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あたしが希望を持っていた頃

作者:朝来みゆか

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    「パルテール」のメンバーに寄り添う小さなお話。
    第九話:静佳。十三名それぞれの物語を三分で読める形に仕上げます。
    GL小説『春はくちびるから始まる』スピンオフシリーズ。


    登録ユーザー星:0 だれでも星:0 閲覧数:42

    あたしが希望を持っていた頃 1194文字

     

     女の子の集団が苦手だった。学校でも浮いていた。
     早く外の世界に行きたかった。大人になりたかった。
     芸能人になれば稼げると知ってからは、受けられるオーディションに片っ端から応募して、毎回落ちた。
     書類審査ではねられたこともあれば、一次、二次審査まで進んで今回こそはと期待が高まってから落とされることもあった。
     落ちてしまえば、受けなかったのと同じ。
     居心地の悪い学校に通い、誰とも口をきかずに過ごす。毎日が同じ繰り返し。
     だけど、あきらめられなかった。
     あたしは他の子とは違う。いつかスターになって、人々の注目を集める。
     そう信じて、さなぎの日々の終わりを祈り続けて、合格したのがパルテールだった。
     いよいよあたしは羽化して、綺麗な蝶になれる。おしゃれな生活を始められるんだ。
     喜びが先に来たけれど、忘れていたわけではない。
     ――また女の子の集団の一員になる。
     初めての顔合わせのとき、実は胃が痛くて仕方なかった。

     疲れた手足を伸ばして、布団をかぶる。スマホの明かりが闇を照らす。
     睡眠不足になっても、ネットの検索結果を読み終えてからでないと、一日を終わりにできない。
     悪口、根も葉もない噂、上から目線の評論や分析。
     悪いことが八割で、ほめてくれるのは二割くらいだけれど、自分について書かれている情報はすべて読む。
     どんなスタンスでも、あたしが話題に出てきたらほっとする。ネットに書いた瞬間、そのひとは島本静佳のことを考えてくれていたのだから。
     自分の名前で検索すると、メンバーへの評価もよく目にする。
     たとえば「静佳よりまみの方が断然かわいいと思わね?」
     はい、そのとおりです。あたしは見ず知らずの名無しさんに答える。しかも性格もいいんだよ。
     メンバーはあたしが想像していたよりもみんな大人で、いじめや派閥もない。
     喋り方が偉そうだと難癖つけてくる子もいないし、こっちが話しかけているのにあからさまに無視する子もいない。

     役所に行ったとき、ポスターが貼ってあった。

    『未来に希望を持って生きられる社会へ』

     希望。田舎の学校で身をすくめていた頃は、東京で芸能人になるのが希望だった。
     その夢がかなった今、あたしはどんな未来を思い描けばいいのかわからない。
     これ以上、背は伸びないだろうし、グループを卒業してやっていける自信は正直ない。
     あたしは知ってしまった。
     パルテールもソレイユもかわいい子は多いけれど、ピンで活躍する女優さんの顔の小さいこと、華のあることと言ったらレベルが違う。テレビ局の廊下で見たときは卒倒するかと思った。
     この場所を出て外で戦うのは無理だ。要するにあたしの人生、今がピーク。冷静にジャッジして、そう思う。
     だからあたしはこの場所を心地よくすると決めた。寮の部屋を安くておしゃれな雑貨で飾って、満足にひたる。
     内向きな理由だとしても、もうしばらくはパルテールにいたい。
     たくさんの悪意と、少しだけど確かに感じられる愛情を浴びながら。

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