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シリーズ:金蚕蠱【サマージャンボ】
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金蚕蠱【サマージャンボ】

作者:しかぞう

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    中国人の嫁を貰った。周りはいろいろ言うけれど、家族会議と迷信深いのぐらいで特に困ったことはない。しかし宝くじを買って帰るといきなり嫁がそれをひったくって燃やして
    しまい……。
    これは、夏だ ワッショイ! 第1回 勝手に【 競作祭 】の参加作品です。


    登録ユーザー星:3 だれでも星:2 閲覧数:388

    金蚕蠱【サマージャンボ】 2974文字

     

    俺の妻は中国人だ。夜学で知り合った爺さんに彼女が居ないのをこぼしたら親戚を紹介してくれた。
    いや欲しいのは結婚相手じゃなくて彼女であってと思ったが、そのかわいいのと若さに俺が一目ぼれした。
    親戚は財産や戸籍を乗っ取られるとか騒いだが、別に俺にも親戚にも大したものがあるわけじゃない。絶縁してそっちに婿入りの形になるけどいい? って爺さんに聞いたら構わないと受け入れられたのでそのまま結婚した。
    結婚式は中華街で向こうの親戚ばかり100人以上集まった。店を三件両隣借り切って道まで出る派手なものだった。みんな親戚らしい。費用も全部向こうもちだった。嫁か爺さんかはわからないけど、爺さんの人脈がすごいというのだけはわかった。
    言葉が通じなくたって愛とセックスさえあれば男女なんてまあうまく行くもんで、特にトラブルなく半年過ぎた。
    俺は夜学で取った資格で技師となりブルーカラーだけど結構な給料をもらっている。たまに親戚に呼び出されてタダで仕事するけど不満はない。たいがい手数料以上のものが返ってくる。その辺のやり取りは嫁に一任してるけど、仕事すると嫁の機嫌がいいんで俺も嬉しい。嫁は家事しながら学校通って、いまでは片言ながら日本語も話す。
    そんな風に暮らしてる中、俺は同僚とノリでサマージャンボを買った。別に当てたいわけじゃなかったけど、みんな買ってる中で俺が一枚も買わないのは空気悪いじゃん? そんなことしてると俺は日本人なんだなーって思う。嫁は中国人だけど。
    作業着のポッケにつっこんだ時点でもう忘れてたんだけど、家に帰って嫁が脱がしてくれたときに見つけたらしい。

    「アイヤー」

    うわ生アイヤーだよ。ほんとにアイヤーって言うんだな。宝くじにそんなに驚くとは思わなかった俺はアイヤーのほうに興味を持った。
    嫁は短く俺に怒ると、その宝くじをコンロに持っていって燃やしだした。くじは燃えるが俺は危ないのでそれを止めようともみ合いになった。嫁は燃え尽きるまでかたくなに抵抗し、結果火災報知機が作動して消防と近所に謝って回ることになった。片言の嫁が出ても問題がでかくなるだけだし、嫁はそれ以降は部屋の隅でシクシク泣いていた。
    嫁と言葉が通じなくて困ったら、相談するように爺さんに言われていたので連絡した。嫁はまだ泣いていたので簡単に説明すると、嫁に替わるように言われた。
    嫁は向こうの言葉でしばらく話しこむと再び携帯を俺に返した。爺さんは親族会議を開くからお手数だが嫁と一緒にそのうち来て欲しいと言った。そんな大事なのかと俺は腰が引けたが、爺さんが絶対俺の味方につくと約束してくれたのでなるべく早く予定を入れた。嫁をいつまでも泣かしてるのも気分悪いしな。こう見えても俺ちゃんと嫁のこと愛してるのよ。
    一番早い週末に時間を取って爺さんの暮らす中華街へ向かった。
    大きめの中華飯店に席が用意されていた。十人ぐらいのおそらく嫁の親族がそろっていていきなりアウェイな雰囲気だったけど、ビビった俺に気を遣ったのか爺さんが席を外させた。嫁の母親と嫁、俺と爺さんの四人で話し合いが始まった。他の親戚は隣席に移り会食してる。酒も始まっててちょっとうらやましかった。
    母親はあっちの言葉で嫁に話しかけていた。同時に爺さんは日本語で俺に聞いた。

    「宝くじを買ったら嫁が焼き捨てて騒ぎになったってことだよね」
    「はい。そうです」
    「大事な宝くじだった?」
    「いや、買ったのも忘れていたんですけど。火災報知機が反応して近所に謝らなくちゃいけなくなって。嫁は泣いちゃってわけわかんないし」
    「ほっほ。それは大変だったね。宝くじどうしても買わなきゃいけなかった?」
    「いや別に。仕事場でみんな買ったからつきあいで。宝くじそんなまずいんですか?」
    「まずいね。買うなら別れてもらわなきゃいけない。買っても処分してもらえればいいけど買わないのが一番ね。ギャンブルも借金も、遊びなら浮気も家族に不自由させないなら愛人囲ってもいいけど、宝くじはダメ」
    「え! そんなにヤバいの!」
    「ほっほ。やっぱ知らなかったね。まあ若い人は知らないね。日本人ならとくにね。蠱毒って聞いたことある?」
    「……コドク? 老人の孤独死とかですか」
    「違うね。話長くなるけどちょっと聞いてね。ごはん食べてていいからすこし我慢してね」

