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シリーズ:きっかけはバレンタイン
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きっかけはバレンタイン

作者:森野かえで

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    きっかけは王様ゲームの続きになります。

    完結。


    登録ユーザー星:2 だれでも星:1 閲覧数:551

    きっかけはバレンタイン 9800文字

     

    大学の帰り道、最寄りの駅を降りてからは近所の商店街を通って自宅を目指す。
    いつもの帰り道だけど、いつもと違う所がひとつ。
    それは、隣に蘇我がいること。鼻歌をうたいながら上機嫌に隣を歩く蘇我を、横目でチラリと盗み見る。


    ……ただ家に帰ってるだけなのに。
    そんなに楽しそうにされると、何だか…調子が狂う。
    本当なら、今日も一人静かに帰るはずだった。
    だけど見つかってしまった。この男に。
    広い大学で学部も違うし、オレが一人が好きな事も知っているはずだ。だいたいオレなんかに構わなくても、遊び相手はいくらでもいる。
    それでもこいつはオレを見つけて、オレに話しかけてくる。


    『ずっと好きだった』


    前に告白されたけど、オレでいいんだろうか……?


    「おっ、もうすぐバレンタインか」


    商店街の中にあるスイーツ店が出しているバレンタイン仕様の幟(のぼり)を見て、蘇我が呟く。


    「隼人は誰かにチョコあげるのか?」
    「あげるわけないだろ。バレンタインは女性があげるものなんだから」
    「そうだけど、俺は別に男があげてもいいと思うぞ」


    何が言いたいかは分かってる。
    でもバレンタインは、好きな人への想いを込めて贈るものだから……。
    未だに告白の返事もできず蘇我から逃げてるオレに、そんな資格はない。


    「例えそうでも、オレから貰って嬉しい人なんていないよ」


    友達がいない訳じゃないけど、バレンタインならやっぱりオレからじゃなくて、女性から貰った方が嬉しいはずだ。
    蘇我もきっとそう思う。


    「そうか? 俺はスッゲェ嬉しいけどな。お前からチョコ貰えたら」


    オレからチョコを受け取ったところでも想像してるのか、嬉しそうな笑顔を向けられる。


    「……っ」


    だから、そんな顔はしないで欲しい。
    どうしたらいいか分からなくなる。
    蘇我の顔を見ていられなくて、俺は顔を背けることしか出来ない。


    「…だからくれよ。お前のチョコ」


    たかがチョコひとつだろ。
    チャラチャラした蘇我のように、軽いノリで渡せばいい。
    ……頭ではそう思うけど、素直になれない口はそう言えない。


    「そんなに欲しいなら、当日もしもお前がチョコをひとつも貰えなかったら、可哀想だしオレがあげなくもない」


    回りくどい言い方だと自分でも思うけど、これが今のオレの精一杯。
    そしてオレが蘇我にチョコをあげることはない。
    蘇我はモテる。オレの知る限り中学の頃から変わらず。
    バレンタインも毎年両手に抱えてた。
    今年も女の子から数多くのチョコが贈られるはずだ。


    「……本当にくれるのか?」
    「蘇我がひとつも貰えなかったらね。約束する」
    「マジ、か…。じゃ、約束な!」


    あげると言ったことが意外だったようで、目の前に小指を突き出してくる。そんなに信用がないのか、と思ったけど蘇我の嬉しそうな笑顔を見ると、まぁいいか、と思えてくる。


    目の前の小指に、自分の小指を絡ませた。
    繋いだ小指が離れる瞬間、この約束が実現することを一瞬でも願った自分に驚いた。







    一週間後、約束の日がやって来た。
    蘇我へのチョコレートは一応買ってあるけど、今日は大学へは持ってきてない。
    どうせ渡すことはないから、家に帰ってから自分で食べるつもりだ。


    「隼人は、チョコ貰った?」
    「ううん。武智は貰えた?」
    「いや、オレもさっぱり。今年は期待してたけど、みんな本命にしか目がないからな」


    本日最後の授業が終わったあと、肩をすくめながらそう言う友達は、残念がりながら帰り支度を始める。
    ……本命か。
    その言葉にふと、蘇我の顔が浮かぶけど、ぶんぶんと頭を振って残像を振り払う。


    「そーいや、今日はまだ蘇我のヤツ来ないよな」
    「え?」


    一瞬、考えていることを見透かされたのかと、ドキッと心臓が跳ねた。


    「だって、いつもならもうお前を探して来てる頃だろ」


    だけど蘇我はまだ来てない。
    それは多分、今頃は女の子に呼び出されてチョコを渡されているから。


    「今日は来ないよ。なんてったってバレンタインだからね」
    「そりゃそうか。あいつ、チャラいくせに細かいとこまで気が利くから、モテるんだよな」
    「それに家が隣ってだけで、どっちかって言ったらオレにとって蘇我は苦手なタイプだから。今日はゆっくり帰れて嬉しいよ」
    「えっ、そうなの?」


