     敬語を使わないという事は、自尊心を回復したのだろうか。
     そう願いながら、ドラゴンメイドは自分が答えることにした。
    「……あの山脈に、量子世界への入り口がありました。その入り口はもうありません」
     複製のスタジアムからは、すっかり山脈も青空も消えてしまった。
     それでもメタトロンの柱は、少しずつ半径を縮めながら回転をつづける。
     今は街を分解しているはずだ。
    「代わりに、量子世界の中枢を現実世界へ強制的に持ってきたんです」

     今、2号の作った牢獄の中にはワシリーとウルジンがいる。
     足場も手すりもない空間でも、何とかバランスを保ち、上下さかさまになりながら、呆然と景色を見ていた。
     皆、同じ表情だ。

    「あれはレイドリフト・メタトロンが、量子世界にハッキングしているんだね」
     カーリタースが言った。
    「そのとうりです」
     1号が答えた。
     相変わらず、耳のヘッドセットヘッドホンに手を当て、スキーゴーグル状のディスプレーを注視しながら。
    「……超宇宙規模で演算する宇宙構造体・・・・・」
     好奇心に酔いしれたのだろう。
     カーリタースの顔が赤くなった。

     しばしの、静かな時間。
     その間にドラゴンメイドの量子コンピュータに電子メールが送られてきた。
     送り主は川田 明美。
     スーパーディスパイズの足もとでプレシャスウォーリアー・プロジェクトの車列を守っていた一人だ。
    「1号! いいですか?! 」

     ドラゴンメイドの声に。「どうぞ」

    「すぐ外にいた生徒会から、食料の提供を頼まれました。
     何でも、避難し遅れたチェ連国民がいるそうです」

     1号は一瞬考えた。
     そして、ディスプレーでは映っているキーボードをたたき、2言3言話して答えた。
    「施設部隊に、食料提供の余裕があります。
     しかし、応援の多国籍軍も向かってきていますので、あまり時間は取れませんよ」

     それでも、ドラゴンメイドは満足した。
    「大丈夫。物を運ぶのが得意な連中ですから」

     その時、スタジアムの観客席がハッキングされ、消え始めた。
     応援部隊との連絡口が開いた。
     スタジアム内のレイドリフトたちは、もともとその連絡口に合わせて駐車してあるので、スタジアムの反対側まで広々と道が開いている。
    「それでは、あちらの部隊に頼んでおきます」
     1号は新たな連絡口の左右にいる、大型コンテナトラックの一団を指差した。

     達美専用車の中から、新たな通信が聞こえた。
    『達美お嬢ちゃん、ちょっといいか? 』
     地下要塞の病室から、千田課長だ。
    「はい? なんでしょう」
     映像からは、まだ阿鼻叫喚地獄が映っているのではないかと、恐る恐る向かうドラゴンメイド。
     だが、けが人はおとなしくベッドに収まっていた。
     それでも中心に映る千田の表情には、手こずった様子が見える。
    『さっきから騒ぎを巻き起こしてるのは、それにロボットを動かして邪魔をしたのは、お前だな? 』
    「あちゃ。ばれてましたか」
     ドラゴンメイドは頭を下げた。
    『痛かったぞ。
     それより、怪我人たちの事だ。
     生きる目標を失っているみたいなんだ』
     千田の言うとうり、ベッドの上にあるのは自暴自棄になりすさんだ顔。あきらめて歯を食いしばる顔ばかりだ。
    『何か、彼らを喜ばせる物を知ら無いかな?
     そうすれば、もっと落ち着いて考えてくれると思うんだが』
     その問いに、ドラゴンメイドは即答することができた。
    「エピコスワイン! ここの地方でできる、最高級のワインですよ。
     場所は、そこから4階下の倉庫で、樽に入っています」

     となりにオウルロードがやって来た。
    「一緒に映画を見ていただくのはどうでしょう?
     {ダイヤモンドとマリア様}という映画なら、ランナフォンに入っています。
     そちらに向かわせましょうか? 」
     そのタイトルを聞いて、千田の顔がほころんだ。
    『イギリスのロマンス映画だな。それならいいだろう』

     ドラゴンメイドは、2人の行為を嬉しく思った。
     と同時に、自分のふがいなさに恥ずかしくなる。
     だが、何かをしたからと言って、望みどうりの結果が得られるとも思えなかった。
     
     その時、観客席に空いた入口から、地面を削る音が響いた。
     巨大な2台の建設機械がやってくる。
     2台とも、直径10メートルでドーム状の車体を持つ。
     それを支えるのは、車の底すべて動かす4束の無限軌道。

     先に入ってきた建機には、正面に長さ6メートルのドリル。
     料理部部長、ダッワーマ。
     今はスイッチアで覚えた岩盤突破車に擬態している。
     
     後の建機は直径7メートルある円形の刃を動かすエンジンカッターがついていた。
     スイッチアの森林突破車、その擬態。
     美術部部長、クライス。
     2人ともオルバイファスの元部下の、機械生命体だ。

     後にいる人だかりが、避難し遅れた人びとだろう。

     ダッワーマとクライスの車体には、人間用の輸送スペースがある。
     そこから車体上に出るハッチから生徒会の女子が顔を出した。
     黒い雨ガッパのフードをおろすと、黒髪をショートボブにした丸顔がみえた。
     メールをくれた、川田 明美だ。
     彼女のまわりの空間が、黄色い光で包まれている。
     彼女の能力、空気のほとんどを占める気体、窒素を操る影響だ。
     ゴムのようになった窒素が、明美の体をふわりと浮かべる。
     その後、ホバークラフトのように地面を滑って、ドラゴンメイドたちの方へやって来た。

    「あなたが、レイドリフト1号ですか? 」
     灯光器の光が、みずみずしい肌にはじかれる。
    「はい、そうです。あなたは? 」
     どう見ても10代。平均的日本人学生だ。
    「私は川田 明美といいます。体育祭実行委員会長です」
     その表情はこわばり、強い怒りが込められていた。
    「そこのチェ連人学生に、見せたいものがあるんです」

     一号は、一切私情をはさまない。
    「それはできませんね」
     そういった。当然だ。
    「彼らには、これから敵中枢への交渉をしていただきます。これから話し合わねばならないことがあるのです」

     明美の顔が悔しそうに歪んだ。
    「お願いします! 」

     その時、後ろの建機たちの所から、もう一人の少女がかけだした。
     サラミ・マフマルバフだ。2年A組学級委員長。
     赤くて長い布、ブルカで頭から肩まで覆っているので、すぐわかる。
     能力はシンプルな怪力。
     その脚力で100メートル近い距離を一瞬でやって来た。
    「彼女を責めないでください」
     ブルカの隙間から見える、茶色い髪。
     混血の多いアフガニスタン出身らしく、青い吊り目と白い肌で、おとなしそうに笑っている。
    「川田さんは、この星にいる間に、おじいさんを失っています」

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    コメント

    作者紹介

    • リューガ
    • 作品投稿数:35  累計獲得星数:2
    • ドラえもんやサザエさんなど、長寿漫画には強さがあると思います。
      たとえばサザエさんは、戦後間もないころの今よりもっと治安が悪い時代に連載が始まりました。
      喰うに困った帰還兵が泥棒になったり、そんな時代です。
      ある日内に波平さんが一人でいたとき、二人組の泥棒に入られます。
      しかし波平さんはそんな二人に茶を出し、昏々と説教して、ついにお小遣いまで上げてしまう。
      こういう、敵対しなくていいものには敵対しない。 そういう立場を貫ける人こそ、自分の意志で立つ人なんじゃないでしょうか。
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