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シリーズ:青ずきんくん

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  • 青ずきんくん

    作者:ろく

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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    パロディですらありませぬ。



    青ずきんくん 4187文字

     

     むかしむかし、あるところに可愛い男の子がおりました。
     生まれつきプラチナ色をしたまっすぐな髪に囲まれた透き通るほど白い肌、桃色のほっぺた。唇は紅く女の子のようです。
     しかし何といっても特筆すべきは長いまつげに縁どられた大きな目。
     蜜を塗られたように濡れたすばらしいその青い色。海のようにきらめき、澄んだサファイア色なのでした。
     そう、男の子はまったくどこの子より変わっていたのです。

     その目の色がとても映えるロイヤルブルーのフード付きコートを着て歩く彼のようすがあまりにすてきだったので、女子たちはうっとりして「ずきん王子」と呼び、彼も内心まんざらではありませんでした。

     一方でおとなしく気弱なところもあった彼は、その見た目にかこつけ男子たちにいじめられることも多々ありました。
     ひとことも言い返せずその青い目を涙に濡らすことも少なくはなかったのです。

     ある日、青ずきんくんはお母さんにお使いを頼まれました。
     隣町に住んでいるおばあさんが病気で寝込んでしまったので、お見舞いに行くようにです。
     お母さんもいっしょのはずでしたが、人間ドックの日と重なってしまったため今回は青ずきんに1人で行ってもらうことにしたのです。

     これはこの子の経験値を上げるチャンス。

     そう考えたお母さんも黒ずきんさんと呼ばれるほど魔女っぽい黒いフード付きのコートがよく似合いましたが、これはまた別のお話ですね。

     おばあさんの家に1人で行くのははじめてだった青ずきん、けっこう緊張していました。トマトジュースとイカと大根の煮物を詰めたタッパーの入った可愛いリボンの結ばれたカゴをお母さんから渡されたときも、何の抵抗もなく受け取りました。素直なよい子だったのです。

     片手にお見舞いのカゴを持ち、行先の電車や料金、駅のホームの番号が書かれたメモを見ながら青ずきんはおばあさんの家を目指しました。

     途中乗り換えの電車がどれだかわからなくなりました。
     お母さんに連絡しようとして携帯電話を忘れたことに気づきパニックになりかけます。落ち着かなきゃ――ひとつ深呼吸してみました。
    (携帯がないのなら駅員さんに聞けばいいじゃない!)と、あたりまえのことに気づき改札口の近くにいた駅員さんに思いきって声をかけようとしたそのときです。

     すっと目の前を横切ったパンダに気をとられました。
     なぜならば青ずきんは動物の中でなんと言ってもパンダがいちばん好きだったからです。

     青ずきんの熱い視線に気づいたパンダは、立ち止まりポーズを決めながら近づきすかさず声をかけてきました。

    「やぁ、きみ一人? どこへ行くの。とても可愛いね、ああ失敬、男の子だよね」

     実はこのパンダ、さきほどから青ずきんに狙いを定めていたのです。たぶんおそらく、いやきっとこの子ははじめてのおつかいというやつにちがいない。カモだぞ、と。

     隣町に住む病気のおばあちゃんのお見舞いに、と答える青ずきんにこう言いました。

    「えらいねえ。そうだ、いい考えがある。そこの花屋でおばあさんの好きなお花を買っていったらどうかな。喜ばれると思うよ」

     それはすてきだ、青ずきんは思いましたがお金をもっていません。パンダにそう伝えました。するとパンダはすかさず片目をつぶってみせながらこう返したのです。

    「心配しなくてもいい。きみのおばあさん思いのやさしい気持を尊重して僕からきみへブーケのプレゼントとするよ。それをきみからおばあさんのお見舞いとして渡せばいい。ね?」

     なんて魅力的な提案でしょう。
     このパンダ、みかけももふもふしてやさしそうな癒し系だし。僕に嫌なことひとつも言ったりしないし。悪い人じゃなさそう。うん、きっとそう。

     一人で心細かったところにちょうど親切なパンダに出会えたなんてラッキー! 以外の何物でもありません。

    「ゆっくり花を選びなよ。お金は僕が払っておくから。――うん、用事があるから先に僕は行くけど。そうだ、そのあとあまったおつりでそこの噴水の見えるカフェでソーダでも飲んで一休みしてから出発すればいい。おばあさんの家は隣町? そう、駅近くのかわいい煙突のある赤い屋根の家なんだね」

     そう、ゆっくりゆっくりしろや、小僧。
     こっちがお先にひとっ走りして、おまえのばあさんをぱくりとたいらげてしまうまでな。

     心の声は青ずきんには聞こえません。
     内心舌なめずりしてパンダは笑顔で青ずきんに手を振り別れました。
     なんておそろしい雑食パンダでしょう。
     まんまと青ずきんを足止めさせたパンダはおばあさんの家へと急ぎました。

    (初対面の相手に住所を明かすなんてちょろいガキだ。いまどき煙突のある赤い屋根の家なんぞ検索すればすぐわかるわ)

     簡単に家をつきとめたパンダは、青ずきんの声マネ(耳コピが得意だったので)をして鍵の開いていた家へ難なく上がりこみ、あっという間におばあさんをぺろりと丸のみしてしまいました。

