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夢の始まり

作者:朝来みゆか

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    「パルテール」のメンバーに寄り添う小さなお話。
    第十二話:まみ。十三名それぞれの物語を三分で読める形に仕上げます。
    GL小説『春はくちびるから始まる』スピンオフシリーズ。


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    夢の始まり 1177文字

     

     それがないと生きていけないもの(電気とか水以外で)。
     携帯。コンタクトレンズ。猫。
     ファンのひとは「パルテがないと生きていけない」と言ってくれる。
     嬉しい。なるべく長く、そのひとのリストに入っていられるように願う。

     まみが初めてテレビの音楽番組の公開収録を観たのは、十歳の頃だ。
     当選と赤い字で書かれたハガキを手に、祖父が告げた。
    「本物の歌が聴けるぞ」
     観覧当日は、学校から帰ってランドセルを置くと、すぐに出かけた。
     電車とバスを乗り継ぎ、訪れたテレビ局の敷地は広かった。大きなホールのそばに行列ができており、まみと祖父は手をつないで向かった。
     始まる前にDJのひとが会場を盛り上げ、ペンライトを振る練習が行われた。
     歌を披露する歌手とバンドは全部で十二組。一人、あるいは一グループにつき一曲を、順番に披露する形だ。
     ステージ上には家の壁のようなセットが並べられ、天井近くには大きなスクリーンがあった。
     司会役が現れ、最初の女性歌手を紹介する。
    「……海外でも活動されています。では、どうぞ」
     一曲目。うまくてびっくりした。音楽の授業の合唱とは全然違う。さらっと歌い上げるのが格好いい。
     出番の間には、大勢のスタッフがセットを組み替える。セットが動くと、ステージの印象が変わる。照明も曲によって全然違う。なるほどこういう風に番組を撮っているんだ、と感心した。
     女性歌手、男性歌手、女と男の混在するバンド。観客に挨拶するときははにかんでいても、曲が始まれば、カメラがどんなに近づいても、平然と歌い続ける。
     これがプロか。圧倒された。
     ステージに立つ歌手とカメラの動き、そして上部のスクリーンを交互に見た。
     機械じかけの鉄砲のようなカメラが主に正面からの映像を撮影し、カメラマンは手でカメラを持って近づく。実際の放送では、複数の映像を切り替え、画面に変化を作っているのだとわかった。
     中盤、小さなアクシデントが起こった。
     ピアノを弾きながら歌う男性歌手のマイクの固定がゆるみ、かくん、と下がってしまったのだ。歌手は片手でマイクを支えながら、もう片方の手で鍵盤を弾き、歌い続けた。
     曲が終わって、歌手がステージ脇にはけた後、観客はざわついた。まみも祖父を見上げた。
    「もう一度、ご登場いただきます」
     司会が告げ、歌手が再び現れる。そして名乗った。
    「初めまして。今日は楽しんでいってください」
     数分前と同じ挨拶を繰り返し、演奏を始める。
     求められれば、同じ状態で何度でも歌えるんだ。すごい。
     テレビの前の視聴者は、この曲がそっくり二度披露されたなんて思いもしないだろう。スタッフと観覧者だけが知る真相だ。
     その日、まみは決めた。テレビに出るひとになろう、カメラで切り取られる素材になろう、と。

     なければ生きていけないリストに歌を加えて、まみはボイストレーニングに向かう。
     自分が出演する番組の観覧に、祖父を招くのが夢だ。

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