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シリーズ:屍境界紀行

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  • 屍境界紀行

    作者:風呂助

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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    遅すぎた言い訳 *ニコライ・ミクルホ=マクライに捧ぐ



    屍境界紀行 5373文字

     

     三途の川を舟に乗らずに川沿いに下っていくと、
    浅瀬の遠い海が見えてくる。死神によれば罪や罰
    つまるところ裁きに関係なく、沖まで行く場合が
    特に近年は増加しているらしい。光の人姿で。

     その理由も、その先も、その後の事も触れず。

     死神に船頭の役目があるので、持ち場を離れず
    代わりの案内役を探すしかないと言われた。
    死神は三途の川では、舟を舫った付近以外には、
    詳しくもなければ、関心も無いようだった。

     彼岸花を眺めながら浅瀬を眺めていた。
    ここには無限に時間がある。いつまで寝転んでも
    案内役が見つからずとも、舟に乗るよう指図を、
    受けない限りは自由気儘であるような。

     不満をわざわざ書いておくなら、砂利が痛い事
    腹が空かないので、味わう楽しみが無い事か。

     生きる楽しみは排除されているが、死へ通じる
    痛み苦しみは継続している。三途の川は境界だと
    生前は根拠も無く思い込んでいたが。

     死出の旅路を書いてみようか。

     なら、生き意地が悪いか。逝き意地が汚いか。

     この記録は、一応は旅行記として記しているが、
    私の葬儀に際して、棺に入れてもらった手帳だが、
    死神と最初は、手帳の所有権で少し揉めた。

     だが死神の(彼か彼女かは不明)業務に支障が
    無いと判れば、既に手帳の扱いには関与しない。
    誰が読むのかは、皆目、判らないのだが記録する。

     ショウマン、コウカ、サカウ

     時間の感覚が把握できない上に、ここに時間の
    意味があるのかも疑っていたのだが、単純ながら
    私は眠っていたのである。死者の眠りとは何だ。

     永遠の眠り。安眠快眠。寝息。記録端末切断。

     違うか。霊魂とか何かそういうモノの眠りかな。
    屍は既に灰になっているから、眠る死体とは違う。
    とにかく数分か数年位、眠って時間に気が付いた。

     目の前の三途の川が、流れて拡がる遠い浅瀬の
    海が、干潮になっている事に気が付いた。だから
    意味の有無に関係なく、時間の必要性があるのだ。

     でも書くのを止めない。自分には従わない。

     ようやくここで好奇心にかられた私は、冒険を
    してみたくなった。死神の舟を使わずに浅瀬を、
    干潮の内に自分で歩いて、対岸へ進んだ。

     現世の常識が、ある程度までは通用するのなら、
    じき朝食の時間になるかもしれない。空腹がない。
    だから、生命的な時間に頼れない。空は暗い赤。

     ショウマン、コウカ、サカウ

     急に転がっている石(後で髑髏と解った)に、
    苔らしきものが、生えているのに気が付いた。
    これは、生命だろうか?苔に似た何か別のモノか。

     触ろうとすると、急激に苔のようなモノが、
    私へ話しかけてきた。としか言い様が無いのだが。
    ここまで伸ばしたのだから、触るなと注意された。

     そこで石ではなく大分、風化して原型は無いが
    大きくて立派な髑髏であったと聞かされた。

     すると髪の毛なのかと問いただしてみたのだが、
    質問は無視されて、踊る時に振り乱すと見事だと。
    そのように答えたきり、後は一切を黙りこんだ。

     仕方が無いので、持って歩こうかとしたが急に、
    重くなって持ち運べなくなった。ここにあるべき
    という意味なのかもしれない。

     ショウマン、コウカ、サカウ

     そのまま海岸沿いに歩いていく、更に妙な事に、
    遥か岬のような箇所が見えて、建造物らしきモノ。
    死神か、鬼か、天使でも閻魔でも何かがいるのだ。

     私は酷く興奮した。なにしろ、その小屋の様な
    建造物から、煙が上がっているのだ。火。
    この荒涼とした河原や海岸へ私を連れてきた火。

     これには酷く興奮してしまった。

     人魂も火だと聞いた。火車という妖怪がいる。
    火と死は密接だ。火は生とも密接だ。特に人間は。
    ごちゃごちゃ考えながら、小屋まで辿り着いた。

     誰も、何もいなかった。にも関わらずに、屋根
    その下、あがりかまち机風の台と食器っぽいモノ。