    なぜか意外そうな反応をする武智に、オレの方が頭にハテナが浮かぶ。


    「確かに蘇我のことが苦手だっていうのは聞いてたけど、オレが見た限りではそうは見えねぇよ。現に今、寂しそうな顔してたし、それに───」


    ……え?
    武智は何を言ってるんだ。
    オレが寂しそう……?
    そんなの、気のせいに決まってる。
    オレはずっと、蘇我が苦手で関わりたくなくて、避けてた。
    それは今でも変わらなくて、蘇我に見つけられる度に、放っといてくれればいいのにって思ってるんだよ?
    それなのに、ドクンドクンと大きく鼓動する心臓はまるで、武智の言ってることを裏付けているようで……。


    「…それに、これは隼人も気付いてないと思うけど、蘇我が隼人を探しに来た時、嬉しそうな顔になるんだ。ま、蘇我が気付く前にいつものつっけんどんな隼人に戻るから、蘇我も知らないと思うけどな」
    「う…うそだ…」


    そんなはずない。蘇我に対して嬉しいと思ったことなんて、……正直ない。
    ないはずなのに。思ってた……?
    自分でさえ気付かないところで。


    「嘘じゃねぇよ。オレにはそう見えてたし、この間は一緒に帰ってただろ? だから蘇我のことはもう嫌いじゃなくなったんだなって思ったんだけど、…違った?」
    「分から、ない……」


    だけど、仮にも武智の言ってることが本当だとするなら、あの時のキスとか告白とか抱きしめられた事が、嫌だと感じなかった説明がつく。
    ……それなら。それならオレは、一体いつから蘇我が苦手じゃなくなってた?


    「無自覚だってんならしゃーないか。あー…、混乱させたよな、ごめん」


    ぐるぐる考え込むオレを見て、余計なこと言ったかも、と反省する武智にオレは、大丈夫、と答えるだけで精一杯だった。
    ある事に気付いたから。


    今までオレは、どんな事でも蘇我からの誘いや頼み事なんて、全部断ってた。オレにとってそれが普通でいつものやり取りだった。そうすれば蘇我の方から諦めてくれると思ってたから。
    だからこの間まで、一緒に家に帰ったり、約束事なんてしたことがなかった。
    それなのに最近では断りきれなくなって、今日の約束については自分から言ってしまっていた。
    自分自身が気付いてないだけで、本当は蘇我に心を開いてる……?


    『案外、自分の本当の気持ちに気付かない様にしてたのは、お前の方だったのかもな』


    前に言われたことが、脳裏によみがえる。
    あの時はただただ自分の気持ちが分からなくて、泣いてしまった。
    そうだ、泣いたんだ。蘇我の前で。
    それからだ。オレが蘇我を拒みきれなくなっているのは。


    「余計なことついでに言うと、あんまり深く考えなくていいんじゃね。友好関係なんてそんなもんだろ。オレが隼人と一緒にいるのも、オレがそうしたいからだ。隼人がどうしたいのか、もっとシンプルに考えてみなよ」
    「武智…」


    オレがどうしたいのか、か。
    オレの、本当の気持ち…。蘇我に会えば何か分かるんだろうか。
    だけど、蘇我は今…。


    「オレ、一度蘇我と話してみるよ」
    「おう」
    「…そろそろ帰ろっか」
    「そうだな」


    家に帰ろう。チョコレートでも食べながらゆっくり頭の中を整理しよう。
    それから蘇我と会って、自分の気持ちを確かめればいい。
    そう思いながら、一人で帰るこの道。
    不意に武智が言ったことを思い出した。
    もしかして、この時間も……?


    「……!」


    そんな事はない、と言いきりたくて電車の窓に映る自分の顔を見て、思わず息をのむ。そこにはどこか不安げな表情のオレがいた。
    これじゃ武智が言ったことの証明をしている。


    もっと素直になれていたら、もっと自分の気持ちにも敏感だったら、今頃どうなってたんだろう。
    チョコレートも普通に渡していたのかな……。
    少なくとも、こんなに悩むことはなかっただろうか。
    もう逃げられない。逃げちゃダメなんだ。自分の気持ちから。
    蘇我ともちゃんと向き合わなくちゃいけない。頭の中を悶々とさせながら歩いていると、自宅の前に誰かがいるのが見えた。

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    コメント

    作者紹介

    • 森野かえで
    • 作品投稿数:21  累計獲得星数:15
    • BLスキー。
      まったり書いてけたらいいなぁ~。

      『ひまつぶし』は、全て1ページ完結となってます。短編集なので、それぞれのページに関連はありません。たまにBL外も混じります。つまりは作者の妄想のカタマリ(笑)



    • 関連URL
      Boys Line:http://nanos.jp/boysline/page/27/
      Twitter:https://twitter.com/_k_morino

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