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シリーズ:淫らでふらちな肉食獣
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淫らでふらちな肉食獣[1]

作者:eロマンス文庫

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    「ほかの男に盗られる前にきみの全ては俺がもらう……喰わせて、お願い」
    天敵だった肉食系上司に、真夏の屋上で捕食され――。

    ※本作は第一話のみがupppiに掲載されております。
    全話を読みたい場合はRenta!からご購入ください。
    http://renta.papy.co.jp/renta/sc/frm/item/85086/


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    淫らでふらちな肉食獣[1] 2605文字

     

    [1]

     好きなものは最後まで取っておく主義だ。けれど、それは肉食動物だけに許された特権なのかもしれない。
     捕食される側はなりふりかまわずに好きなものをいちばんはじめに食べてしまうべきだ。そうでなければ横取りされてしまう。恨めしいが、それが自然の摂理だと思う。

    「あ……っ! そ、それ……っ、いま食べようとしてたのに!!」
     園村由佳《そのむらゆか》は年甲斐もなく大声でそう言った。右手に持っていた箸は好物の唐揚げをつかむことなくむなしく空振る。
     正午を30分ほどすぎた社員食堂はあいかわらず混んでいた。由佳のはしたない声が大きなホールにこだましている。そばで食事をしていた見知らぬ社員たちの視線を集めている。
     由佳はその視線に気がつき、なぜ自分がこんなふうに白い目で見られなければならないのだと不満に思いつつ肩をすくめて、目の前に座っている唐揚げ泥棒の男をにらみつけた。
    「え、なんだ。残ってたからいらないんだと思った。わりぃなー」
     なんて白々しいことを言うんだ、この男は。
     長机の向かいに座り、飄々とした態度で唐揚げをほおばっているのは、由佳の派遣先であるこのクマノ商事株式会社の正社員、伊嶋秀一郎《いじましゅういちろう》である。
     就職難で正社員の仕事に就くことができなかった由佳は大学卒業と同時に派遣会社へ登録し、間もなくこの総合商社に一般事務として派遣された。今年で3年目だ。
     唐揚げ泥棒の伊嶋が、由佳が派遣されている金属資源グループ国際営業部に配属されたのはいまから1年前。その当時から彼は係長である。
    「伊嶋さん、どうしていつも私の近くで食べるんですか? ほかにも席はたくさんあるでしょ。もしかして、お肉を横取りするためですか!?」
     息巻きながら言った。由佳よりも3つ年上の28歳である彼は同じ部署のなかでは最も年齢が近い上司だ。だからこそ、少々ていねいさに欠ける言葉遣いになってしまう。歳が近いからというだけではなく、ついこのあいだもチキン南蛮を盗られたばかりだからよけいに憤りが湧いてくるのだ。
    「きみが食べてるものってうまそうに見えるんだよね。今度どっか食べに行かない?」
    「嫌です! どうせまた横取りするんでしょう」
     透明なグラスの冷たい水をぐいっと一気に飲み干して、由佳はふんっと鼻から息を吐いた。唐揚げを盗られた恨みはまだ晴れていない。チキン南蛮のぶんもだ。
    「しないって。そのときは俺も同じものを頼むから」
     唇を噛み締めてジトリと伊嶋を見つめる。天井まで届く南側の大きな窓から射し込む陽光に照らされた彼の艶やかな黒髪は無造作に、しかし形よく整えられている。目鼻立ちはとてもくっきりとしていて、彫りが深く鼻梁は一直線に通っている。
     黙っていれば男前なのだが、由佳にとっては好物を横取りする天敵のようなものだ。
    (私が食べてるものがおいしそうに見えるって言ってたよね……。てことは、同じものを食べていても結局は横取りされちゃうに決まってる)
     由佳はひとりでそう結論づけてうなずく。
    「いいえ、行きません。結衣ちゃん、そろそろ戻ろう」
     隣で食事を終えていた派遣社員仲間の同僚に声をかけ、由佳は空のトレーを持って席を立った。