    俺が返事するまでもなく大皿が運ばれてきて食事が始まった。嫁はまた涙を浮かべながら心配そうな目で俺を見ている。母親はその手を励ますように握ってるが、俺への視線はきつい。俺は腹が減ってたので運ばれた料理を小皿へ取った。
    俺が食べ始めると爺さんは微笑んで、お茶で口を湿らせながら話し始めた。

    蠱毒の蠱の字は皿に虫を三つ盛ったように書く。このようにさまざまな虫を密閉して餌をやらずに食い合わさせると、残った一匹は猛毒を持つようになるらしい。これを蠱毒といい、昔は暗殺に使われて、行なったりそれを助言しただけで死刑にされたそうだ。中国だけじゃなく平安時代にはもう日本へも入って来たらしい。ここまでは毒の精製に過ぎないが、これが呪法にまで発展したそうで金蚕蠱(きんさんこ)というものがあったそうだ。
    金はそのまま金、蚕(かいこ)も絹の原料で富の象徴だった。それも葉っぱを食べて富を生み出すんだからそこに目をつけたそうだ。蠱毒と同じように蚕だけで共食いさせて残った一匹は黄金色になるらしい。これが金蚕。しかもこれは人にやるのではなく自分に憑かせる。正確に言うと家に憑く。するとその家は福が舞い込んで富むそうだ。しかし、いつかは破棄しなくてはならない。なぜなら金蚕は自分が食うために富を呼び寄せるのであって、やがて富を食い始める。人と家ごと食う。こうなるともう止められない。その一族は破滅する。その前に富ごと焼き捨てるか、もっといいのは人に押しつけることだ。
    金蚕は見えないところに隠れるが居るところはわかる。その家で最も高価なものに憑くのだ。だから十分な富が貯まったら金銀を入れた箱や織物を用意して、それを道に捨てる。誰かが拾うと金蚕は移る。無理やり送りつけても駄目で拾わせなきゃいけない。買わせるともっといい。金蚕は金の匂いに惹かれるからだ。そうすれば手元に残った財産は安全だ。
    金蚕がいつ飢え始めるかはわからない。この呪法は危険な賭けだ。しかし。
    爺さんはそこで話を切った。俺は食事を続けながら思いを巡らせた。
    そういえば、宝くじに当たって人生が壊れた話を聞いたことがある。しかも結構な数だ。身に合わない贅沢がやめられなかったり、親類縁者に集られたり、知らない相手に融資を申し込まれて断ったら殺されたり。不条理な話があるものだと思ってたけど、金蚕とか言う呪いだとすると納得がいく。でもするとだよ。誰が作ってるんだ? 宝くじは必ず公営で、しかも金蚕蠱に則っても安全だ。日本にも昔からそのノウハウがある。いやいやまさか。

    「ただの迷信だけどね。私たちはすごく気にするんだよ。嫁も君のことは気に入ってるし私も君を気に入ってる。できれば別れて欲しくない。ここは年寄りにゆずって宝くじには手を出さないでもらえないかな」

    俺は口に物の入ったままガクガクとうなずいた。嫁とその母親も、その俺の様子にホッと表情を緩めた。離婚の危機は回避された。
    しかしそれ以来、俺は宝くじが怖くて触れもしない。

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    コメント

    • アイヤー…。読むのがおそくなってごめんなさい。しかぞう様らしい物語で、ショートショートのお手本のような綺麗な起承転結。お見事です。
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    • 自分らしいですね。自分でもそう思います。短編練習系の作品だと思います。アイヤーが嫁の唯一のセリフですしね。そこは確かにやりたかったw自作の中なら及第点だと思います。でもnishnish様を始めとする他作品のような深い情動を呼び起こしたいんですよね。でもすると1万字近くもオーバーするwおかしいなあ、なにが違うんだろうなあ、と読み返しては自習の毎日です。にしろお手本があって反応がもらえると独習に比べてすごく助かります。この企画は感謝に堪えません。
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    • 宝くじに当たって幸せのはずが、公営の呪いだとしたら本当に恐ろしい。
      当たらないとわかっていても、宝くじを買うのが怖くなりますね。
      3000字以内って意外と難しい……。
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    • 文字数は難しいですね。早速盛大にオーバーしましたよw三倍ほど。逆シャアですね。面白くする→オーバーする→まとまるように話を小さくする→他作品と比べて見劣りする気がする→面白くする……くりかえしです。とはいえ、怖がっていただけたならホラーとして本望です。ご高覧ありがとうございました。
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    作者紹介

    • しかぞう
    • 作品投稿数:74  累計獲得星数:166
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