     それらを食器だと思った理由はただ一つ。

     調理された何かが、盛り付けてあったからだ。

     ここに誰かしら何かしらが、いるのだ。そして
    予測が間違ってなければ、死の世にあって食事を、
    必要としているはずなのだ。私とは違うのだ。

     しばらく待っていた。

     ただ呆然と食卓だと思える風景を眺めていた。

     私の背後を立ちすくむように、人の形に似た、
    黒い煤のような塊。というよりも質感がないので
    人影が立体化して立ち上がっているようだ。

     彼ら(と仮に呼ぶ事にする)が生死のいずれか
    それは判別できないが、数体が樹が生える如く、
    動かない。警戒してみたが馬鹿馬鹿しくなった。

     私は既に死んでいるから、用心など無意味だ。

     急に気が楽になって、おどけて手を振ってみた。
    すると黒い人の形の塊(以後、影人と仮に呼ぶ)
    その内の1つが、手のような素振りで小屋の奥へ
    腕を伸ばした。

     その仕草を人間的に例え解釈するなら「入れ。」
    と、いう印象が強かったので、中に上がってみた。

     念の為に記しておくが、私は経帷子のみで裸足。
    ペンが挟んである手帳だけが、袂に入っていた。
    そういえば河原の砂利も、特に足の裏に感触なく。

     それなのに、意識的に痛みがあったのだ。でも
    砂浜の心地よさは、全く感じなかったのが残念だ。

     痛みはあるのに感触はない。

     でも、腹が減っていなくても、食欲の無い事には
    気が付くようなものか。否、全然に的外れか。

     思うより記しておこう。

     とにかく影人達と小屋の中へ入り机を前に座る。
    いくつかの食事を勧めてきた様子なので、会釈し、
    受け取ったが、腹は減っていなかった。

     器にはタロイモかヤムイモの様なモノと一緒に
    サゴヤシに似たモノが入っていた。ここらで採取、
    若しくは栽培しているなら、南国に近いのか。

     それよりも驚いたのは、サゴヤシはカビ臭く、
    生命の印象と嗅覚を取り戻した感動があった。
    死して尚、生を食らう喜びでカビのサゴヤシを
    空腹ではなく、魂を吸う気持ちで齧った。

     食事が済んで、何かの豆類を煎った汁を、
    空になった器に注いでくれた。湯気は煙と違う。
    感じないが、きっと熱いのだろう。わくわくする。

     無論、空腹でなかったし、満腹にもならない。
    それでも、食事は満足を得る事が出来る。
    この後、私が無事であっても無くても、忘れない。

     言葉が通じるかは解らなかったが、本来の目的。
    そう、私には目的がある。案内役を探している。
    死神は乗船名簿に私の名前が無いと言った。

     つまり船頭をする義務はないと拒否されたのだ。

     私は何度も死に、何度も生き返って旅をして、
    ここまでの大部分の時間を、過ごしてきた。また、
    今も旅を継続しているような、気分ではあるのだ。

     天涯孤独であった私が、戸籍も売り唯、世界を
    行き渡っていた。冒険家や探検家とも違う。
    盗めるモノは盗んだし、食えるものは食った。

     人を殺める事だけはしなかったが、偶々必要が
    無かったからというだけだ。殺さない方がいい。

     何も名前も無い私には「在る」方が便利だった。
    人を殺すのは神様の領分だ。私の得意では無い。

     旅仲間というのも居たのだ。名前は知らない。
    そいつらが、最後の時に手帳を餞別にくれたのだ。
    私は対価として、臓器を売って良いと言った。

     まぁ、ボロボロで使える部分は少なかったろう。

     いま空腹を感じないのも、そういう事に関係が
    あるのかもしれない。事実、影人達は食欲の為か
    それは不明だが食事する習慣はある。

     無論、彼らが死に属していると仮定してだが。
    死神に空腹があるのか、聞いておけばよかった。

     ところで何故、何も無い私が手帳だけを欲した
    ああ、いや、そんな事はどうでもいい事だ。
    手帳に何を記したかが、問題で手帳は手段だし。

     話を戻して、話が通じるか怪しいが、影人達へ
    案内役を頼めないか、交渉してみた。言葉が声に
    ちゃんと音声になって、届いている確信はある。

     死神とも、髑髏とも、何らかの接触は出来た。

     身振り手振りだが、変な本位的な言葉よりも、
    影人達の動作は、死神達より遥かに伝える意思が
    ハッキリして好感が持てた。但し返答は残念。

     誰か案内役を引き受けてくれるモノは無いか、
    若しくは、私が行く場所が無いか訊ねてみた。

     影人達は海の光の方を指し示した。手のような
    黒い塊を上下に降り、自分を示して横へ振る。

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