     多くの社員で混み合う食堂を出た由佳は派遣元が同じ会社である同僚、西門結衣《にしかどゆい》と並んで歩きながらいまだに治まらない怒りを持てあまし、カツカツと盛大に靴音を響かせていた。
    「もうっ、なんで伊嶋さんってああなのかな? 人格を疑っちゃうよ」
     伊嶋が由佳の派遣先である国際営業部にやってきたばかりのときはそれほど話をすることもなかった。だからどういう人物なのかはよく知らなかったのだが、体型維持のため日課にしている早朝ジョギング中に、社有グラウンドでフットサルをしていた伊嶋とたまたま出会って以来、ほかの社員よりも接する機会が多くなったのだった。
    「んー、アレでしょ、あれ。小学生にありがちなやつ」
     ショートカットウェーブの茶色い髪を指に絡めて結衣が言った。なんのことかわからないので聞き返す。
    「なに、それ?」
    「伊嶋さんはさ、好きな子にちょっかいを出したくなるタイプなんだよ。由佳の気を引きたいんだと思う」
    「はあっ? 唐揚げを横取りして気を引くってそんな……子どもじゃあるまいし」
    「実際、由佳は伊嶋さんのこと気にしてるじゃん。頭の中は彼のことでいっぱいでしょ?」
    「やだ、へんな言い方しないでよ」
     眉をひそめて窓の外を見やる。確かにいま頭の中は伊嶋のことばかりだ。しかしこれは決して好意ではない。由佳はあらためて「あんな人、いやだ」とつぶやいた。
    「いいじゃない、28歳で係長、将来有望な優良物件よ? しかもあの見た目なら多少中身が子どもでも許されるってものよ」
    「いいや、許せない! 唐揚げとチキン南蛮はきっと私のお腹に収まりたかったに違いない!」
     隣からふうっと大きなため息が聞こえてきた。あきれられている。
    「ま、とにかく由佳は伊嶋さんのお気に入りなのよ。ほら、由佳って自分に厳しくて仕事が早いし、気も利くし。そこそこ美人だし?」
    「なっ、なに……? 結衣ちゃんにだって私の唐揚げはあげないよ?」
     由佳は立ち止まり、真顔で結衣を見つめた。
    「ばか言わないでよ。ほしくないって、そんな高カロリーのもの。私は思ったことを言っただけ。ほら、さっさと歩く」
     あまりにもほめられるので、なにか下心があるのではと疑ってしまった。しかしそうではないらしい。
     立ち止まってしまった由佳を気にも留めず結衣はスタスタと歩き続けている。このままでは置いていかれてしまいそうなのであわてて小走りをした。ふたたび彼女の隣に並んだところで口を開く。
    「う……。じゃあ一応、ありがとうと言っておく」
    「いちいち素直じゃないねぇ。でもそういうところが、男にとってはオトシ甲斐があるのかもね」
     由佳は「うーん」とうなりながら首を傾げた。
     身体のラインが強調されたタイトなボトムスを着こなす結衣はスレンダーな美人で男性にとても人気があるのだが、大学時代から何年も付き合っている彼氏がいて、近々結婚する予定だ。
     一方の由佳は何もかもが平凡で、身長は165センチと女性では高いほうだが特筆すべきなのはそれくらい。容姿も、これといってなにか特徴があるわけではない。
    「伊嶋さんは単に意地が悪いだけだよ」
     うんうんと首を大きく振りながらそうつぶやくと、結衣は面倒くさそうに「はいはい、そうですね」とつぶやき返した。

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    作者紹介

    • eロマンス文庫
    • 作品投稿数:8  累計獲得星数:20
    • 定期的な読者へのアンケートで、女性が求める「好みの男性のタイプ」「相手との関係性」「シチュエーション」「エッチの内容」などを細かく分析してストーリーへダイレクトに反映。女性が好む官能とロマンスのリアルなニーズを「ギュッ」と詰め込んだ官能小説レーベルです。
    • 関連URL
      eロマンス文庫:http://eromance.jp

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