     デザートはこれからだぜ。

     おばあさんの服を箪笥から出して無理やり着込み、おばあさんのナイトキャップをかぶるとベッドに入りそのまま寝たふりをして青ずきんを待ちました。

    「こんにちは。おばあさん青ずきんだよ。お見舞いに来たよ」

     間もなく花束とトマトジュースとイカと大根の煮物を抱えた青ずきんが声を張り上げながらドアを開け部屋に入って来ました。
    返事がありません。

    (そんなに具合悪いのかな)

     ベッドのそばに来てのぞきこみました。
     なんだか様子が変な気がします。不安になり聞いてみました。

    「おばあさん。部屋の中なのになんでホットレシーバーをつけてるの?」

    「青ずきんの声に集中したいからだよ。そういう道具なんじゃろ」

    「目の周りが黒いサングラスみたいになってるけど……」

    「青ずきんの顔を見るのに日の光がまぶしくないようにちょちょいと墨を塗ったのさ」

    「手がそんなにミトンみたいに膨れちゃったのはなぜなの」

    「このあいだ青ずきんにおいしい笹だんごを作ってあげようとしたら、葉っぱで指を切っちゃってね。傷口からばい菌が入って膨れ上がってしまったのよ」

    「それにしてもそのお腹……何を食べてそんなになったの?」

    「それは――オレがばあさんとおまえをランチでいただいちゃう雑食パンダだからさあああああああ」

     そう叫ぶとパンダは青ずきんを頭からぱくりと飲みこんでしまいました。
     そしてついでに、青ずきんの持ってきたお見舞いのイカと大根の煮物をトマトジュースでごくごく流し込んだのです。

    「食った、食ったぜえ。満腹だ。ちょっと食べすぎたか。明日からダイエットだな」

     はちきれそうなお腹をなでているうちにパンダのまぶたは重くなり、そのまま部屋のまんなかでぐーぐーと眠りこんでしまいました。

    「ごめんくださーい」

     通りかかったセールスマンが、開け放たれたままのドアに気づき声をかけますが応答がありません。部屋の中をひょいとのぞくと、リビングの真ん中で大の字になったお年寄りが倒れているようではありませんか。玄関のタタキに靴を脱ぎ散らかしそばに駆け寄ります。

     救急車呼ばないと!?

    (あれ…これは)

     ナイトキャップの下からのぞいた、大口を開けていびきをかくパンダの顔と。その大きく膨らんだ腹を交互に見るなりセールスマンは、持っていたアタッシュケースを開き、中から迷わず商品の肉切り包丁を取り出しました。
    なかなかに勘のよいセールスマンだったのです。

     きっとこのパンダにここの住人が食われてしまったのだろう。
     そして腹がボコボコと波打つように動いているところから見て、まだ息があるにちがいないぞ。よし。
     今日はじめてやっとこの刃の切れ味を、役立たせることができそうだ。

     そう思い素早くその腹に包丁を突き立て皮に刃をすーっと滑らせ切り開きました。なかなかの手さばきです。

     ぱっくりと割れたそこから、這い出してきたのは丸のみされていた二人のすがた。
     ロイヤル・ブルーのずきんははやくも消化液で溶けてボロボロでしたが、青ずきんくん本体は無事です。おばあさんにいたっては、ショック療法というのでしょうか。病気は治ってしまったようで足取りも軽くステップしながら出てくる始末でした。

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    コメント

    • ろくさんの久々の小説~~(≧▽≦)っっっっ
      全く肩に力を入れず、どころかアサッテの方角向いて放ったゆるゆるボールと見せかけて、あっさりスリーポイント決めてくるんだもんなあ。さんざムチャ振りで笑わせておいて、ラスト、内気な少年の成長物語に着地するところが鮮やか過ぎます。確信犯ですね。

      底知れないガチな地力を持つプレイヤー(作者)のこのスマートさがニクい(*థ౪థ)プフ
      • 1 fav
      • Re 返信

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    • 畏れ多くもコメントいただきいたみいります。
      こんなのあげるってどうよ…と二の足を踏みはしたのですが・
      ひせみさんの好意的なお言葉に救われる思いです。

      このところまともに書けておらずお恥ずかしいかぎりですがこっそりおじゃまして勉強させていただこうかと画策中∞

      (*థ౪థ)←これなんかスゲーっすw
      • 1 fav

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    • 個人的にこういうの好きなんです。ほのぼのではない、シニカル系。くす、っていうよりニヤ、っていう感じ。お笑いものはまだ一度も書いたことがなくて自分に書けるとも思っていないのですが、こういった楽しいお作品を拝読するとチャレンジしてみたくなります。
      (*థ౪థ)(*థ౪థ)(*థ౪థ)(*థ౪థ)(*థ౪థ)(*థ౪థ)(*థ౪థ)(*థ౪థ)(*థ౪థ)(*థ౪థ)
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    • おっしゃるようなお笑いものはじゅうぶんお手の物と見ました!

      気分転換時にでもしたためていただいて、是非拝読したいものです。(*థ౪థ)プフ ←洗脳されお気に入りにw
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    作者紹介

    • ろく
    • 作品投稿数:70  累計獲得星数:448
    • お読みいただき★をつけてくださった方、ありがとうございます。


      アイコンはねこまんまさんに描いていただきました。



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